本文に移動

「ハメネイ師死亡」イラン、実力者ラリジャニ体制をすでに構築

登録:2026-03-02 09:36 修正:2026-03-02 10:37
国家安全保障会議事務局長、非常事態体制を主導 
すぐには政権交替や体制崩壊とはならない見込み
イラン最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師の死後、非常後継体制を率いるイラン国家安全保障委員会のアリ・ラリジャニ事務局長(左側前)。ラリジャニ事務局長が昨年8月13日、レバノンのベイルートで同国のナビーフ・ビリー国会議長と会談した後、発言している様子/ロイター・聯合ニュース

 米国とイスラエルが、イランに対する攻撃でイランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師の死亡を確認したと発表したことを受け、米国・イスラエルとイランの戦争は新たな局面に入った。イランは今回の戦争に先立ち、ハメネイ師の死亡に備えた後継体制をすでに確立したとされており、イスラム共和国体制の存続と抗戦の今後が注目される。

 ドナルド・トランプ大統領は28日、ソーシャルメディアで「ハメネイは歴史上最も邪悪な人物の一人であり、死亡した」と発表した。

 トランプ大統領は「イラン国民が自国を取り戻すことができる最大かつ唯一の機会だ」としたうえで、「われわれは、イラン革命防衛隊、軍隊、そして、その他の治安・警察部隊の多くの人たちが、もはや戦うことを望んでおらず、われわれに免責を求めているという知らせを聞いている」と主張した。

 イランの最高指導者ハメネイ師が死亡したことで、イランの政権交替、さらにはイスラム共和国体制自体を転覆させるというものであり、イラン国民に蜂起を促したのだ。

 トランプ大統領は前日、イラン攻撃が始まった後にソーシャルメディアに投稿した動画でも、「いまこそ、あなたたちの運命を自ら掌握し、目前に迫る繁栄と栄光ある未来を切り開くときだ」として、「いまこそ行動する瞬間だ。この機会を逃すな」と強調した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相も、イラン国民に政府を転覆するよう促し、いまこそイラン国民が「暴政のかせを脱ぎ捨て、自由で平和を追求するイランを築くべきとき」だと述べた。

 トランプ大統領がハメネイ師除去に成功したと発表したことで、自身が明言したイランの政権交替に一歩近づいたとみることもできる。

 しかし、イランの政権交替やイスラム共和国体制の転覆が可能かどうかは依然として疑問だ。何より、イランは今回の戦争に先立ち、ハメネイ師の死亡に備え、国家運営全般を担当する「プレイメーカー」をすでに確立しているとされる。ハメネイ師に何かあった場合に国家運営を担う人物としては、最高国家安全保障委員会(SNSC)のアリ・ラリジャニ事務局長(67)が指定された。

 ラリジャニ氏は革命防衛隊の指揮官出身で、長年にわたり政治官僚を務め、現在はSNSCの事務局長として事実上国政全般を調整していると、ニューヨーク・タイムズなどが報じている。最高指導者のハメネイ師からは非常時における国家運営の全権を委任され、ハメネイ師死去の際には臨時指導者の役割を遂行する最有力候補だとみられている。

 ハメネイ師は、米国とイスラエルによる攻撃だけでなく、自身と最高指導部に対する暗殺シナリオまで想定した一連の指針を下していたとされる。ハメネイ師は自身が任命する主要な軍および政府指導部の職責ごとに、最大4段階の後任(継承ライン)を指定するよう指示し、通信途絶または本人殺害時にも国家運営の決定を下せるよう、少数の側近グループに権限を委任したと報じられている。

 ハメネイ師は今回の米国およびイスラエルとの戦争に先立ち「殉教」を覚悟し、このような非常事態の国政運営および後継体制を確立したといわれる。

 昨年6月のイスラエルとの12日間に及ぶ戦争の間、潜伏状態だったハメネイ師は、すでに3人の潜在的後継者を内定していた。しかし、高位聖職者ではないラリジャニ氏はその候補に含まれていなかった。

 しかし、ラリジャニ氏は昨年8月、マスード・ペゼシュキアン大統領によってSNSCの事務局長に再任命されてから、イランの国防・外交・安全保障戦略を総括し、実権を強化してきた。ラリジャニ氏は、革命防衛隊のヤフヤー・ラヒーム・サファビー元総司令官、モハンマド・バーゲル・ガーリーバーフ国会議長、アリ・アスガル・ヘジャジ秘書室長らとともに、最高指導者の中核的な側近グループに属し、「戦時体制」において決定的な役割を担当するよう指定されたとされる。

 ラリジャニ氏は2008年から2020年までの12年間、イラン議会(マジュリス)議長を務め、歴代最長の議長という記録を打ち立てた。革命防衛隊(IRGC)の将校出身で、イラン国営放送(IRIB)代表や文化・イスラム指導相も歴任した。2005~2007年にもSNSCの事務局長を務め、イラン核協議の首席代表として活動してもいる。

 ラリジャニ氏を中心とするイランの非常体制によって、急激な政権交替やイスラム共和国体制の崩壊は難しいとされている。

 トランプ大統領は「大規模かつ精密な空爆は、中東全域、さらには全世界の平和を達成するというわれわれの目標のために、今週中、あるいは必要であればそれ以上、中断なく続くだろう」と明言した。しかし、米国が高強度の空爆と攻撃を継続できるかどうかについては疑問が残る。

 今回の戦争に先立ち、現時点でイラン周辺に配備された米国の軍事力は、長くて4~5日間の高強度の空爆や1週間程度の低強度の空爆が可能な水準だと、24日付の英国フィナンシャル・タイムズ紙がイスラエル情報当局の話を引用して報じている。空母ジェラルド・フォードは、今年初めにカリブ海で作戦を終えた後、整備も保守作業も行わないまま中東に再派遣されたため、各種の技術的問題によって乗務員は疲弊しているとみられている。空母の水洗トイレの設備が故障し、乗務員が列をなしてトイレを使用したりもしている。

 米国のダン・ケイン統合参謀議長はこれに先立ちトランプ大統領に対して、イラン攻撃に踏み切る場合、イランの大規模反撃で米国とイスラエルの防空網が消耗することになり、長期戦が予想されるとして、攻撃に反対したと報じられている。

 トランプ政権は1月初めのベネズエラ攻撃で、ニコラス・マドゥロ大統領を連行し、既存の指導部と体制をそのまま存続させた。政権交替や崩壊のためには地上軍を送り、その後の国家建設(ネーション・ビルディング)に莫大な資源を投入する必要があるためだ。

 ハメネイ師の除去が確認されれば、トランプ大統領としては、むしろこれを口実に、イランとの対話と交渉を再開することもありうる。

 米国とイランの戦争は、今後のイランの新指導部がどの程度堅固に機能し、米国との抗戦を継続できるかどうかにかかっている。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1247063.html韓国語原文入力:2026-03-01 16:09
訳M.S

関連記事