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[このひと] "福島放射能 被爆被害 全国に拡散するだろう"

登録:2013-03-19 10:07 修正:2013-03-19 15:45
広島原爆 現場診療した医師 肥田舜太郎
30年間に3000余人の被爆患者を診療
福島事故が反核運動を目覚めさせ
子孫のために原発・核兵器をなくさなければ
肥田舜太郎(96)

 "子孫とこれから生まれるすべての新しい生命のために、原子力発電を止め地球上のすべての核兵器をなくさなければなりません。 原子力発電もやはり放射能を基本としているので、一度爆発すれば核兵器よりさらに大きな被害をもたらします"

 17日、保健医療団体連合が主催した‘2013保健医療進歩フォーラム’の特別講演のために韓国を訪れた肥田舜太郎(96)は<ハンギョレ>とのインタビューでこのように話した。 肥田は1945年広島に原子爆弾が落ちた時、6km程離れたところでこれを見たし、以後被爆者を診療してきた医師であり、日本をはじめ世界各地で被爆の危険性を知らせ原発反対運動を繰り広げてきた。

 彼は「1945年広島陸軍病院で軍医官として務めていたが、原子爆弾が落ちる時、急に悪化した患者を往診していたために6km離れたところで生命が助かった」と話した。 だが、広島で患者を診療した彼はやはり被爆被害からは逃れられなかった。 骨の中の骨髄に機能異常が生じ、急性貧血で輸血を受けながら生命を維持することもあった。 また、命は取りとめたものの医師として彼はさらに無残な光景を見ながら生き残った者の苦痛を味わうことになった。 原子爆弾が落ちた現場で爆死せずに生き残ったが、放射能被爆にあった人々は40度に達する高熱が出て、口の中が真っ黒に腐っていった。 皮膚には紫色の斑点が生じ、髪の毛もかつらをはがすように抜けた。 目と鼻、口、肛門の粘膜からは血が流れ、結局急性放射能症で死んでいった。 患者は非常に多いが人類史上初めて放射能被爆にあった現場で、彼はやはり何の知識もない医師としてどのように治療をすればよいかも分からなかった。 彼は「自分自身が被爆者なのかも分からなかったし、患者も同じだった。 健康だった人が被爆後、数日目に突然死んでいくと住民たちの恐怖は手のほどこしようもなかったし、自分自身もやはり医師としてできることがないという思いで絶望と共に恐怖を感じた」と話した。

 爆破現場から遠く離れたところに暮らしていたために放射能直接被爆が少ない人々も放射能に汚染された食べ物と水、そして空気を摂取し、いわゆる‘放射能内部被爆’を受け苦痛を訴えてきた。 これらの人々は低線量内部被爆によって慢性障害が発生したのだった。 だが、当時日本政府と米国は原子爆弾の被害を縮小すること汲々としていた。 肥田は 「原子爆弾から出た放射能が人体に及ぼす影響について米国は軍事機密として隠してきたし、医師と被爆者には沈黙を強要した。 内部被爆にあって症状を訴える患者たちは‘なまけ者’とか‘仮病’と非難されるのが常だった。 彼は30年間に3000人余りの被爆患者を診療しながら、彼らの苦痛を減らせない事実に苦しみ、1975年米国で放射線被爆研究者らと会うことになった。 1肥田は 「米国で内部被爆を研究した人々も政府の弾圧を受けたが、良心を守り研究していた。 その後、米国とドイツから出た報告を見ながら同僚らと放射能被爆について勉強した」と語った。

 2011年3月福島原発爆発事故は放射能漏出規模を見れば広島の原子爆弾よりはるかに大きな影響を与えると判断され、日本の反核および反原発運動を大きく活性化させる契機になった。 原子力発電所にある放射性物質の量が比較にならないほど多いためだ。 肥田は「今も福島爆発の後被爆は続いている。 空気と水、そして土が汚染され、そこでできた各種食物はからだの中に入り私たちのからだを壊している。 特に子供たちが問題だ。 何の理由もなく下痢が続き、鼻血が止まらず、口腔炎が治らない事例が福島を初めとして日本全体に拡大するだろう」と話した。 すなわち放射能被害が日本全域を覆うことになるという予測だ。 彼が活動している日本の進歩的医師団体である民医連は、福島原発から半径20km以上離れた地域に暮らす人々も次第に放射能被害を受けるため、子供たちだけでも大阪や福岡など遠く離れた地域の学校との交換プログラムを進めている。

 被爆現場にいながらも90歳を超えた彼が、むしろ被爆の安全性を証明するのではないかという質問に対して、肥田は「広島原爆の時にも同じ場所で被爆した2人の高校生の内1人は急性放射能症で死亡したが、他の1人は50才を超えて生きた。 放射能に対する脆弱性に関する個人差はあまりにも大きい。 誰が死ぬかは分からないという話だ」と語った。

 肥田は「日本は50ヶ所の内、48ヶ所を除く2ヶ所だけが稼動していて、韓国も20ヶ余りが稼動していると承知している。 中国で爆発しようが、韓国や日本で爆発しようが影響は直ちに全世界に広がる。 私たちの2世、3世のためにも一日も早く原発を止めなければならない」と話した。

文・写真 キム・ヤンジュン医療専門記者 himtrain@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/578385.html 韓国語原文入力:2013/03/17 22:22
訳J.S(2219字)

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