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送電塔が建って以来・・・「一戸おきに癌患者」

登録:2013-10-17 19:49 修正:2013-10-18 07:16
【送電塔の葛藤、環境不平等の問題だ】
忠南唐津市キョロ2里…
「カエルの声か、トッケビ(お化け)の声か、ウーンウーン」
80余世帯150人余りの住民のうち 去る10年間で癌死亡者30人余り
忠南唐津市石門面キョロ2里の村の入り口から眺めた唐津(タンジン)火力発電所。 その間を765kV・154kVなど各種送電塔と送電線線が交差しながら走っている。

 慶南(キョンナム)密陽(ミリャン)で葛藤の原因となっている765kVの高圧送電塔は、すでに全国に902基設置されている。 送電線路の長さは全長457.3kmに達する。 江原道(カンウォンド)に最も多く333基、忠南(チュンナム)に265基、京畿(キョンギ)に252基の順だ。 住民は長くて10年を越える歳月を、送電塔のそばで生きてきた。 初めはただ「電気を運ぶ施設」とだけ考えていた。「村の発展の信号弾」と信じる人もいた。

 だが<ハンギョレ>取材陣が10~11日に訪れた江原道横城(フェンソン)と忠南(チュンナム)唐津(タンジン)、京畿道(キョンギド)安城(アンソン)一帯の送電塔周辺の住民たちの人生は、粉々に破壊されていた。 そこはもしかしたら、今日も苦しい戦いを続けている“密陽(ミリャン)の明日”なのかも知れない。

 「送電塔のことを考えたら、生きた心地がしません。 どう考えても、着の身着のままで出て行かなければならないようで」 忠南唐津市石門面(ソンムンミョン)キョロ2里に住むキム・クミム(75・女)氏の目がしらが赤かった。 キム氏の菜園からわずか40m余りのところには765kV送電塔が威圧的に立っていた。 「カエルの声だかトッケビ(お化け)の声だか、ウーンウーン言うのが、耐えられないほどうるさいです。 雨の日や曇りの日には一層ひどくなる。 家では両側に送電線が通っているので、夜横になっても眠ることもできません。」 キム氏は疲れ切っているように見えた。

 キョロ2里から3キロ離れたところにある唐津火力発電所は、現在8基の発電所を稼動している。 発電所を起点とする765kV・154kVの二筋の送電線がV字型にこの村を通過する。 村の会館を基準として見れば765kV線路までの距離は約300m、154kV線路までは約400mだ。 その上、2015年までに民間事業者である‘東部発電’がさらに2基の火力発電所を建設し、別途365kV送電線がまたもこの村に入ってくる予定だ。里長のイム・グァンテク(55)氏 は「私たちの村は密陽よりはるかに深刻な状況だ。 送電塔をさらに建てるということは、事実上住民は皆死ねという話」と声を荒げた。

 住民たちはこの地域に送電塔が完工した1999年以後、癌患者が多くなったと伝えた。 80余世帯150人余りの住民のうちで、現在癌闘病中の住民が9人、過去10年間に癌で死亡した住民は30人余りという。 昨年肺癌の手術を受けたキム・グミム氏は「いくら考えても、送電塔のせいとしか思えない。 以前はこの村の大人は皆元気だったのに、急に癌患者が増えた」と話した。

 取材陣は去る5月に肺癌の判定を受けたというキム・ミョンガク(76)氏とともに村をひと回りした。 文字通り「一戸おきに癌患者」だと話した。 「あそこの教会の牧師夫人も2年前に肺癌で亡くなり、青い屋根のキム氏のうちの奥さんも60にもならない歳で肺癌で死にました。 前の白い家のおじさんはこの間癌の手術をしたし…。」キム氏は自暴自棄にでもなったように「癌」を繰り返し口にした。

「昼夜分かたずウーンウーン 騒音…送電塔のことを考えたら生きた心地がしない」

高圧送電塔 全国で902基稼動
鉄塔の真下で農作業
数百mのところに村があり
「鳥が日に数羽ずつ落ちる」

67の地域で癌発病率が高いのに
政府は「相関関係ない」と言うばかり
韓電補償金を巡り住民間の葛藤も

 産業通商資源部の委託研究報告書である「全国高圧送電線路周辺地域住民の癌関連健康影響調査」の結果を見れば、154kV・345kVの送電線が通過する67地域の住民の癌発病危険度は他の地域に比べて高いことが分かる。 だが、韓国電力公社(韓電)は一貫して「高圧送電線の人体危険性は確認されていない」という態度だ。

 送電塔周辺の住民は経験に反する政府と韓電の説明が信じられない。 江原道(カンウォンド)横城郡(フェンソングン)晴日面(チョンイルミョン)柳洞(ユドン)1里のキム・ヨンハ里長は「送電塔が建った後、癌で4人の住民が亡くなり、今も僅か52才の住民が肺癌にかかっている」と言い、もどかしがった。 横城郡甲川面(カプチョンミョン)兵之坊(ビョンジバン)1里の住民チョン・某(56)氏も「家族の中で初めて父が肺癌にかかり5年前に亡くなった。 それ以来、送電塔を眺めるだけで腹が立って仕方がない」と話した。 彼の家は765kV送電塔から150mのところにある。 横城郡晴日面・甲川面一帯の送電塔は2003年に完工した。

 人間だけでなく動植物も尋常でない。 柳洞1里で会ったキム・ジョンピル(46)氏は「765kV送電塔の真下に畜舎があって、子豚や小牛も原因不明の病状が続いて結局死ぬケースが多くなった」と話した。 「生涯貯めた金で買った田がそこ(送電塔周辺)にあるのだが、ゴマを植えても豆を植えてもみな駄目になってしまい、今は何もできない。 それが全てなのに…。」 兵之坊1里の住民キム・ギルファ(75)氏の話だ。 チェ・イェヨン環境保健市民センター所長は「科学的に糾明されたものではないが、動植物に対する悪影響は蓋然性があり、今後検証されねばならない部分だ」と話した。

 韓電にだまされたと考える住民の心の傷は一層深く致命的だ。 キム・ギルファ氏は「韓電は何の問題もないと言っていたが…。 はじめは送電塔が村に建てばここが市内になるものと思った。 今では見ただけで怖くてたまらない」と話した。

 送電塔のために、村同士の葛藤も生まれた。 当時、兵之坊1里の里長だったシン・某(69)氏は「私たち1里の住民は反対デモを一生懸命やり、2里は見物しているばかりだったが、韓電からの1億4000万ウォンの“村発展基金”を二つの村が分けて受取り、葛藤が激しかった」と話した。 隣人間の歪んだ関係は今も修復されていない。 キム・スンテ(54)氏は「補償金をこのように使うべきだ、あのように使うべきだと言って、住民間に言い争いが激しかった。 金を全部使ったあとは少し静かになったが、その時争った人たちはまだ気まずい関係だ」と話した。 キム・グミム氏は「東部火力の建設に賛成する住民も1人2人いるけれど、村から追い出したい気持ちだ」と言った。

 わずかな補償と漠然とした不安、具体的被害が交錯する地点で、送電塔近隣の住民は依然として苦しんでいる。 村に残ることもできない、かといって新しい生活の基盤を見つけて村を離れることもできない現実のためだ。 キョロ2里のイム・グァンテク里長は「売ることもできず、融資も受けられないというのが、全国の送電塔周辺の土地に共通する現実だ」と話す。

 京畿道(キョンギド)安城市(アンソンシ)古三面(コサムミョン)の‘新安城変電所’近隣にある双芝里(サンジリ)サドン村の住民ソン・チュンウン(66)氏は2年前、尿道ガンの判定を受けて片方の腎臓を摘出する手術を受けた。 新安城変電所で4年間警備の仕事をしたりもしたという彼はこのように話した。

 「送電塔のためにガンにかかったとは思わなかった。 単に歳を取ったから病にかかったのだろうと思い、韓電に尋ねてみようとも考えなかった。 だけどやっぱりおかしい。 変電所で仕事をしていた頃、一日に何羽かずつ鳥が死ぬんです。 死んで落ちる鳥もいるし、まだ生きているけれどもバタバタもがいているのもいて。 分かりません。 引っ越ししようにも土地は売れそうにないし、他所へ行って暮らす術があるわけでもなし・・・」

唐津(タンジン)安城(アンソン)横城(フェンソン)/文・写真 ソン・ホギュン、ソ・ヨンジ記者 uknow@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/607034.html 韓国語原文入力:2013/10/16 08:04
訳A.K(3482字)

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