ソウル高裁は、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン大統領候補の選挙法裁判が差し戻された日の翌日、裁判部の割り当てと公判期日の指定、出廷召喚状の発送などの手続きを同時に進めた。特に「被告人イ・ジェミョン」に送る出廷召喚状を裁判所の執行官が直接手渡すようにした。召喚状を人の手で送る「執行官送達嘱託」は、郵便では配達できない場合に用いる最後の手段だ。ソウル高裁も最高裁の上告審と同様、前代未聞の速さで裁判を進めている。司法府は支持率1位の候補の被選挙権を剥奪するとでも腹を決めたのか。
イ候補の公職選挙法裁判は、罰金刑か懲役刑という量刑の区分と、再上告審を通じての最高裁の最終判決がいつ下されるかについてのみ残っている。国民全員が知っているように、6月3日の大統領選の前に罰金100万ウォン以上の刑が最終宣告されることになると、イ候補は大統領選挙への出馬資格を喪失する。チョ・ヒデ最高裁長官は、国会の3分の2に近い議席数を保有する最大政党の候補者なしで大統領選挙を実施しても良いと考えているということなのか。
イ候補の支持者だけでなく中道層までもがチョ最高裁長官を批判する理由は、選挙で選ばれていない権力である司法府が、大統領候補を決定しようとしているからだ。選挙運動が始まれば、司法府は進行中の裁判を停止するのが慣例だ。しかし、今回最高裁は法的に3カ月以内に行うことになっている上告審の裁判をわずか36日で処理した。大統領選に影響を与えようとする意図があると考えざるをえない。民主主義の最後の管理者として公正であるべき最高裁が、司法に政治を引き入れて国民主権の侵害を試みているのだ。
最高裁が上告の理由書提出の期限(20日)を認めず、大統領選前に確定判決を下すのではないかという予想、ソウル高裁が破棄控訴審で無罪判決を下した場合は、最高裁が破棄自判を通じて有罪を確定するのではないかという主張など、あらゆる推測が乱舞しており、ソウル高裁の裁判部または最高裁長官と最高裁判事を弾劾すべきだとする主張があふれている。最高裁が選挙に介入して「法に則って」と主張するならば、国会も法に則り対応しなければならないという主張だ。ただでさえ内乱によって深刻な混乱に陥っている状況で、司法府が大統領選挙に割り込んだことで国を満身創痍に追い込んでいる。
このすべての混乱を自ら招いたチョ最高裁長官ら関係者が問題を解決しなければならない。大統領選挙前に破棄差戻し審の結果が出たとしても、最高裁の再上告審は中断し、選挙に介入しないことを宣言しなければならない。いったい国をどこに引っ張っていこうとしているのか。