尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の暴走が続いている。より良い政府を作るという公約は守られず、政権発足から2年が過ぎたにもかかわらず、一貫して「巨大野党民主党のせい」、「イ・ジェミョンのせい」にしつつ、民生法案に対する拒否権行使、メディア掌握、夫人のキム・ゴンヒ女史防衛のために全エネルギーを使っている。公正と常識を信じた国民を裏切って、血の涙を流させている。
大韓民国の政治はもはや切迫した事態に至っている。「外国勢力依存、他力本願」の状況の中で、国の運命を日本と米国、その指導者たちに預けている。発足するなり独立有功者を共産主義者だとして侮辱し、国民の命と直結する福島第一原発の汚染水放出を傍観し、佐渡鉱山の世界文化遺産への登録では「強制労働」を明示させねばならなかったにもかかわらず、それをしないことに日本側と事前に合意していたという。「強制性」との表現について議論はなかったと言った外交部は、国民を欺いたのか。まさに是日也放声大哭(この日、声を大にして慟哭す。張志淵による乙巳勒約批判論説のタイトル)である。
尹錫悦大統領は就任1周年を翌日に控えた国務会議で、それまでの1年間の国政運営を自評している。特に外交・安保分野の成果については、「北朝鮮の善意だけに頼っていた大韓民国の安保も変貌した」と述べている。その通りだ。北朝鮮の善意のみに頼っていてはならない。だが、今のように日本の善意だけに頼るのはよいのか。
韓国は日本に対して歴史、主権、領土問題においてだけは固有の原則をもって断固たる立場を堅持しつつも、経済と安保は協力する態度を取らなければならない。だが、国民的同意なき「第三者弁済案」をはじめとして、100年前のことで日本が謝罪する必要はないと述べつつ、佐渡鉱山のユネスコ登録で「強制労働」を切り捨ててしまう尹錫悦政権の態度は、はたして彼が大韓民国の大統領なのか、そのアイデンティティーすらも疑わせる。国民は尹錫悦大統領に、日本に免罪符を与える権利まで委任してはいないからだ。
韓国が米国や日本との偏向した関係に固執するには、現在の国際関係の様相はあまりにも複雑で多極化している。米国の大統領選挙も僅差だ。このような時こそ、大統領はひたすら国民だけを見つめて「国益中心の実用外交」を展開すべきだ。今のように「親米親日」にとどまらず「崇米崇日」へと帰着するなら、その果てには地方選挙と大統領選挙の敗北という歴史的審判があるだけだ。
チョン・スミ|崇実大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )