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[感情労働] 罵倒されても脅迫受けても無関心…壊れた‘感情の門

登録:2013-11-14 18:36 修正:2013-11-14 23:30
去る9月27日夜、ソウル江南(カンナム)の心理治癒専門企業マインドプリズムで開かれた‘感情労働者公開相談室’に参加した感情労働者が、チョン・ヘシン代表が配った立て札を手に持ち他の参加者の事例発表を聴いている。 マインドプリズム提供

"顧客が罵倒しながらシンナーを持って訪ねてきて、殺すと脅迫して…こうしたことが毎日のように繰り返される日常ではないですか? ただそれだけのことなのに、何が大変なことなのか分かりません。" 去る9月27日夜、ソウル江南(カンナム)の心理治癒専門企業マインドプリズムの‘感情労働者公開相談室’に参加した30代の病院顧客センター相談員が話し始めた。 コールセンター相談員、販売員、親切教育講師、ゴルフ場キャディーなど、感情労働者40人が集まったこの日、ある参加者が立って顧客と会社から侮辱された他の人の経験を自身のことのように読み下す‘モノ ドラマ’式事例発表を終えた後だった。

 チョン・ヘシン博士は車座に座った感情労働者たちに、あらかじめ "あなたが正しい" 、"とんとんと抱きしめてあげたい" 、 "共感百倍、私も同じ経験があります" 、 "私がもしあなたならば…" 等の内容が書かれた立て札を配った。 発表が終われば、前に出てきた参加者に言いたい言葉を4つの立て札の中の一つを挙げて表現してみるように話した。 客席に座っていた病院の顧客センター相談員は "私がもしあなたならば…" と書かれた立て札を挙げた。 チョン・ヘシン代表がその立て札を挙げた理由を尋ねると、すぐに彼女は 「何が大変なんだか分かりません」と話した。

喜怒哀楽を感じられない感情マヒ
うつ病より深刻な‘心の病’
長期にわたる心理的虐待を受けた時に現れる

 その瞬間、相談室には静寂が流れた。 チョン・ヘシン代表が再び尋ねた。 「そんなことが起きても大変じゃありませんか?」 「私が仕事をしている病院の場合、顧客センターに電話をする人はほとんどが病院に不満があるとか、医療事故だと主張するとかする方々です。 私は妊娠して臨月まで、殺すと脅迫する顧客を皆相手にして仕事をしました。 私はただうまく行っていると考えていたけど…苦しがっている他人の話を聴けば心がとても変で複雑です。」 彼女の表情が暗くなった。

 チョン・ヘシン博士は集団相談が終わった後、訪ねてきた彼女に会社外の関係について尋ねた。 彼女は会社で‘感情を表に出さず不満顧客もうまく処理する職員’として待遇されたが、いつからか日常の関係は絡まり始めたと打ち明けた。 友人や家族は 「あんたの気持ちが理解できない」と言ったし、ある時は自分がこの状況でどんな表情をしなければならないのかさえ分からない瞬間が襲ってきた。 チョン・ヘシン博士はそのような状態が "感情マヒ" であり、これは身近にあらわれるうつ病より人間性を破壊する側面で一層深刻なこともあると説明した。

 人には腕と足があるように‘感情’がある。 誰かが自分に侮辱を与え脅迫すれば、羞恥心、侮蔑感、怒り、恐怖などの感情が自然に感じられるはずだ。 ところが、そのような感情を頻繁に感じ、耐え難い状況が繰り返されると、人々は生きるためにこの正常な感情を停止させる。 結局は大変なこともなく、うれしいこともない、日常的な喜怒哀楽のリズムを全て失うことになる。

 信用カード会社のコールセンターチーム長だったイ・某(35)氏は、そのようなマヒから‘目覚めた’瞬間を記憶している。 仕事をして10年が過ぎた時だった。 入社直後から悪性顧客に会った日にはひどく苦しがって結局うつ病薬まで服用し始めたある職員が、ある日顧客との相談が終わった後に大声で号泣し始めた。 会議室に連れて行き訓戒した瞬間、その職員が 「チーム長様も嫌いだ、こんな世の中、全てが嫌いだ」と言い、持っていたカップを投げつけた。

 「その瞬間はっきりわかりました。」イ氏は話した。 イ氏自身も社会生活の初期の4年間、契約職相談員として働いたが、下請け業者に再入社して管理職であるチーム長になった以後には、毎日のようにチーム内人数、処理したコール数等の数値に追われ、職員に手当ても支給されない夜勤をさせて、昼休みを縮めることも当然視してきた。 チーム内の新入職員が3ヶ月持ちこたえるケースは20~30%だった。 その職員に毎日のように 「顧客は会社に不満があるだけであなたに悪口を言っているわけではないから気にするな」と言う忠告がどれほど大きな抑圧であったかに気が付いたという。 しばらくして後輩職員も、そしてイ氏自身も会社を辞めた。 チョン・ヘシン博士が‘感情マヒ’という単語を言った瞬間、彼女は初めて自身の過去の日々がどうだったかを振り返り、すっきりしたと話した。

 ‘感情労働者集団相談’に参加した人々の中には、このように‘感情マヒ’という言葉に反応する人が少なくなかった。 自身を親切教育の講師だと明らかにした30代の女性は 「私自身も納得できない会社のマニュアルどおりに、職員にいつも微笑を浮かべやさしくしなければならないと教え、気持ちの中ではよく頑張っていると思っていたが、結局からだが先に音を上げた」と話した。 顔面と体の左側にマヒがきて、救急室に運ばれていくこと二回、結局彼女は会社を辞め、その後健康も回復した。

不当な会社マニュアルに則って仕事をしても
"この会社以外に行くところもない"
自暴自棄の末に怒る力さえ失って

 コールセンターで解決しない悪性顧客に直接対面する業務を遂行しているというある男性参加者は「この間よく適応してきたと思っていたが、今後どうすればいいのか…」として困ったような表情になった。 この男性を含め多くの感情労働者たちは 「仕事をする以上は仕方ない」という話を繰り返した。 チョン・ヘシン博士は「‘この会社以外に行くところもない’と考えるということは、感情マヒや極端な無気力感が襲ってきた時、長期にわたる心理的虐待を受けた時に現れる症状」と話した。

 肉体を搾取された労働者は‘怒る力’さえあれば連帯できたが、感情労働者は‘怒る力’さえ麻痺しているのかもしれない。 米国の港湾労働者出身の労働運動家レッグ テリオは本<労働階級はない>で "サービス労働者の数が増えたが、それが労組組織化の推進力になれなかった" として "彼らは自分たちの仕事が単にお客さんをもてなすことだと考え、個人的価値と自負心を失ったのではないだろうか?」と問いかけた。

イム・ジソン記者 sun21@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/611110.html 韓国語原文入力:2013/11/13 22:08
訳J.S(2832字)

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