韓国検察が「ニュース打破」の「キム・マンベ氏インタビュー」の黒幕を明らかにするとして、特別捜査チームを構成した。同インタビューの内容が虚偽であるうえに、前回の大統領選挙当時、選挙が差し迫った時点で報道されたことなどを根拠に、情報操作を企画した「黒幕」があるという判断によるものだ。時を同じくして、与党「国民の力」はインタビュー内容を報道した「ニュース打破」と「文化放送(MBC)」、「JTBC」の記者たちを告発しており、ソウル市は「ニュース打破」に対し「発行停止命令を検討する」という立場を示した。韓国政府と政権与党が「ニュース打破のインタビュー」を口実に、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に批判的なメディアにくつわをはめようとする試みだ。
検察が特別捜査チームまで構成すると主張した理由は荒唐無稽だ。メディアが報道した疑惑の本質は、尹錫悦大統領が2011年の最高検察庁中央捜査第2課長時代、大庄洞(テジャンドン)事業の資金を提供した「釜山貯蓄銀行」の「違法融資」事件の捜査をきちんと行わなかったということだ。釜山貯蓄銀行グループのパク・ヨンホ会長の親戚である融資ブローカーのチョ・ウヒョン氏が大庄洞一味に融資を斡旋(あっせん)したが、最高検察庁中央捜査部はチョ氏に対して口座追跡と召還調査を行ったにもかかわらず、処罰しなかった。当時、チョ氏はキム・マンベ氏の紹介で尹大統領が検事時代に上官として「仕えた」パク・ヨンス元特別検察官を弁護士に選んだ。ところが、チョ氏はそれから4年後、水原地検で同じ疑惑で取り調べを受けて起訴され、懲役2年6カ月が確定した。最高検察庁中央捜査部がチョ氏に対し手加減したのではないかという疑惑が持ち上がるのは当然のことだ。
にもかかわらず、検察は「チョ・ウヒョンの陳述などを総合すると、当時中央捜査部の捜査では大庄洞資金に対する調査が行われなかったことが明確に確認された」とし、「ずさんな捜査」という疑惑が「虚偽」だというつじつまの合わない主張を展開している。違法融資の疑いがあるにもかかわらず、大庄洞の資金に対して調査をしなかったということは、むしろ捜査が不十分だったことを裏付けるのではないだろうか。大庄洞関係者のナム・ウク弁護士も検察の取り調べで「2011年の最高検察庁中央捜査部の捜査の時、キム・マンベ氏が当時キム・ホンイル最高検察庁中央捜査部長に『チョ・ウヒョン氏関連事件をよろしくお願いします』と請託していた」と陳述した。キム元中央捜査部長は当時、尹大統領の直属の上官で、最近、国民権益委員長に任命された。このような状況で、釜山貯蓄銀行の捜査の際になぜ大庄洞関係者に対する捜査がまともに行われなかったのか疑問を呈するのは、報道機関としては当たり前のことだ。報道機関の正当な活動を「情報操作」とみなし「黒幕」を明らかにするということは、尹政権に批判的な報道機関を手なずけるためとしか考えられない。検察はもはや言論弾圧の手先になろうとしているのか。