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[寄稿]韓国で医師が独占する処方や治療の権限、専門看護師に分散させよう

登録:2024-02-29 08:05 修正:2024-02-29 08:45
イ・ダヨン|浦項市議会議員
専攻医の集団離脱が1週間以上続いている中、27日午後、ソウルのある大学病院で看護師たちが忙しそうに動いている/聯合ニュース

 市場に立ち寄った。私は果物が大好きで、旧正月の前後に上がったリンゴやみかんの値段が少しは下がったかなという期待から行ったのだが、大して違いはなかった。天井知らずの高騰で、以前のように果物を気軽に食べることに負担を感じるようになった。果物の価格が全般的に値上がりし、リンゴやみかんに代わるものもないため困っている。このように、ある物を代替するに足る別の物を「代替アイテム」と呼び、様々な領域で代替アイテムを探す様子がオンラインで確認できる。

 このような代替アイテムは消費財に限られない。今日、医学部増員反対で多くの専攻医が集団辞職し、医療の空白が生じている。現在の韓国の法体系において、医師の権限に代わる代替材はない。現行法上、医師の処方と指導監督なしに治療行為は成立しない。特に専攻医が診察、検査、手術、処置、当直など、治療の多くの部分を担っている韓国の現状においては、医療の空白という事態は避けられない。政府は医療の空白を最小化するために、診療補助(PA)看護師に多くの役割を果たしてくれることを望んでいるが、処方権が医師に独占されている状況では、その役割を期待するのは難しいと思う。

 大韓看護協会によると、医師が処方を示さずに現場を離れてしまっている状況においては、処方権のない看護師は患者に鎮痛剤の一つすら出せず、検査の一つすらできず、心停止した患者に緊急の投薬もできない。それだけでなく、彼らの業務を代替している看護師たちは、代理処方や代理記録はもちろん、治療や処置、検査や手術などの違法診療に追い込まれている。業務量も急激に増加しているため、患者の安全にも影響を及ぼす懸念も生じている。

 今回の専攻医の集団辞職をきっかけとして、医師不在時の医療システムの崩壊を防ぐ職域の必要性を感じるようになった。私は、米国のように専門看護師システムを導入したらどうかと思う。米国は、1960年に医師数不足で発生した医療の空白を埋めるために専門看護師制度を導入している。現在、米国で専門看護師になるためには、看護免許の取得後に修士課程や認証を受けた専門看護師教育課程などで2~2.5年の研修期間を経なければならない。こうして輩出された専門看護師は様々な急性、慢性疾患の診断、治療▽検査結果とレントゲン写真の解析▽薬物や治療の処方および管理▽必要時における他の医療専門家への診療依頼などを医師の監督なしに独立しておこなっている。また州ごとに看護法があり、法的に彼らの業務を保護している。このように一定期間の研修を経て知識と経験を蓄積すれば、医療の空白を最小化し、国民の医療へのアクセスも高められるだろう。韓国も麻酔、感染管理、救急、高齢者、重症患者、腫瘍、臨床、児童分野の専門看護師が輩出されているが、処方や治療の権限はないため独立性と自律性が保障されておらず、専門看護師の役割を果たすのが難しいのが現実だ。

 一つの職域にすべての権限が集中するシステムにおいては、彼らの役割を合法的に代替するような別の職域は存在しない。専攻医たちの集団辞職、勤務地離脱の被害は、丸ごと彼らが看るべき患者たちが受けている。一つの職域の一方的な決定と行動に国民の生命権と国民の保健が脅かされることがあってはならない。これを機として、医師に集中している権限を分散させ、国民の生命権がきちんと保障されるようにしなければならない。その出発点は、きちんとした看護法の制定、看護師の診療支援業務の範囲を明確にする法改正、専門看護師に独立性を持たせるための法的根拠作りなどであろう。

//ハンギョレ新聞社

イ・ダヨン|浦項市議会議員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1130233.html韓国語原文入力:2024-02-28 15:33
訳D.K

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