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「7人の警官に手足を捕らえられたおばあさん 恐怖にブルブル」

登録:2013-10-18 20:22 修正:2013-10-18 21:38
人権侵害監視団の目で見た密陽(ミリャン)
人権侵害監視団が去る6日、慶南(キョンナム)密陽市(ミリャンシ)丹場面(タンジャンミョン)コレリ村の入口で、送電塔建設に反対する住民と警察が対峙する現場に入ろうとするや、警察がそれを阻んでいる。 リュ・ウジョン記者 wjryu@hani.co.kr

「一歩だけ下がってほしい」との要請 黙殺
老人の激昂をあおり事故の危険
強硬鎮圧で上衣剥がされる侮辱も
食物や医療の遮断、人権委仲裁で解除さる
「住民は国が自分を見捨てたと感じている」

 16日午前10時頃、警察の“鎮圧作戦”が始まった。 慶南(キョンナム)密陽市(ミリャンシ)丹場面(タンジャンミョン)パドゥリ村入口で765kV超高圧送電塔工事反対の座り込みをしていた住民10人余りはビリッと緊張した。 道端で食事をしていた老人たちが工事現場を行き来する車両の移動に邪魔になるからと、警察は鎮圧の理由を明らかにした。 警察兵力300人余りがすでに周辺を統制していたところだった。 住民のうち半分以上はおばあさんたちだった。 婦人警官60人余りは近くの空地で“予行演習”もした。 住民は自分たちを引っぱり出そうと警察が号令に合わせて一斉に動く様を無言で見守った。

 おばあさん1人に婦人警官6人と男性警官が1人ついた。 男性警官はおばあさんの足を掴んだ。 おばあさんたちは手足を捕えられ恐怖に震えた。 住民は一人一人警察が予行演習をしていた空地まで30m余りを四肢をつかまれ運ばれて行った。 送電塔工事が再開された去る2日以降、一日も欠かさず現場に出て来た人権侵害監視団(監視団)所属の活動家オ・ジノ(29)氏は「おばあさんでも、足の力が一番強いので、男性警官が足をつかむようにしたようだ」と話した。

 その時、もう1人の活動家ミリュ(仮名・女)氏が自分の体で1人のおばあさんの体に折り重なって庇った。 ミリュ氏は工事が再開された翌日の3日に密陽(ミリャン)にやって来たが、公務執行妨害容疑で直ちに連行され、拘束令状が棄却されて釈放された。 ミリュ氏がかばったおばあさんは、自分に迫ってくる警察官に向かって大声で怒鳴り全身で暴れた。ミリュ氏は警察に対し「一歩だけ下がってほしい」と要請したが、受け入れられなかった。 結局自身の意に反して警察に四肢を捕らえられたおばあさんの目は恐怖に震えていた。

 監視団の武器は時間帯別状況が細かく書き込まれた手帳と記録用カメラだ。 彼らの目標は住民に向けられた公権力行使を“視線の監獄”に閉じ込めることだ。 現場のあちこちで繰り広げられる人権侵害の実態は、報告書の形で<人権運動サランバン>(sarangbang.or.kr)と<密陽765kV送電塔反対対策委員会>のホームページ(my765kvout.tistory.com)を通じて毎日公開されている。 時により動画も活用する。小競合いには介入しない。

 彼らは、それでしばしばもどかしい思いに苛まれる。 住民たちが体験する苦しみから一歩離れていなければならないからだ。 活動家トゥイン(仮名・男)氏は「監視団が住民と密着し過ぎれば報告書の客観性は落ちるが、お年寄りが手足を捕えられて運ばれていく場面を見れば、いっそのこと一緒に戦って捕まった方がマシだという気になる」と話した。 16日付報告書は詳細な鎮圧過程と共に「警察は韓電(韓国電力公社)の便宜のために住民の基本権を深刻に侵害している。 失神など事故発生の危険が非常に高い。 物理的公権力の乱用は密陽住民の暮らしを根こそぎ揺さぶっている」と記している。

 人権侵害の現場で“2次人権侵害”は警戒の対象だ。あるおばあさんの上衣が鎮圧過程で引き剥がされたこともあった。 それ自体が大きな人権侵害だった。 監視団はこの場面を撮影して公開した。 活動家キソン(仮名・女)氏は「動画での顔のモザイク処理自体がおばあさんに羞恥心を強要する可能性もあるという判断から、結局当事者の了解を得た上でそのまま映像を送りだした」と伝えた。

 工事再開直後、警察は食物と医療スタッフの通行すら許容しなかった。 山道を幾重にも遮断した警察を避けて、住民たちは毎朝明け方に山の斜面を登った。 ミリュ氏が連行されたのは125・126番送電塔現場に至る上東面(サンドンミョン)ヨス村で起こった警察と住民の小競合いの過程においてであった。 当時は住民の衣類と食べ物も座り込み現場に届けられなかった。 食物と医療スタッフの通行は国家人権委員会の仲裁があった7日以降に許可された。 ミリュ氏は「事態の序盤には人権という言葉を口にすることさえ恥ずかしい状況が続いた」と語った。

 住民の人権侵害は心理的な側面でも非常に深刻だというのが、彼らの指摘だ。証拠写真を撮ったり物理力を行使したりする警察の存在は、住民にとって恐怖そのものだ。 オ・ジノ氏は「数百、数千名の警官が密陽に来たという話を聞くこと自体が、老人が大半の住民には息の詰まるような脅迫であり人権侵害だ。 警察は物理力を行使する前にまともな警告放送もしない。 「これこれの現行法に違反しているので解散しなさい」というのではなく、「運び出す、引っぱり出す」といった表現を動員するやり方だ。 住民はものすごく萎縮している」と話した。

 住民が強制鎮圧よりさらに恐れるのは、生活の基盤を失うかもしれないという絶望感だ。 オ・ジノ氏は「住民に対する心理的圧迫は想像を超えている。 警察に対抗して工事を阻んだり、阻止線を突き抜けて現場に進入することができるとは考えていないと言う。 ただ、他にいかなる抵抗もできないので、毎朝明け方から工事現場前で頑張っているだけだ」と説明した。

 解決の糸口が見えない現実の壁の前で、住民たちは自身のからだに鎖を巻きつけたり工事現場前に穴を掘ってその中に横たわったりした。 そしていつも警察の物理力の前に膝を屈した。 ミリュ氏は「住民が持続的に肉体的・精神的ストレスを受けているという点が最も大きな人権侵害だ。 その上、一部言論は相変わらず「外部勢力」云々している。 このように全方位的な圧迫を受ける中で、住民たちは『この国が私を見捨てた』という絶望を感じている」と話した。

 生まれてこの方、生涯「人権」という言葉すら聞いたことがなかったという住民たちは、人権侵害監視団と書かれた黄緑色のチョッキを着て現場を駆け回る監視団の存在が一種の防御の盾であることを経験の中で悟っていると言った。 ある住民は「色が全く同じで、警察だと思った」と言って大笑いした。 オ・ジノ氏は「監視団や希望のバスに乗って来た市民や取材陣の目がない時を利用して警察や韓電職員が住民たちを露骨に嘲弄したり鎮圧したりする事態が繰り返されているので、現場を離れることができない」と言った。

 丹場面(タンジャンミョン)トンファジョン村の住民パク・某(60・女)氏は「私たちが警察に何が言えますか。 あんな人たち(監視団)もいるんだなということを今回初めて知った。 どんなに有難いか分からない」と言う。 ヨンヘ村の住民チェ・某(78・女)氏が言った。 「わしら、戦う前には人権なんて言葉は聞いたこともなかった。ただ百姓でもして、隣同士仲良く暮らせればそれでよかった・・・」

ソン・ホギュン記者、密陽/パク・スジ記者 uknow@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/607515.html 韓国語原文入力:2013/10/17 22:04
訳A.K(3184字)

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