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[寄稿]謝罪なき彼らの「かわいい韓国」

登録:2023-05-09 03:59 修正:2023-05-09 08:49
イ・ジュヒ|梨花女子大学社会学科教授
慰安婦問題を扱ったドキュメンタリー『主戦場』のワンシーン=シネマダル提供//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と日本はきちんとした謝罪をしないという点で似ていると思う。だが、権力者や国が謝罪しなければ過ちは正当化されるのだろうか。このような論理なら、最も強力な覇権国家である米国は絶対に謝罪してはならない。しかし、米国は謝罪がうまい。米議会が1988年に、第2次世界大戦中に日系市民を強制収容した事件に関して制定した市民の自由法がその例だ。監禁された経験を持ち、当時まで生存していた8万人を超える人々に各2万ドルの賠償がなされ、この事件を伝え教育するための基金も設立された。「しかし、いかなる物質的賠償も、失った歳月を補償することはできません。この賠償は資産に関するものではなく、名誉回復のためのものです。私たちは過ちを認めます。法にもとづいて平等な正義を守る国として、道理を尽くすことを約束します」。ロナルド・レーガン大統領はこう語った。謝罪とはこういうものだ。2021年にはジョー・バイデン大統領もこのことを改めて謝罪している。

 国の内部で発生したことに対してはこのように道徳的な米国はしかし、韓国と日本の屈曲した歴史を前にしては徹底して自国の利益ばかりを得てきた。日系米国人のミキ・デザキのドキュメンタリー『主戦場』を見ると、米中央情報局(CIA)が日本の再軍備のためにA級戦犯容疑者で人種差別主義者でもある岸信介を巣鴨刑務所から釈放し、首相選挙のための秘密資金を援助し、彼の所属政党である自由民主党(自民党)を政権党として維持させた話が出てくる。彼の孫は、平和憲法の否定、天皇制の復活、軍事大国化を志向する極右団体「日本会議」国会議員懇談会の特別顧問だった安倍晋三元首相だ。中国の影響力の増大を懸念したオバマ政権の圧力とともに、朴槿恵(パク・クネ)政権の性急な慰安婦合意が登場した。ミキ・デザキは、このような米国の軽率な国益優先的行為が歴史修正主義をはびこらせたと批判する。

 尹錫悦政権の最初の1年が終わるころ、また1人の日本軍「慰安婦」被害者が守ってくれなかった祖国を永遠に去り、今や生存する被害者はわずか9人だ。強制動員の被害者も急速に亡くなりつつある。謝罪しないことは強さではなく弱さの証だ。謝罪すらできないとは、どれだけ自信がなく弱いのだろうか。戦争中の犯罪を一貫して謝罪しない日本は、経済大国であろうとなかろうと、決して道徳的リーダーシップを備えた先進国の仲間入りはできないだろう。

 このような日本から公式の謝罪を引き出せなかった韓国政府も、問題は大きい。韓国はもはや、米国の援助に頼って延命していた貧しくて力のない国ではない。国益を前にしては何でもする米国に対応するためには、韓国の地政学的重要性にふさわしい賢明な外交が必要だ。大多数の国民は日本の謝罪と賠償を望んでいる。今年3月の韓日首脳会談を契機として、潮が満ちるようにあふれ出している時局宣言の数々が、これを証明している。加害国に腰を低くしすぎて国民に羞恥心を呼び起こし、被害者となった国民を保護できない国には、歴史に居場所はない。保守が歪曲された歴史観とそれに依存した政治を支持し続ければ、そのような保守の居場所も徐々に消えていくだろう。この1年の尹錫悦大統領の政治は、彼の叫ぶ空虚な「自由」と「公正」のプリズムによって既得権の外面がはがれ、荒っぽい素の姿があらわになった。弱者に強く強者に弱いという点で実に一貫性のある現政権のへりくだった外交は、対外的には見下され、対内的には審判を受けるだろう。

 『主戦場』の後半には加瀬英明という「日本会議」の幹部でもある極右の人物が登場する。彼は慰安婦問題に関して問われた際に不快感を示しつつ、ひょっとして「ポルノ」のような魅力を感じているのかと問い返す。彼はまた、中国が崩壊すれば韓国は日本に頼るしかなく、その時から韓国は最も親日的な立派な国になるだろうとの期待を示している。「韓国という国は本当にかわいい国です。行儀の悪い子どもがうるさくふるまうように。実にかわいいではありませんか」

//ハンギョレ新聞社

イ・ジュヒ|梨花女子大学社会学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1090955.html韓国語原文入力:2023-05-08 18:49
訳D.K

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