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[寄稿]韓流から読みとる多文化の力

登録:2024-02-03 09:13 修正:2024-02-03 10:23
チョン・ボムソン|歌手、バンド「両班たち」リーダー
ビビンバ/ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 韓流の人気は冷める気配がない。アイドルやドラマなどの文化芸術を経て、メイクアップ方法や料理レシピなど生活スタイルにまで広がっている。2023年にグーグルで最も多く検索された料理レシピは「ビビンバ」だった。大韓民国はもはや経済大国であるだけでなく文化強国だ。韓流の底力はどこから来ているのか。

 デジタル革命が重要な要素だ。世界で最もオンライン化されている国は大韓民国だ。フェイスブックの登場前にサイワールドがあったし、Redditや4chanが米国で問題になる前にDCインサイドと日刊ベストストアが韓国で物議を醸した。デジタル技術の最先端は米国のシリコンバレーだが、デジタル文化の最前線は大韓民国だ。最もオンライン化されているため、真っ先にデジタル革命の恩恵と弊害を味わうことになりうる。家族の基盤であるオフライン共同体が崩壊し、部族化したオンラインコミュニティが勢力を伸ばしている。韓流はデジタル文化の現象だ。韓国の先進的なサイバー流行が全世界に広がっているのだ。

 産業革命のときも、印刷や蒸気機関などの技術は欧州、すなわち大西洋の東岸で作られたが、それを活用して新たな文明を先導したのは米国、すなわち大西洋の西岸だった。デジタル革命も似た様相だ。カリフォルニア、すなわち太平洋の東岸で作られたインターネットやブロックチェーンなどの技術を通じて新たな文化を提示するのは、東アジア、すなわち太平洋の西岸だ。コロナ禍を通じて全世界が確認した。韓国や台湾などの東洋のデジタル・ガバナンスは西洋より先を行っている。K-防疫とK-POPはデジタル先進国の証だ。

 デジタル革命は第4次産業革命ではない。第1次デジタル革命だ。産業革命の基盤はグーテンベルクの印刷術だった。考えを一列に並べるテキストの普及は理性の時代を開いた。デジタル革命の基盤はザッカーバーグのソーシャルメディアだ。テキストではなくイメージとオーディオとビデオで思いを伝える。バーチャル・リアリティ(VR)技術が発達すれば、いずれ五感で交流することになるだろう。文字の発明と文明の開始以来、初めて起きる大転換だ。古代の復活、原始返本だ。デジタルノマド、すなわち遊牧民が主導する。ダンスと歌を媒介とする部族社会が帰ってくる。WiFiはテレパシーであり、Bluetoothは念力だ。魔法が日常だ。デジタル革命は霊性の時代を切り開く。

 韓流の源は風流だ。朝鮮半島固有の信仰である風流道は、儒教、仏教、道教と区別される独自の道だ。新羅の花郎たちは風流道や風月道に従った。花郎道、神仙道、国仙道などとも呼ばれる。9世紀の新羅の崔致遠(チェ・チウォン)は唐に留学して科挙に及第し、文章家として名をはせ、帰国して次のように書いた。「国有玄妙之道 曰風流」。わが国には玄妙な道があり風流という。「包含三教接化群生」。儒教・仏教・仙道の三教を含め多くの生命が接化することを基本精神とする。

 接化とは何か。接は「交接」する時の「接」だ。セクシャルな言葉だ。接触、接続という意味だ。愛だ。「化」は天地が万物を生育する作用だ。そのように作ったり、なるという意味だ。変化、進化だ。つまり、接化という愛に変化するということだ。万物と一つにななり共振化する。すべての宗教を含み、すべての生命を接化する道が風流道だ。こんにちの韓国は、儒・仏・仙に加えキリスト教まで受けいれた。包含四教だ。中国より儒教的であり、インドより仏教的であり、米国よりキリスト教的な国だ。

 K-POPは米国の大衆音楽、すなわち黒人音楽をまねる白人音楽を黄色人がまねた結果だ。シン・ジュンヒョンやチョ・ヨンピルなどのK-POPの父たちは、米8軍のエンターテインメントから始めた。ジャズやブルース、ロックンロールをやりつつも、民謡や演歌、トロット(韓国演歌)ができなければならなかった。米国では、文化の溶鉱炉かサラダボウルかで多文化社会の成熟度を測定する。溶鉱炉はすべてを溶かして画一化するが、サラダボウルは各自の固有性を維持したまま交じりあう。

 韓国の多文化はビビンバだ。サラダボールとビビンバの違いは、よく知られているようにジャン(味噌)だ。コチュジャンやテンジャンを混ぜると、各材料の味を生かしながらも、一次元高い調和が可能になる。ビビンバこそが風流だ。器に盛ったすべてのものを含め接化する。韓流の秘法はビビンバにある。タイ人、日本人、中国人も韓流アイドルになれる。教会でも聖堂でも寺でもいい。全員が交わり一緒に変わる力。壺の中のキムチが発酵していくように、全員が同じくアップグレードされる道。風流は韓流の根であり未来だ。人口絶壁を越えて多文化社会に向かう大韓民国の唯一の希望だ。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ボムソン|歌手、バンド「両班たち」リーダー (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1126924.html韓国語原文入力:2024-02-01 19:07
訳M.S

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