"予算がないのに‘公約だから公約どおりしよう’というのは望ましくない。 現実的に容易ではない大型予算公約については出口戦略も一緒に考えなければならない。" (シム・ジェチョル セヌリ党最高委員)
"大統領選挙公約で基礎老齢年金を‘今年から’ 20万ウォンずつ支給すると言ったことはない。 65才以上老人‘全員’に支給すると言ったこともない。" (ナ・ソンニン セヌリ党政策委副議長)
大統領選挙が終わって一ヶ月にもならないのに、与党であるセヌリ党を中心に福祉公約を修正しなければならないという主張が表面化している。 朴槿恵(パク・クネ)当選人は大統領選挙期間に‘福祉拡大、増税なし、財政健全性維持’という‘トリレンマ’(trilemma・3目標を全て同時に達成しにくい状況)を解決できると前面に出したが、実際には大統領選挙後になって財源調達が困難に直面するや公約を破棄しようという声が高まっている。
シム・ジェチョル最高委員は14日セヌリ党最高委員会議で財源確保の問題点を挙論して「イ・ゴンヒ 三星(サムスン)会長にも老齢年金を支給することが正しいのか。 選別福祉の大原則が変わらないことを願う」として、基礎年金公約の修正を要求した。 ナ・ソンニン副議長はこの日<文化放送>(MBC)ラジオに出演して基礎年金公約内容自体を否認した。 ‘基礎年金’は朴槿恵当選人の福祉分野代表公約であり、 「2013年関連法を改正して、基礎年金を導入、直ちに65才以上すべての年配者と重症障害者に現在の基礎老齢年金の2倍水準(約20万ウォン)に引き上げ支給する」と公約集に出ている。
この日は朴槿恵当選人が公約履行に消極的な政府に対して‘不快感’を持っているという当選人側の公式ブリーフィングが出てから二日も過ぎていない。 去る12日、パク・ソンギュ当選者スポークスマンは「福祉政策に関して特定部署から財源上難しい、そのような記事が出てくることは望ましくない。 (各部署が)過去の慣行に依拠して問題を維持して行こうとする部分に対して朴当選者が不快感を明確に持っている」と明らかにした経緯がある。 新政府スタートを控えて‘公約履行方案’に没頭しなければならない当選人と与党、政府などが‘公約破棄方案’を巡ってごたごたしている姿だ。
このような破裂音は当初から朴当選人の公約中にその種が潜伏していたし、大統領選挙が終わって実行に入らなければならない時点になると水面上に上がってきた側面が大きい。
朴当選人は大統領選挙公約で5年間に公約履行のために131兆4000億ウォンを使うと明らかにした。 ほとんどが福祉拡大と関連した財源だ。 少なくない金額だがこれもまた過小計上されているという指摘が続いている。 代表的には基礎年金のために5年間に14兆6672億ウォンが追加で必要だと明らかにしているが、老人全員に20万ウォン水準の基礎年金を支給するには一年で8兆ウォン以上が追加で必要であり、この金額はますます増える。
さらに大きな問題は財源調達計画だ。 朴当選者は増税せずに、財政健全性を守りながら公約を履行すると数回強調した。 代わりに既存予算の節減と歳出構造調整71兆ウォン(1年15兆~17兆ウォン),非課税・減免縮小15兆ウォン、地下経済陽性化等を通した脱漏税金縮小28兆5000億ウォンなどで5年間に134兆5000億ウォンを準備すると明らかにした。
だが、年間350兆ウォン規模(今年 342兆ウォン)の予算から15兆ウォン以上を一気に縮減することは無理だというのが政府内外の見解だ。 オ・ゴンホ‘私が作る福祉国家’共同運営委員長は「一部不必要な予算を減らすことは明らかに必要だが我が国は当初の財政規模が小さく、人件費のような硬直性経費が相当部分を占めているため削減余地が大きくない。 大規模土木事業も大幅に消えた」と話した。 シム・ジェチョル最高委員がこの日の最高委員会議で「増税や財政赤字はやらないと言ったので、残された方法は歳出構造調整だけだが、歳出構造調整で各部署から兆単位の予算を捻出するのは不可能だ」と話したのもこのような脈絡からだ。
地下経済陽性化もやはり財源対策と見るには不充分だ。 福祉政策は法が通過すれば直ちに一定規模の資金が必要だが、脱漏税金を摘発するのは目標を立てたからと言ってすぐに達成できるものではないためだ。 最近、業務引継委員会内部では基礎年金施行のために国民年金財政を使う方案が検討されているが、これもまた国民年金加入者の荒々しい反発にぶつかっていて現実化可能性が不透明だ。
結局このような現実的圧迫が大きくなるや与党と政府側でトリレンマの3軸の中で‘福祉拡大’をあきらめる側に方向を定めて行こうとする動きが起きているわけだ。 カン・ビョング仁荷(インハ)大教授(経済学科)は「朴当選人は何より基礎年金のような民生公約に対する国民の熱望で当選したのだ。 政府がスタートして公約を履行しようとする努力もきちんとしてみないで、早くも公約の水位調節を論じることは少し極端に表現すれば‘国民欺瞞’に近い」と批判した。 カン教授は「一応、朴当選者の公約どおり最大限歳出構造調整と税政強化を通じて財源調達を図ってみるものの、もしそれが難しいことが明らかになれば高所得層と大企業の税負担から増やす‘増税’議論を始めることが正しい方向」と主張した。 朴当選者は公約集で「歳入の拡充幅と方法について‘国民大妥協委員会’を通じて国民の意見を幅広く取りまとめ合意を導き出す」と増税の可能性を開けておいた経緯がある。
アン・ソンヒ記者 shan@hani.co.kr