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李在明大統領の歴史的責務は「有能な民主政権」【コラム】

登録:2025-06-13 06:50 修正:2025-06-14 07:28
李在明大統領が11日、ソウル龍山の大統領室で記者団との食事を終え、食堂を後にしている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 李在明(イ・ジェミョン)大統領は1987年の民主化以後、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、文在寅(ムン・ジェイン)に続き4人目の民主党系の大統領だ。 民主党で最も「成功した大統領」として挙げられるのは、断然金大中大統領だ。金大統領は通貨危機の克服と民主主義、人権の伸張、南北関係の改善などを成し遂げた。盧武鉉大統領は政治改革と国家バランス発展、韓米自由貿易協定(FTA)などを所信を持って推進し、文在寅大統領は朝鮮半島平和プロセスの推進と新型コロナウイルス感染症への対応が業績に挙げられる。不動産価格の暴騰は盧武鉉・文在寅政権の共通の汚点だ。民主党の4人目の大統領となった李大統領は、「有能な民主党政権」を実現すべき歴史的課題を抱えている。

 政権交代は前政権の失敗にともなう反射利益の性格を持つが、民主党政権は特に、救済金融事件(金泳三)、大統領職罷免(朴槿恵、尹錫悦)など保守政権の前例のない巨大な失政の後に政権に就いた。李大統領は「内乱の審判」を求める圧倒的な民意に後押しされ、1728万票余りという歴代最多得票で当選した。12日に発表された全国指標調査(NBS)で、李大統領の1週目の国政遂行に対する支持率は53%。同機関の「尹錫悦」政権第1週に対する調査(48%)より5ポイント高い。李大統領が「うまくやるだろう」という回答も65%を占める。

 李大統領は、内乱の終息を望む多数の国民の支持と170議席近い巨大与党という強力な国政運営の動力を持っている。最大野党の「国民の力」は、大統領選挙の敗北後、党の再整備もままならず、与党に対する牽制能力が弱い状況だ。

 しかし、李大統領を取り巻く対内外の環境は厳しい。李大統領は就任初日に龍山(ヨンサン)執務室に出勤し、職員もパソコンもプリンターもない状態を見て「まるで墓場のようだ」と言ったが、李大統領が引き継いだ国内外の状況もそれに似ていると言える。内需沈滞と輸出不振、トランプ大統領による貿易・安全保障関連の圧力、政治・経済的二極化など、構造的な障壁が高い。対北朝鮮ビラ散布と拡声器放送の中止で始まった南北関係の改善も、米中ロなど周辺国の情勢と共に解決していかなければならない高難度の課題だ。歴代最多得票ではあるが、非常戒厳事態にもかかわらず過半数の得票率に及ばなかった点(49.42%)、革新と保守の両方の得票を合わせれば「5対5」という大統領選挙の結果は、李大統領と民主党にとって油断できないものだ。悪条件の中で有能なリーダーシップが切に求められる。

 韓国国民が李大統領に望むこともまた「能力」だ。大統領選挙直後に実施された世論調査によると、国民は李大統領を選んだ理由として「内乱審判」とともに「業務能力」を挙げた。李大統領に最も期待する点は「庶民の暮らしの回復」だ。「尹錫悦に審判を下すと共に、仕事ができる人」を選んだということだ。李大統領も「実用」を前面に掲げ、「国民の皆さんが『李在明を選んでよかった』という効力感と自負を持てるよう、全力を尽くす」と述べた。

 与党関係者や支持者、企業家などの大方の反応は「李大統領がうまくやってくれることを願って見守っている」ということだ。政権初期の設定が重要な問題は、断然「人事」だ。これまで大統領室と内閣の人選は能力・実用中心で行われているため、国民の目には破格と感じられたり感動を受けるような人物が見当たらないのも事実だ。女性の起用もごく少数だ。公職綱紀、人事検証、検察改革を扱わなければならない民情首席に借名不動産保有の前歴を持った者が起用された点も、政権にとって負担となる要因だ。外交安保ラインで「自主派」と「同盟派」の意見の相違が抑制と均衡よりは対立の要因となるなら、今後深刻な問題になるだろう。歴代大統領が長官候補の相次ぐ辞退で政権初期に危機を迎えた経験を反面教師にしなければならない。

 国政課題や改革作業の緩急と強弱の調節も、任期初期のデザインが重要だ。政権引き継ぎ委員会に当たる国政企画委員会が来週発足し、政策の優先順位と実行戦略を立てる予定だ。短期間に急速に成果をあげようとして、深刻な社会対立と副作用をもたらした前政権の失敗を教訓としなければならない。内乱、キム・ゴンヒ、C上等兵をめぐる3大特検も「患部」を精密かつ素早く取り除く有能さを発揮しなければならない。

 政権の成功は、国民生活を好転させ、国家競争力を高めることにかかっている。政治的には結局、与党に次期政権を引き継げるかどうかで判断される。これまで3人の民主党大統領のうち、政権を再創出して退任したのは金大中大統領のみだ。李在明大統領もまた「有能な民主政権」を率いて5年後に政権再創出に成功できるだろうか。重い課題がのしかかっている。

//ハンギョレ新聞社
ファン・ジュンボム|論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1202508.html韓国語原文入力: 2025-06-12 18:44
訳H.J

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