国防部が公務員らの採用の際‘定員外合格’方式で、除隊軍人の加算点制度の復活を推進している。憲法裁判所(憲裁)は1999年に公務員任用試験や教師任用試験の際に加算点を与えることに対して平等権と公職就任権に外れるとして違憲決定を下したことがある。それ以後、国防部などを中心に毎年これを復活させようとする動きが続いたが、今回はより積極的だ。
中将出身のハン・キホ議員(国会国防委セヌリ党幹事)が先頭に立ち、国防部が後押しする形で進められている軍加算点制の柱となる点は、‘就職支援実施機関’に限って定員の10%以内で追加点を与えようというものだ。就職支援実施機関とは国家機関、地方自治体、国公立学校、20人以上の公・私企業(または、団体)を指す。加算点の比率は総点の2%程度にして付与回数を服務期間に合わせて3回程度に制限することにしている。
国防部は今回の案は違憲決定の時に比べて加算点の比率が3~5%から2%に低くなり、付与回数も制限したうえに定員外合格方式なので違憲性が解消されたと主張する。国防部は "将兵の国家のための犠牲による機会を補償する次元から" この制度の復活を後押ししている。
就職難に苦しむ除隊軍人の不満を意識しなければならない国防当局の思いを理解できないわけではない。しかし国防部とハン議員の軍加算点制の再生は‘問題点’を見誤って組み立てた解決法だ。憲法裁判所の判決をことごとく誤読した結果と言わざるを得ない。憲法裁判所は違憲決定を下しながら除隊軍人に対する支援は必要だが加算点制度は女性や障害者ら社会的弱者の犠牲を引き起こすために平等権に背反すると指摘した。加算点の比率や回数、付与方式ではなく、制度そのものを問題にしたのだ。逆に言えば、加算点制度とは異なる方式の除隊軍人支援策を促したものといえる。
国防部が推める案は実質効果を上げるのも難しい。定員外10%範囲の中で加算点制を推進するというが、実際に恩恵を受ける人はきわめて僅かだ。特に公務員の場合は採用定員が決まっているので定員外方式といっても加算点制による脱落者の発生を防ぐことはできない。
国防部が除隊軍人に兵役義務にともなう犠牲を補償するためには、加算点制復活のような金のかからない安易な方法ではなく、財政を通した除隊軍人の福祉支援のような正攻法を取るのがふさわしい。それが憲法裁判所の加算点制違憲決定の精神にもそぐい、男女差別や障害者差別という論議も避けることができる方法だ。