21日午後、蔚山(ウルサン)、北区(プック)、楊亭洞(ヤンジョンドン)の現代自動車蔚山工場、明村中門付近の送電塔は強い風が吹くとぐらぐらと揺れた。 細い鉄筋だけで組まれた高さ50mの送電塔の中程に、アパートで言えば8~9階の高さに籠城した現代車社内下請け解雇労働者チェ・ビョンスン(36)氏と現代車非正規職労組チョン・ウィボン(31)事務局長は強い風が吹くたびに飛ばされそうで危なげに見えた。 チョン事務局長は「送電塔の横を走る線路を汽車が通るだけで送電塔が下から持ち上がり不安だ」と話した。 2人はバンジージャンプをする時に縛る安全ベルトで四角の送電塔にからだを結び付けている。 送電塔に上がって5日目、座ったり立ち上がったりする以外には体を動かすことが不可能なため、脚にマヒがしばしば襲う。
20日午後にはキム・ジンスク民主労総指導委員が立ち寄った。 送電塔は昨年1月にキム指導委員が上がった韓進重工業85号クレーンより危険だ。 85号クレーンには狭くとも風雨を避けられる操縦室があったし、僅かでも散策できる階段と廊下もあった。 だが、送電塔には風雨を避ける空間が全くない。 鉄筋と鉄筋の間の何もない空間を横1m、縦2mの合板で塞ぎ、かろうじて足を伸ばして座れるだけだ。
目も眩む高さにしがみついている2人を引きずり下ろそうと現代車は去る17日、墜落防止の安全装備もなしに外注警備業者職員を送電塔上へ送り込みもした。 チェ氏は「高空籠城中の非正規職労働者であれ、私たちを引きずり下ろそうとする警備労働者であれ、誰が落ちて死んでもかまわないと思っているのか」として「現代車が常識を持っているのか疑う」と話した。
降雨の予報に非正規職労組がこの日テントを上に送ろうとしたが、現代車は職員400人余りを送りこれを遮った。 非正規職労組関係者は「月曜日に雨が降るというが、雷まで落ちれば感電の可能性があり、防電服を上に送るか考慮中」とし「合板もボンドで圧縮したものなので、水に濡れれば折れる恐れがある」と憂慮した。
このような不安に較べれば、食事や用便など生理的現象を解決することは大きな問題ではない。 チェ氏は 「あけっぴろげな空間で生理現象を解決するのはきまり悪いのはもちろん」としながらも「地上より不便ではあるけれど我慢できる」として寂しげに笑った。
現代車は2人の家族と知人たちを通じた懐柔と圧迫を続けている。 2人が籠城を始めた翌日の18日夜にはチョン事務局長が属する下請け業者の社長と現代車の職員がチョン事務局長の母が一人で暮らす慶北義城の家を訪ね「送電塔から降りれば正規職になれる」と言った。 チョン事務局長は「母親に電話で‘ここから降りて行けば何もかもだめになる。そのうち降りて行ったらどこか静かな所へ遊びに行こう’と言ったが、とても心配している」と話した。 一日にも何度も‘義城警察署から電話がきて、お前を降りて来させろと言っている’という友人の電話も受けている。
チェ氏とチョン事務局長を踏みとどまらせているのは‘働きたい’という意志だ。 チェ氏は「上から工場をしばしば見下ろしている」として「一緒に仕事をして闘争した同志たちと入って行って一緒に働き、酒も酌み交わしたい」と苦々し気に話した。 続けてチェ氏は「非正規職を正規職として雇用しろとの決定を、現代車が受け入れない間に無数の人々が苦痛を味わった」として「このように法を犯して他人に被害を与えながら居直っている現代車に必ず勝ちたい」と話した。
来る26日には2人と意を共にする非正規職労働者が送電塔に集まる計画だ。 現代車蔚山工場だけでなく全州(チョンジュ)工場と牙山(アサン)工場の非正規職労働者が一日全面ストを行い送電塔の下に集まる‘蔚山工場包囲の日’を準備している。
蔚山/シン・ドンミョン、ホ・スン記者 raison@hani.co.kr