韓国政府が佐渡鉱山(「佐渡島の金山」)のユネスコ世界文化遺産登録をめぐり日本政府と交渉する過程で、朝鮮人労働者の「強制」動員を明記してほしいという要求が日本側に黙殺されたにもかかわらず、これを公開しなかったのは、当初から「登録に賛成する」という結論を下したうえで交渉に臨んだためとみられる。外交部は6日、国会外交統一委員会所属のイ・ジェジョン議員(共に民主党)に提出した答弁書で、「展示内容を協議する過程で、『強制』という単語が入った日本の過去の史料および展示文案を日本側に要求したが、最終的に日本は(これを)受け入れなかった」と明らかにした。
外交部の答弁に言及された「日本の過去の史料」とは、佐渡鉱山のある新潟県が1988年に出版した「新潟県史通史編8近代3」に出てくる「昭和十四(一九三九)年に始まった労務動員計画は名称こそ『募集』『官斡旋』『徴用』と変化するものの、朝鮮人を強制的に連行した事実においては同質であった」という内容とみられる。「朝鮮人強制動員」を明記した日本側の史料は現地メディアも数回報道したものだ。ところが、日本がこの史料さえも展示を拒否したにもかかわらず、韓国は登録に賛成したのだ。「屈辱的」と批判される理由だ。
実際、今回の交渉過程では韓日関係改善と韓米日軍事協力を外交安全保障分野の最大の成果に掲げる尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と大統領室の意向により「登録に賛成」という答えが早くも決まっていた。日本政府も、韓国政府が佐渡鉱山の登録を拒む可能性はないと見抜いていた。したがって、最大の争点である強制動員の表現に同意する理由はなく、韓国の交渉チームはお手上げ状態だった。問題は、ユネスコ諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS、イコモス)が6月に「情報照会」(登録保留)の勧告を出すなど韓国側に有利な状況だったにもかかわらず、「強制動員」の明記を拒否した日本に交渉の間中ずっと押されていたことだ。
日本は植民統治の下で朝鮮人労働者は国家総動員令により徴集されたため、強制労働でも、不法でもないと主張する。これは「日帝植民統治が合法」であることを強調する安倍政権以降の右傾化した歴史認識に基づいたものだ。韓日関係の核心と関連した敏感な問題だ。
外交部はイ・ジェジョン議員側に送った答弁書で「2015年より後退する文案は韓国国内では受け入れ難いという立場のもとで交渉を進めた」と強調した。2015年、日本が「軍艦島」(端島炭坑)を世界文化遺産に登録した際、「自らの意思に反して連れてこられ、厳しい環境下で働かされた多くの朝鮮半島出身者がいた」と公に認めたことを今回の交渉でも守ったというのが外交部の説明だ。
しかし、尹錫悦大統領は「植民地支配と強制動員は不法」という韓国の立場を明確にしたことがなく、チョ・テヨル外交部長官も佐渡鉱山の世界文化遺産登録後、「日本は追悼式など後続措置の履行に誠意を見せてほしい」という立場を表明しただけだ。尹錫悦政権が「第三者弁済」に続き、佐渡鉱山の世界文化登録への賛成まで強制動員に対する日本の責任に相次いで免罪符を与えたわけだ。