本文に移動

済州行方不明女性死亡事件、そして…被害者の経験は被害者のものだ【寄稿】

キム・ヘジョン|韓国性暴力相談所所長
5月に済州で行方不明になったチャン・ミランさんを探すチラシの一部=家族提供//ハンギョレ新聞社

 もどかしい気持ちでニュースを更新しようと思ったが、やめた。24日午前10時46分、警察と官民軍400人あまりが捜索を開始し、1時間後に遺体が発見された。5月から100日以上行方不明だったチャン・ミランさんだ。彼女が発見された済州翰林邑洙原里は、数年前に私が1カ月滞在した場所でもある。美しい翰林で何が1人の女性を襲ったのか。猛暑を過ごしたであろう死と肉体を思う。非常に遅ればせながら、冥福を祈る。

 誰が何に襲われたのか。それを知らなければならないのに、知らないことがある。死または行方不明、暴力が発生したら、あるいは推定されたら、すべての市民は警察に助けを求める。今回驚愕したのは、通報当日に担当の警察官が「対象者と連絡が取れた」と言って、事件を失踪プロファイリングのコンピュータシステムで「失踪解除」と処理していたことだ。担当者と行方不明者の通話記録はない。警察は、実務者が単独で「変死」などの理由を入力すれば上司の決裁がなくても失踪解除にできるシステムを、今になって変更するとしている。しかし、警察への通報、行方不明者届、告発、告訴などで警察に事件を知らせたにもかかわらず、こうした事案が完全に消し去られる可能性があったということは、大きな衝撃だ。

 7月に再度行方不明者届けを出したチャン・ミランさんの家族は、8月19日にチラシを配布した。写真、名前と年齢、行方不明になった場所、特徴、連絡先を記載して。家族が知っていることをすべて書き出し、公開した。人を探さなければならないからだ。無為に時間が流れる中、決して見過ごせない報道があった。23日、行方不明者の家族があるメディアにこう語ったのだ。「記者よりも失踪事件の当事者である家族の方が何も知らない」、「現在、失踪事件を担当している警察官に『基地局の照会結果、動線や時間を共有してもらえるか』と尋ねたが、捜査内容なので家族であっても公開できないと言われた」というのだ。もどかしい。行方不明者の最後の動線と時間を家族に教えると捜査ができなくなるのか。事件の調査と解明が汚染されるのか。3カ月以上も行方不明で一日を千年のように感じている家族、顔や名前、連絡先などをすべて公開した彼らに、その情報はなぜ共有されてはならないのか。家族以外に漏らしてはならないのなら、注意事項を付けて提供できるのではないか。合理的な理由が思い浮かばない。なぜ記者には事件の情報を少しずつ流しておいて、行方不明者の家族には隠すのか。

 「捜査機密です」。これは警察の昔からの回答だった。暴力、身体の損傷、死亡事件が発生した時、当事者でさえ何が起こったのか正確に知りえないことがある。その時、市民はみな警察に訴えるが、捜査当局は収集した情報を十把ひとからげに「機密」にする。

 性暴力事件に限っても、もどかしいケースが非常に多い。泥酔状態で性暴力の被害にあった人が、自分の着ていた服が道具にされて何をされたのか、街中や車内で違法撮影されたのではないか、1人ではなく複数人で運ばれたのではないかと混乱していることがある。このような時、警察が確認したDNA鑑定の結果や監視カメラ(CCTV)の映像、クラウドや各種のストレージに資料が保存されていないかは、被害者や家族ら当事者が知るべきではないのか。被害にあった犯罪の事実関係を当事者が知らない場合、警察が確保した資料を被害者に「捜査機密」だとして公開しないのは、非常に不当だ。その理由は第1に、被害者が経験したことだからだ。第2に、変えたり変形させたりできない事実についての記録物だからだ。第3に、損なわれないよう警察が最初に確保した状態にあるからだ。その他の懸念点は注意事項を付けて管理すれば済むはずで、一方的に捜査機密として扱うのは文字通り被害者の排除に過ぎない。

 今年10月2日からは、警察が送検せずに終結させる事件について、被害者が異議を申し立てるために捜査記録の閲覧・写しの申請が可能になる。これは、補完捜査権の廃止などが盛り込まれた刑事訴訟法の改正によるものだ。しかし、警察がどのような捜査記録をどのように提供するかは不明だ。刑事訴訟法に保障せよと明記されている捜査記録には、事実関係を確認する資料はもちろん、被疑者の主張や主な供述、警察の決定の根拠と意見をすべて含むべきだ。そして、異議申し立てが目的でなくても、被害者が今後生きていく上で知っておくべき事実関係は当事者に教えてほしい。被害者が経験したことは被害者に属するものだからだ。

24日、行方不明になってから104日たってチャン・ミランさんの遺体が発見された済州市翰林邑で、警察が事件現場を規制している/聯合ニュース
//ハンギョレ新聞社

キム・ヘジョン|韓国性暴力相談所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1274597.html韓国語原文入力:2026-08-25 17:57
訳D.K

関連記事