常識を超えて高価な外国製兵器を導入しようと考える軍と、福祉予算を増やそうと考える政界の葛藤が深刻化している。 福祉か安保かという対立構図が激化する兆しだ。 現代兵器はなぜこんなに高いのだろうか? こんなに高価な国防をしなければ安保は守れないということなのか? 韓国軍のベトナム増派を条件に得たブラウン覚書を通じて韓国がライセンス生産を始めたM16小銃から最近高価論難に火が点いた無人偵察機グローバルホークまで、武器取引の歴史をひもといてみる。
経済学の講義で時々出てくるエピソードがある。 人口と産業、領土と資源、所得と環境が同じ2つの島がある。 ところで一つの島である年の夏、蚊の群れが荒れ狂った。 すると殺虫剤、蚊取線香、カヤ、防虫網、脳炎予防ワクチン生産のような蚊関連産業が大きく成長した。 その余波で雇用が増えて経済が成長し、蚊が荒れ狂った島がそうではない島よりさらに強くなった。 ところで、このように強くなった島の住民たちがより幸せだと言えるだろうか? 経済学の時間に教授と学生たちが時々討論するエピソードだ。
ここで一歩先に進んでみよう。 蚊がいなかった島にも一歩遅れて蚊が出始めた。 ところがすでに蚊関連産業は別の島が先んじているので後から蚊に襲われ困難に処したこの島では蚊関連製品を輸入する政策を決める。 さらに既に蚊産業が先進化されている島から良い条件で蚊関連製品を直ちに供給するというのに、強いて多くの資金を投じて蚊産業を起こす必要もない。 その上、先進国はひとまず殺虫剤を初めは無償で供給したり殺虫剤を直接持ってきてばら撒きさえする。 蚊産業先進国の製品が適正な時期に供給されたおかげで、この島はかろうじて蚊を退治して危機を克服する。
問題はその後に発生する。 蚊産業先進国島は蚊産業を構築するために必要な技術やノウハウは移転しない。 ところで蚊産業製品はますます高級化され高価になる。 このような依存関係が一度定着すると、即座に先進国と後進国という従属関係がさらに明確になって、危機が過ぎ去った以後、毎年多くのお金が先進国に流出する。 少なくとも蚊がいなくならない限りこのような関係は数十年間にわたり持続する。
F-35費用、防衛事業庁と企画財政部がなぜ異なるか
ここで蚊は戦争、蚊産業は軍需・防衛産業、殺虫剤は兵器に読み替えてみてください。 1929年の大恐慌直後、米国は800万人の失業者が発生し産業施設の50%が稼動しなかった。 逆説的にこのような経済状況は産業施設を戦争用途に動員して大規模失業者を兵力として補充することに相応しい環境を提供した。 2次世界大戦中である1941年5月に米国国防部は‘軍需物資増産計画’を発表して、飛行機6万機、戦車4万5000両、大砲2万門、船舶1800万トンを生産し連合軍側に提供することにする。 これに伴い、2次大戦終了時までに約500億ドル(現在の価値で約6000億ドル)の軍需物資が連合軍に提供されたが、その規模が連合軍内であまりにも絶対的であったためヨーロッパは米国に作戦指揮権をはじめとする軍事政策の主導的位置を譲歩することになる。
20世紀始めまで産業規模と人口、領土が類似したヨーロッパは、もはや米国の相手にはならない。 フランクリン・ルーズベルト大統領は1942年演説で兵器の大量生産は△戦場で圧倒的な優位を維持する方法△米国の連合国内における指導的役割を保障△米軍の犠牲を最小化する方法だとし、軍事経済で有効需要を創り出す完全に新しい経済にパラダイムを変える。 戦争を通して米国は大恐慌危機を完全に克服して完全雇用の経済を実現したが、戦後米国は世界軍需産業の72%、世界工業生産の53%、金保有の71%を占める覇権国家に跳躍する。 2次大戦で勝利した米国は20世紀にも揺るぎない軍事的覇権国の地位を維持することになったが、米国国家安全保障会議(NSC)分析官を歴任したRobert D. Hormatsは彼の著書<自由の代価>で米国の20世紀軍事的成功要因を△国債発行能力△健全な財政(税収) △大規模武器生産能力だと断言している。
ロッキード マーティンのノーマン オーガスティンは
想像を絶する価格のために
米空軍でさえ戦闘機を買えなくなる‘構造的武装解除’を警告
まさにその状況が韓国で起きている
軍事的に覇権の地位に上がった米国は、全世界に対する圧倒的な力の優位を維持するためにより一層先端化された兵器開発に没頭する。 覇権維持の源泉は先端軍事力だと信じているので、より一層強く精密で致命的で高価格な兵器を追い求める。 去る70年間このような兵器の進化過程は実際の戦争に使われそうにもない最先端超高価武器を誕生させている。 米国の最大防衛産業企業であるロッキード マーティンのノーマン オーガスティンは 「今後、先端兵器の価格と運用費は想像を絶するだろう。 その結果余りに高くて購入が困難な状況が到来することになる」として、これを‘構造的武装解除’(structural disarmament)と呼んだ。 この状況に到達すれば米空軍はほとんど戦闘機を購入することはできない。 2011年、米国国防部獲得管理調査局報告書によれば今後30年間に米政府が購入することにしたF-35 2443機が予定通りに導入される場合、購買費を除く運営費が1兆1132億ドルと予測された。 現在1年分の米国国防費を50%上回る規模だ。
ところでまさにその状況が韓国で今現れている。 檀君以来、最大の武器導入事業と言われる空軍の次期戦闘機事業(F-X)で政府は2012年に60機を購入するために総額8兆3000億ウォンの事業費を策定して、その手付金4000億ウォンを反映した。 しかし最近、戦闘機価格を交渉中の防衛事業庁は対象機種として有力視される米国のステルス戦闘機F-35を導入するなら事業費は15兆ウォンに上昇し、多少安いF-15の場合でも10兆ウォンを上回ると予想し事業自体を再検討せざるをえない必要性に直面した。 しかし企画財政部の判断は違う。 防衛事業庁の事業費算定には新型戦闘機導入にともなう施設と整備基盤の構築予算が脱落しているということだ。 例えば図体が大きい新型戦闘機が導入されれば、これまで使ってきた旧型のF-4,F-5戦闘機用の格納庫をそのままでは使用できないので壊して再び建てなければならず、滑走路もやはり補強しなければならず、整備施設も拡充しなければならない。 特にステルス機の場合、3回出撃したらステルス塗料を再び塗らなければならないため広い格納庫と施設を必要とするが、企画財政部はこういう場合の事業費に再び2兆ウォンが追加されF-35の場合、総費用は17兆ウォンに肉迫するという立場だ。 この金額は2013年国防予算の半分に肉迫し、空軍の5年間の兵器導入予算を全て投じなければならない規模だ。 それで終わりではない。 30年間の運営費が導入予算の2~3倍、すなわち30兆~90兆ウォンを策定しなければならない。 あたかも江南(カンナム)のタワーフェリス アパートをただでくれると言われても、高い管理費に耐えられず入居すらできない相談だ。 これに対して企画財政部は「そんな金は無い」という立場だ。 これによって空軍が次期戦闘機事業を推進できなくなれば、現在400機水準の空軍戦闘機は2018年に200機水準に減る。 まさにオーガスティンが話した構造的武装解除だ。
アイアンドームを導入したところで
一発に通常30万ウォン程度(訳注:25,000円相当)である
北韓長射程ロケット砲弾を防ぐために
7千万ウォン(訳注:600万円相当)の迎撃ミサイルを撃たなければならない
北韓は時間当り1万発以上を撃つのに
アイアンドーム砲台一台で560億ウォン
延坪島(ヨンピョンド)砲撃の時‘20億ウォンのミサイル’ジレンマ
李明博政府末期に米国と導入契約を締結しようとしたグローバルホーク無人偵察機1セットの導入は当初事業に着手した2005年当時より価格が3倍に上がった1兆3000億ウォンに達することが米国防総省安保協力局資料を通じて明らかになった。 大型攻撃ヘリコプターは有力機種であるアパッチ ランボー(AH-64D)の場合、計36機を購入するのに1兆8000億ウォンを計上したが米国が台湾、サウジなどに提示した価格を基準として再算定すれば3兆ウォンを上回ることが確実視されている。 海上作戦ヘリコプターの場合、8機を購入するのに政府は5300億ウォンの事業費を予想して予算に反映させたが、米国の有力対象機種であるMR-60Rも米国防総省安保協力局の資料によれば1兆ウォンに肉迫する。 ただし最近、米国側は海上作戦ヘリコプターの場合、前向きに価格引き下げを検討中と知らされて注目を集めている。 この他にも新型対空ミサイルである改良型パトリオット ミサイル(PAC-3)とイスラエルから持ってくる対空防御体系であるアイアンドームなど各種武器導入も同様の問題で続々と導入延期になったり契約が遅れている。 アイアンドームの場合、導入しても一発に通常30万ウォン程度の北韓長射程ロケット砲弾を防ぐために、わが国は7000万ウォンの迎撃ミサイルを撃たなければならない。 北韓は時間当り1万発以上をソウルに向けて発射できる。 ところがわが国はアイアンドーム砲台1台を備える費用だけで560億ウォンだ。 このような概念で砲弾を防御するということは想像を絶する費用が伴う。
1兆8000億ウォンを投じて2013年に着手すると予想されていた空軍の空中給油機事業は予算書作成当時に削除され事業推進が不可能だった。 北韓核施設を打撃するという空軍戦闘機に装着して運用しなければならない空対地ミサイル導入も国会予算審査過程で手付金150余億ウォンが全額削減され、今後の事業推進が不透明になった。 対象武器である米国のJASSMミサイルが一発当たり37億ウォンに上昇すると予想されるので、数百発を導入する予算を配分する余力がないと判断したのだ。 このようになればこれまで李明博政府が北韓核ミサイルを抑止するという‘積極的抑制戦略’も空念仏になる可能性が大きい。 一方、延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件当時に空軍のF-15Kで対応できなかった理由の一つも20億ウォンに及ぶ空軍の空対地ミサイル(SLAM-ER)保有量があまりにも少ないためだ。 空軍作戦司令部で平時状況で貴重な資源をむやみに動員して攻撃できなかったためだ。 こうして李明博政府で「必ず契約する」という武器導入は一件も実現できなかった。 現行国家財政法と関連施行令では当初予想した事業費が推進過程で20%以上上昇する場合、事業自体を再検討するよう規定している。 規定どおりならば朴槿恵(パク・クネ)政府で武器購買を組みなおさなければならない状況だ。
もしこのような先端兵器を紆余曲折の末に導入することになれば、どんな問題が発生するだろうか? 通常、航空機の場合、開発費が10%なら導入費は30%、そして運営費は60%と推定する。 F-35を財政当局の予想通り1機当り2億ドルで導入するならば、その運営費は30年間で4億ドルが必要とされる。 そしてこの内の相当部分が再び整備費およびアップグレード名目で米国に流出する。 昨年国務部が議会に提出した資料は最近5年間に米国が韓国に販売した兵器で稼いだ金額より整備費として稼いだ金額が5倍だと明らかにしている。 わが国の空軍水準では先端戦闘機を運用する方法がない。 このようになれば現在の空軍は事実上その基盤が崩壊して空軍本部ではなく航空作戦司令部水準に格下げされる結果になる。 構造的武装解除の悲劇的結末が待っている状況だ。 このような破局から脱離するには軍は世界最高性能の高価格な武器を買うという欲ばりすぎを捨て、中低価格の在来式武器体系や国産化に政策を変えなければならない。 しかし新型武器導入のための死活的競争に没頭する陸海空軍は、絶対に要求水準を下げないという属性を持っていることは昨日今日のことでない。 そのために最近新型武器の導入に死活をかけた各軍本部首脳部は次期政府がスタートすれば大統領府に行って泣訴でもするなり、あるいは最初から大統領府に寝そべるつもりだ。
"空を飛ぶ電車を作ってほしい"
それではあえて少量の最先端武器に軍が夢中になる理由は何だろうか? 2次大戦当時、ドイツ空軍のメッサーシュミット(BF109)は連合軍にとって恐怖の対象だった。 この戦闘機は今の基準で見れば、ほとんどタダのようなものでドイツは計3万3000機を生産して実戦配置することに何の問題もなかった。 このような形で過去の第二次世界大戦は大量生産と大量殺戮が共存する類例のない極端暴力を完成させた。 2次大戦を通じて軍事覇権国に成長した米国は、その大規模軍事での余剰能力を韓国戦争で消費した。 当時の戦争費用670億ドルは現在価値で6910億ドルに相当する。 米国は2次大戦中に太平洋地域戦闘で投下した量より多い63万5000トンに及ぶ爆弾を韓半島に投下したが、その内ナパーム弾が3万2557トンに達する。 制空権を完全に掌握し軍需物資を大量に投じて戦争を遂行する米国は、世界の兵たん基地であり戦争をする機械であった。
このように途方もない物量を注ぎ込んだ韓国戦争は、それ以前と以後を問わず人類が一度も経験したことのない高い比率の民間人死亡者を発生させた大量機械戦争だった。 死亡者中の民間人比率は1次大戦41.2%(682万人),2次大戦65.2%(4750万人)だったのに対して、韓国戦争は85%の330万人程度と推定されている。 20世紀の戦争でこのように軍人と民間人を区別しない大量殺戮が在来式武器によって短期間集中的に進行された戦争は韓国戦争のほかに例がない。 これは交戦国人口対比死亡率でも1次大戦1.69%、2次大戦3.71%を越える11%に及ぶ悲劇の極端といえる。
1975年ベトナム戦争を最後に大量戦争が消滅して以後、米-ソ間に‘恐怖の核均衡’による長期間の平和時期が続いた。 小規模戦争で犠牲を減らしつつ相手方を制圧するためには、大量殺傷ではなく先端科学技術による効果中心に戦争様相が変化したのだ。 その結果、軍需産業も在来式武器の大量生産から致命的攻撃力を保有した精密打撃武器にその主眼点が転換されたが、戦争で精密誘導武器の使用比率を見れば在来式戦争と区別される最も画期的な戦争様相の変化と呼ばれる1次湾岸戦争(1991年)では7~8%、コソボ空襲(1999年)では35%、アフガン攻撃(2001年)では56%、2次湾岸戦争(2003年)では68%へと急激に増加しながらより一層先端を指向している。 このような先端戦争の時代が過去の産業化時代の戦争と異なる点は戦争の犠牲者が少なく短期間内に戦争が終結するという肯定的側面があるのも事実だ。 それにもかかわらず、最高水準の技術が適用されるために武器開発と獲得に天文学的な費用が必要とされる。 これによって先端武器開発に向けた軍備競争はより一層加速化する。 軍備競争が自然な趨勢として国際政治で作動する時、先端兵器は実際の戦場で戦闘員の生命価値を保護するという必要とは関係なく自主的に増殖する。
1968年にベトコンの旧正月(テト)大攻勢で多くの米軍人が傷つき死んだ。 米軍首脳部がベトナムに緊急投入されたが、彼らが行った野戦病院で一人の兵士が死に際に「空飛ぶ戦車を作ってほしい」と言った。 米軍首脳部が「どのようにすれば空飛ぶ戦車を作れるだろうか」と対策会議を行った。 それで出てきたのがベトナム戦で活躍したヒューイ(UH-1H)ヘリコプターだ。 このヘリコプターが出てくる前までは、ヘリコプターは単純な輸送用であって攻撃武器として活用するという概念が殆どなかった。 しかし野戦の必要によって革新的武器が登場したのだ。 このように武器に対する所要は野戦から出るもので、戦闘員の生命価値を保護するという本質的目的に忠実でなければならない。 先端武器競争はこれと関係がなく先端それ自体だけを目的とする。 イラクとアフガン戦争で米国が最先端無人航空機とステルス機を出動させたが、本来一線戦闘員の武装は以前に比べほとんど良くなっていなかった。 抵抗軍が30メートルの距離から防弾服の隙間を照準して撃てば米軍兵士は耐えられない。 それでも武器体系はただ先端にばかり駆け上がった。 このような逆説は今韓国軍にもそのまま現れている。
北韓に対する政治的メッセージとして最先端軍事兵器の導入を明らかにする保守政権でも、実際に一線の戦闘員が必要とする個人装具と戦闘装備は依然として劣悪な状況だ。 さらに地上軍の場合、ベトナム戦でも見たような第2世代武器体系と肉声に依存する小部隊指揮、徒歩移動など先端武器とはかけ離れた停止した時間に置かれている。 韓国軍の戦う方法と兵器体系の発展は米国の先端兵器を標準にした模倣と踏襲から抜け出せずにいるためだ。
ベトナム増派とブラウン覚書の代価、M16小銃
韓国軍は50年代に米軍が2次大戦と韓国戦争で使った装備と物資の援助を基に基本武装の要求を充足できた。 航空戦力では戦争時期に米軍から譲り受けたムスタング(F-51D),最初のジェット機であるF-86セーバーなどがある。 地上軍もやはり米軍が使ったM1系列のガーランド小銃、カービン小銃とM-55/M-45D 12.7ミリ径砲、キャリバー50(MG50),8インチ曲射砲、57ミリ対戦車砲、バズーカ砲として知られる60ミリ砲(M9/M9A1),57ミリ無反動砲などを買収し、米軍が使ったM48戦車を改良して使った。 米国の援助で成り立った物資、装備の軍事支援は1961年までに16億ドルに及び、経済援助31億ドルまで含めて総額47億ドルは同じ期間の我が国の国民総生産金額の10%に達する規模だ。 ここに米軍を標準にした各種軍隊の編成と戦闘方法、認識体系が確立される。
このように韓国軍現代化の草創期に米国依存的な体制は以後60年余りの間、韓国軍軍事力増強のすべての方向を決めた。 例えば1960年代韓国軍の野砲生産が60ミリが主流になった理由は、それが韓半島戦場に適合したためではなく、米軍が提供する在庫砲弾が主に60ミリだったためだ。 このような傾向は今なお続く。 1990年代に韓国型戦車(K-1)の主砲が105ミリだったが、米軍が冷戦以後120ミリ砲弾を海外輸出禁止目録から解除するとわが国の戦車も主砲を120ミリに改良することになる。 黙示録のような国家終末の戦争イメージに苦しめられた韓国軍には他に選択の余地がなかった。
ひたすら米国の援助だけを眺めた韓国軍現代化は、逆説的に米国によって牽制を受けもした。 1954年の韓-米合意議事録は、韓国軍の10ヶ予備師団の追加新設と軍艦79隻、ジェット戦闘機約100機を提供する条件で、韓国は「国際連合司令部が大韓民国の防衛のための責任を負担する間、大韓民国国軍を国際連合司令部の作戦指揮権下に置く」という条項を明記している。 韓国軍の独自の北進統一を断念させる条件で韓国軍の現代化に米国が同意したわけだ。 韓国軍現代化の新たな契機はベトナム戦争だった。 1966年2月ベトナム政府が韓国に増派を要請するや韓国政府は増派に先立ち米国に韓国安保問題解決のための先行措置を要求し、これに対し米国が14ヶ条項にわたる△韓国防衛態勢の強化△国軍全般の実質的装備現代化などを約束するブラウン覚書をわが国に送ってきた。 以後、ベトナムに派兵された韓国軍は2万7000丁のM16A1小銃を米国から供与され、1974年からはライセンス生産を始めて何と60万丁に近いM16小銃が生産された。 韓国軍が最先端米軍と同じ火力を提供されるというブラウン覚書の精神によるものだった。
ベトナム戦に注力した米国は駐韓米軍の一部を縮小せざるを得ず、これに伴い韓国に新型戦力を配置することによって戦力の空白を解消し韓国軍現代化を支援する。 1965年に韓国に配置されたナイキ-ホーク地対空ミサイルと追加配置された戦車(M48),ヘリコプターなど一部戦力増強があったが、この戦力は1970年代に韓国に委譲される。 ‘援助を受ける国’として韓国のイメージは1974年に朴正熙大統領がニクソン ドクトリン発表に対応して推進した自主国防計画を通じてはじめて自立的イメージへの転換を模索することになる。
朴大統領は韓国が単独で北韓の侵攻を阻止し、米増援軍を保障するための部隊創設、配置、戦力増強、前方地域要塞化などを土台に韓国軍の防御作戦体系を構築する自主国防政策を推進した。 特に防衛税法立案と軍戦力増加事業である‘栗谷(ユルゴク)事業’を通じて国内総生産比6%、政府財政対比30%を国防予算として投じ、海外優秀科学人材の招へいと政策支援を通じて国防研究開発、防衛産業を育成すると同時に核およびミサイル開発の試みを通じて独自防衛力量拡充を構想して施行する。 「戦いながら建設する総力安保態勢」で対北韓体制対決で優位を確保しようとしたわけだ。 栗谷事業は74年に第1次事業が推進され、以来2011年まで総額121兆ウォンの武器導入、すなわち防衛力改善事業として今日まで続いてきている。 朴正熙政権時期が韓国軍が韓国戦争、ベトナム戦を超越した第3世代軍事力に転換する契機を作った時期といえる。
1980年の新軍部登場以後、米国依存度が一層深刻化
1994年の火の海危機は
アパッチ ヘリコプター、パトリオットなど
米国武器購買圧力の契機になり、
2010年天安(チョナン)艦、延坪島(ヨンピョンド)危機は
ステルス戦闘機などの販売を促進する土壌として作用した。
この時期に国内防衛産業は基本兵器を国産化するという旗じるしの下で飛躍的に発展した。韓国型戦車(K-1),韓国型装甲車(K-200),自走砲(K-55)と各種小火器類、弾薬などを核心にした防衛産業が活性化する。 実際、国内防衛産業の基盤が弱まり再び米国産兵器購買に方向が変わったのは1980年の新軍部登場以後であった。 目覚しい経済成長の余力を備蓄した新軍事政権は自主国防の旗じるしを投げ捨て米国依存度を深化する武器の海外導入政策へ切り替えることになる。 以後1993年文民政府で監査院の栗谷不正特別監査があるまでの約13年間、海外武器導入は政界の実力者が掌握した聖域中の聖域だった。 しかし栗谷不正監査を通じて海外武器取引の黒い実態があらわれ始めたが、最も重要な武器導入事例としては韓国型戦闘機(KFP),海上哨戒機(P-3C),地対空ミサイル(ミストラル),輸送機(CN-235),潜水艦など陸海空軍海外導入武器全般にわたっている。 監査院監査に続き検察は兵器導入の代価として金を着服したイ・ジョング、イ・サンフン前国防部長官、ハン・ジュソク前空軍参謀総長、キム・チョルウ前海軍参謀総長を拘束起訴し外国にいたキム・ジョンフィ前大統領府外交安保首席秘書官を起訴中止した。 検察はわいろを提供した武器仲介商のチョン・ウィスンをわいろ供与の疑いで拘束し、わいろ供与の疑いを受けた現代精工のチョン・ヨング会長、三星(サムスン)航空のユン・チュンヒョン常務を不拘束立件した。 この事件を通じて去る軍事政権時期に武器導入過程で巨額の秘密資金とわいろがあったという事実と、各種裏面契約を通した不当手数料着服など千態万象の権力型不正が露見した。 栗谷不正を監査した文民政府もやはり不正からは自由でなかった。 白頭(ペクトゥ)偵察機導入過程でロビーが露見したリンダ・キム事件をはじめ電子戦装備、輸送機導入過程で雑音とスキャンダルが絶えなかった。
最先端に向かった長期疾走は
米国の軍需産業だけを肥えさせ
国内防衛産業は萎縮させる
ジレンマに向かいつあって
それはまさに安保の逆走行だ
一方1990年代以後、全世界で兵器の大量注文が縮小され国防費が縮小される世界的傾向は米国の防衛産業にも危機として迫った。 これに対し過去の無償援助と借款で維持された韓国との同盟も、その後は武器輸出を通じて米国内防衛産業関連企業を保護する重要な国家利益の関係として認識し始めた。 その基点は1995年クリントン大統領が例年安保報告書で標ぼうした‘経済安保’概念で、彼は「今後対外安保政策で米国の商業的利益を積極的に考慮する」という基調を公開的に明らかにする。 以後、米国は対韓半島政策で武器輸出を制限する要因(非拡散)は縮小し、促進する要因(商業的利益)は拡大してきた。 第5世代級先端兵器導入が夕立ち式に推進される現在は、米軍需企業の商業的利益が最も優先的に考慮される状況に達した。 特に米国は韓半島の主要安保危機のたびに韓国に対する兵器販売という国益を実現する機会をつかんだが、1994年の火の海危機は米国製アパッチ ヘリコプター、パトリオット ミサイル、航空機赤外線監視装備に対する購買圧力を加える機会として活用された。 2010年の天安艦、延坪島安保危機もやはりステルス戦闘機をはじめとする先端兵器の販売を促進する土壌を提供したと言える。 韓-米同盟の強化を叫んだ李明博政府は、このような米国の要求に積極的に応じて耐えがたいほどに海外製兵器の導入を急ぐことになり、国内防衛産業は極度に萎縮する状況を迎えた。
去る60年間余り、第2世代武器体系から始まった韓国軍の兵器導入は今や5世代級兵器導入まで予見している。 韓国軍の兵器体系は現在全軍で約700種に及び、韓国の軍需調達に参加する国内外企業だけ年間4000社余りに達し、軍需品の種類も70万種を上回る。 軍需調達は国内で最も複雑で規模の大きい巨大な生態系であり、今この瞬間にも進化は続いている。 しかし国内防衛産業は継続的に萎縮しながら米国の商業的利益を後押しする下部構造に転落するかも知れないという危機感が広まっているのも事実だ。 ひたすら先端を指向するよどみない疾走に、実際の安保は増進されず耐え難い国富流出が予想されるジレンマが私たちの前に置かれている。
キム・ジョンデ/ディフェンス21プラス編集長