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イ・ジェミョン「最高裁長官弾劾」速度調節…外延拡張戦略への打撃懸念

慶尚北道、忠清北道、江原道など保守の強い地域を回る「傾聴ツアー」をおこなっている、共に民主党から大統領選に出馬するイ・ジェミョン候補が4日午後、忠清北道丹陽郡丹陽邑の丹陽九景市場を訪れ、子どもを抱いてある家族と写真を撮っている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 共に民主党から大統領選に出馬するイ・ジェミョン候補の公職選挙法違反疑惑事件で、最高裁が有罪を趣旨とする破棄差し戻しを決定してから、同党で沸き立つ「最高裁判事先制弾劾論」に、速度調節を注文したのは、イ・ジェミョン候補本人だ。「最悪の場合、候補を盗まれる恐れがある」という懸念が党の内外からあふれているが、苦労して積み上げてきた「最大多数確保戦略」を大統領選挙の1カ月前に手放すことはできない、との判断が作用したと分析される。

 4日で4日目となる、慶尚北道、忠清北道、江原道などの保守の強い地域を回る「傾聴ツアー」中のイ候補は、慶尚北道醴泉郡(イェチョングン)で市民を前にしている途中、「チョ・ヒデ弾劾をせよ」と叫んだ支持者に、「それは後で話そう」と答えた。同日の夜、忠清北道堤川市(チェチョンシ)では、「司法府の政治介入主張をどのように考えるか」と記者団に問われ、「私が関係した問題なので、できるだけ考えないようにしようと努めている」と述べるにとどまった。

 これは「(内乱勢力を)決して許してはならない」、「今も残党が残って内乱勢力を庇護(ひご)しており、内乱勢力が主体となってこの国にまたも責任を持つと言っているが、成功できないと確信している」、「内乱は収拾されるように思われたが、またはじまった。これを阻んではじめて大韓民国の生きる道が生じ、地方も共に生きる」として、内乱終息を繰り返し強調したのとは温度差がある。この発言は、現在は無所属で、大統領選出馬を狙う「内乱首相」ハン・ドクス候補を標的にしたものと分析される。

 イ候補は前日にも、最高裁判決以降に民主党議員のグループチャットルームで沸き立った「最高裁判事即時弾劾」を叫ぶ強硬論にブレーキをかけている。3日に法曹界出身のある当選1回議員がチャットルームで「国民を不安にさせないことが重要だ。すべての可能性は念頭に置いて備えるにしても、毅然とした姿勢を示そう」と主張したことに対し、イ候補は「よくまとめて下さった。そのように推し進めていって下さい。私は現場にいるつもり」と答えた。動揺する民意は落ち着かせるにしても、最高裁が27日の上告期間を保障しないことでイ候補の防御権を侵害した時に素早く弾劾に着手しよう、との趣旨の主張に、イ候補が答えたというわけだ。これについては、複数の議員が「イ候補が事実上、先制弾劾主張をけん制したもの」と解釈している。

 イ候補のこのような対応は、下手に弾劾カードを切ると、これまでの外延拡張戦略が大きな打撃を受ける恐れがあるという懸念から発しているとみられる。イ候補はこの日、ユーチューブチャンネルの登録者が100万人を超えて「ゴールドボタン」が贈られたことを記念して投稿した動画で、「憲法を守ることが保守の核心だが、(今の韓国社会の保守は)憲法を破壊している」として、「私のことを進歩だとする評価があるが、私は非常に保守的な人間」だと語った。発言の趣旨は「憲法破壊保守」を強調することにあるが、自身のことを「過激だ」とか「左派」だとする保守陣営によるレッテルに対抗して、「自分こそ保守」だと述べて安定感をアピールしようとの意図も隠れているわけだ。

 この日の議員総会でも、ある首都圏選挙区選出の当選1回議員が「今、最高裁判事を弾劾すると、国民の力が『民主党は立法も掌握し、司法府も形骸化しようとしているのだから、せめて行政府は自分たちにくれ』と訴えるだろう」、「中道層がそれに説得されれば、私たちは勝てない。決行する瞬間まで低姿勢を保とう」と強硬派を説得したという。民主党の別の首都圏選出議員は、「イ候補の事件の破棄差し戻しよりも、我が党の今後の行動を懸念する声が伝わってくる。我々が勝つという揺るぎないメッセージが必要だ」と述べた。

 ただし、イ候補は最高裁判事弾劾カードを放棄したわけではない。イ候補に近い関係者は、「非正常な状況であるだけに、非正常な対応は避けられない。あらゆるケースに備えるしかない」と述べた。党内では「刀を手にした相手に対する反撃は正当防衛」(全羅道選出の当選1回議員)、「彼らは記号1番のいない選挙を作ろうとしているが、候補を奪われてから立ち上がるつもりか」(首都圏の当選1回議員)などの強硬な主張があふれている。「忍耐の時限」は、ソウル高等裁判所が定めたイ候補の破棄差し戻し審の初公判が行われる15日になるものとみられる。民主党は公判の取り消しまたは延期を申請することにしているが、裁判所がそれを認めるかがカギとなる。

オム・ジウォン、コ・ギョンジュ、リュ・ソグ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1195799.html韓国語原文入力:2025-05-05 05:00
訳D.K