李在明(イ・ジェミョン)大統領は8日、包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP、以下「協定」)への加盟申請を年内に提出しないよう、関係省庁に指示した。大統領府は、被害が予想される国内生産者をはじめとする国民と十分に意思疎通を図りながら、加盟問題を検討する方針を明らかにした。8月末に社会的議論を本格的に開始した後、加盟に向けペースを上げていた政府が一歩後退した形だ。
同日、大統領府は6日の国務会議で、来月開かれる同協定の閣僚会議において韓国の加盟が議論されるためには、遅くとも今月中旬までに公聴会の開催計画を官報に公示しなければならないという意見が出たと明らかにした。これに対し、李大統領は「期限を設けるよりも、誠意を持って農業・漁業関係者の方々の声に十分耳を傾け、継続的に対話を行うよう求めた」という。政府は8月27日の対外経済閣僚会議の後、加盟に関する社会的議論に着手する方針を示し、先月28日には経済的影響分析の結果を公表した。次の段階である公聴会を控え、ひとまず立ち止まった形だ。農地調査をめぐる農家の反発が激しい状況で、協定まで推進した場合、農業者の政府に対する感情が大きく悪化するのを懸念した決定とみられる。
協定への加盟に関する公論化がまだ十分に図られていない状況を考えると、年内の申請を見送ったのはやむを得ない選択といえる。通商協定は産業ごとに得失が大きく分かれ、被害を受ける業種の従事者の雇用や所得に直接的な影響を及ぼす。政府の分析でも、協定に加盟した場合、実質国内総生産(GDP)は発効10年後に0.38ポイント上昇する一方、農林水産業の生産は年平均8500億ウォン(約1000億円)程度減少すると推計された。加盟の効果を綿密に検討した上で推進の可否を決定し、その過程で国内生産者の意見を十分に反映させる必要がある。そうしなければ、韓米自由貿易協定(FTA)のときのように、深刻な社会的対立を避けられないだろう。
国際通商秩序は、米国による一方的な関税賦課を機に保護貿易へと急激に傾いており、先行きも極めて不透明だ。開放型通商国家の韓国にとっては極めて不利な環境だ。立場を同じくする国々と通商ネットワークを広げ、輸出市場を多角化し、中核的なサプライチェーンを安定的に確保することが、それだけ重要になってきた。ただし、この協定は市場開放の水準がかなり高い。政府が加盟を決めるなら、国内生産者の長期的な発展策と具体的な被害補償対策を併せて提示し、生産者たちの懸念を和らげなければならない。大統領府が2015年の韓中自由貿易協定を批准した際に約束した農漁村共生協力基金1兆ウォンのうち、不足している7千億ウォンを財政で補填すると明らかにしたことは、信頼回復の出発点となり得る。