条例が市民の日常に及ぼす影響が大きくなるなかで障害者を差別する条例を変え、障害者の自活を助ける条例を作れという障害者団体の要求が高まっている。 条例が出産、移動、就職など障害者の生活に直接的影響を及ぼすためだ。
# 1. 最近、知的障害3級であるイ・某(18・釜山(プサン))氏は釜山市議会本会議を傍聴しようとしたがあきらめた。 市議会ホームページの傍聴案内文に‘精神に異常がある人’は傍聴を禁止すると記されているためだ。 市議会は凶器など危険な物品を持っている人、酒に酔った人、などと共に‘精神異常者’の傍聴も許容していない。 議会の傍聴だけでなく博物館や市立図書館、福祉館、生涯学習センターなど相当数の公共施設は知的障害者の出入りを条例で阻んでいる。
# 2. 視覚障害者チョ・某(41・女・江原(カンウォン)東海)氏は娘と一緒に公園や児童公園に行くたびに困惑する。 チョ氏の目の役割を果たす盲導犬のためだ。 チョ氏は「盲導犬は訓練を受けており、外出時に大小便をすることはなく、吠えもせず、首輪も必ずしている」と説明するが、公園や児童公園の管理事務所は条例で‘ペット同伴出入り’を禁じているとし手がつけられない状態だ。
知的障害者の公共図書館立入禁止
条例を作る地方議会傍聴も制限
差別禁止法 制定されて6年になるが
全国で差別条例 1236件…改正も‘グズグズ’
2007年障害者の完全な社会参加と平等権実現のために‘障害者差別禁止および権利救済などに関する法律’(障害者差別禁止法)が制定された。 6年が過ぎ、この頃は障害者を身体障害者、精神異常者、白痴などと侮蔑的に呼んだ社会の雰囲気は変わった。
だが、地方自治体が作った自治法規(条例・規則・訓令・例規)には依然として障害者を見下し差別する条項がそのまま残っている。 障害者にとって条例改正は切実な問題だ。 障害者出産支援条例と障害者車椅子修理支援条例など障害者の日常生活と直結した問題が条例から出発するためだ。
全国障害者条例 制・改定推進連帯(推進連帯)が昨年、全国244の地方自治体で制定・施行している自治法規9万6224件を調べた結果、1727件の障害者差別条項が発見された。
この内、‘精神異常者’という理由で博物館や図書館など公共場所への入場を制限する内容が最も多い。 精神異常者は当事者とその家族に侮辱と傷を与える差別的表現だが、江原(カンウォン)東海市(トンヘシ)にある化石博物館は‘精神異常者’の観覧を禁止できるよう運営条例に明示している。 春川(チュンチョン)市立図書館利用規則にも同じ内容が含まれている。 イ・ミョンギュ江原道障害者総合福祉館権益擁護チーム長は「精神異常者という単語は精神障害者を卑下する時に使われる。 他の人を威嚇したり秩序を乱さないのに無条件に精神障害者の公共場所への入場を阻むことは精神障害者に対する根源的恐怖から始まったものだ。 精神障害者という理由だけで公共施設への出入りを禁止することは障害者差別禁止法違反」と話した。
‘他人が嫌悪する欠陥のある人’という曖昧な表現で、事実上障害者の公共施設への出入りを阻んでいる事例もある。 上位法に根拠もなく自治法規だけに発見される現象だ。 1974年に廃止された米国シカゴの地方条例である‘アグリー法’と似ている。 アグリー法は‘身体が切断された者、からだが奇形である者など、見かけが醜くおぞましくて嫌悪感を与える者’などが道路など公共の場所に出てこないよう定めた。 ソウル九老区(クログ)文化芸術会館条例、釜山江西区(カンソグ)江西図書館条例、大邱(テグ)北区(プック)の亀寿山(クスサン)図書館条例、光州(クァンジュ)光山区立図書館条例など大韓民国の自治法規には未だにこのような条項が生きている。
条例など自治法規を作る基礎・広域議会がむしろ障害者差別の先頭に立ったりもしている。 釜山広域市議会は会議規則に‘精神に異常がある者’は傍聴できないと明示している。 江原、原州市(ウォンジュシ)・太白市(テベクシ)議会も事情は同じだ。 反面、蔚山(ウルサン)広域市議会は会議規則を改正して、傍聴制限対象からこの字句を削除した。 イ・ドング蔚山広域市議会事務局議事係主務官は「障害者差別禁止法に抵触する恐れがあり、内部論議の末に条例を改正することになった」と話した。
一部の自治法規は障害者の公務員就職や昇進時に障害者を差別する根拠として悪用されることもある。 ほとんどの地方自治体の人事規則は、面接時の意志発表の正確性と容貌などを基準として評価するようになっている。 キム・某(44・身体障害1級)氏は「言葉に詰まったり身体のバランスを維持することが難しい言語障害者と安眠障害者、身体障害者、脳病変障害者などの公職進出を遮断する基準だ。 障害者の福祉と最も密接な関連がある公職関連自治法規分野はなかなか変化がない」と話した。
相当数の自治法規では未だに障害を克服対象と見る後進性を免じられずにいる。 京畿道(キョンギド)と仁川(インチョン)広域市、木浦市(モクポシ)、大邱(テグ)広域市 東区(トング)、京畿(キョンギ)儀旺市(ウィワンシ)などは‘障害克服賞条例’を設けている。 チョ・ヒョンシク江原道障害者総合福祉館社会福祉士は「障害克服を賞まであげて称賛するならば、障害を持つ普通障害者は恥ずかしく醜い人になる。 障害者を卑下するアプローチ」と話した。 政府もこのような問題提起を受け入れ2008年‘今年の障害克服賞’を‘今年の障害者賞’に変えた状況だ。
障害者たちは2011年‘全国障害者条例 制・改定推進連帯’を設け、障害者差別的条例の改正運動を繰り広げているが、まだ先は遠い。 全国的に1727件の障害者差別条例を発見し、各地方自治体に改正を要求したが昨年末基準で491件(28%)しか改正されていない。
キム・ウィス韓国障害者人権フォーラム障害者政策モニタリングセンター専任研究員は「障害者福祉問題で地方自治体条例の比重が次第に大きくなっているだけに、地方自治体が条例改正により一層積極的に乗り出さなくてはならない」と話した。
春川(チュンチョン)/パク・スヒョク記者 psh@hani.co.kr
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障害者必須条例 7種類、あなたの町にはありますか?
出産・車椅子修理・自活支援など切実に必要だが制定は稀
全国の広域市・道議会と市・郡・区議会が作った自治法規9万6224件の内、障害者と関連があるものはどれ位あるのか? ‘全国障害者条例 制・改定推進連帯’(以下、推進連帯)が調べた結果、1300ヶ余り(1.3%)に過ぎなかった。 推進連帯側は‘障害者に必ず必要な7つの条例’(表)を選び、制定運動を繰り広げている。
推進連帯は‘障害者家庭・女性出産支援金支援条例’を障害者に最も必要な条例として選んだ。 全国広域・基礎地方自治体244ヶ所中でこの条例を制定しているところは58ヶ所(23%)に過ぎない。 現在1~3級の女性障害者が出産する場合には子供1人基準で中央政府から100万ウォンの支援を受けられる。 推進連帯関係者は「相当数の女性障害者が帝王切開で出産しており、非障害者に比べて産後養生期間が長い現実を考慮すれば、政府の出産支援金だけでは不足」と話した。
昨年12月に改正された全北(チョンブク)全州市(チョンジュシ)の出産支援条例は目を引く。 ユ・ミ全北障害者条例制・改定推進連帯事務局長は「両親が共に障害者である場合、50%を加算し出産支援金を支給するのは全州市が初めて」と説明した。
‘障害者車椅子など修理支援条例’も切実だ。 200万~300万ウォンの電動車椅子代金の80%を政府が補助金を支給することにより電動車椅子が普及したが、修理は自費で行なわなければならない。 脳性マヒ障害者キム・某氏は 「3年前に購入した電動車椅子を8回も直した。 車椅子の価格に匹敵する修理費用がかかった。 重要な部品が故障すれば100万ウォンを越える修理費用がかかったりもする」と話した。 光州(クァンジュ)と全南(チョンナム)など22ヶ所(9%)だけに車椅子修理支援条例がある。
‘重症障害者自立生活支援条例’は35ヶ所(14%)だけにあり‘障害者差別禁止および人権保障条例’が制定されたところも26ヶ所(10.6%)にとどまっている。
‘身体障害者血液透析費支援条例’は慶南道(キョンナムド)と江原道(カンウォンド)束草市(ソクチョシ)など僅か2ヶ所だけにあり、‘障害者外部接近性保障に関する条例’も大田(テジョン)東区(トング)と慶北(キョンブク)蔚珍郡(ウルチングン)の2ヶ所のみが作った。 低床バスと障害者コールタクシーなどを支援する‘交通弱者移動便宜増進条例’も64ヶ所(26.2%)だけにある。
春川・全州/パク・スヒョク、パク・イムグン記者 psh@hani.co.kr