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[寄稿]「クリーンな先進国、日本」…あらわになった韓国既得権勢力の「植民地思考」

登録:2023-04-12 02:52 修正:2023-04-12 08:32
[ハンギョレS]キム・ソンギョンの脱分断の理由-尹錫悦政権の「対日屈辱外交」 
尹大統領「日本は正直な先進国」 
「韓国は劣等」政権勢力の認識を確認 
新冷戦を口実に脱植民地論議を黙殺 
北朝鮮、植民地清算を大義名分に「世襲正当化」
尹錫悦大統領が先月16日、東京の首相官邸で儀仗隊の栄誉礼に先立ち、岸田文雄首相と共に両国の国旗に礼をしている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の打ち出した日本による強制徴用の被害者に対する賠償問題解決策に対する批判が高まっている。歴史学者を筆頭に社会のあちこちから、尹錫悦政権の解決策撤回を要求し屈辱外交を糾弾する時局宣言も相次いでいる。被害者の声と国民感情を十分に考慮しておらず、日本の戦犯企業の違法行為に対する慰謝料請求権を認めた韓国最高裁(大法院)判決を政府が独断で無力化した、というのが批判の理由だ。その上、未来のための「実利外交」だという主張の実効性が不明な中、大多数の市民は相当な屈辱と挫折を感じている。日本との協力的関係の必要性には誰もが同意するが、それを実現するためにあえて「屈服」し「損害」を受け入れる必要があるのかという問題意識だ。

 尹錫悦政権の対日外交に対する市民の感情は、過去の植民者に対する怒りや敵意とは区別される。国力の上昇によってかなりの自尊心を育んだ韓国社会が、日本に対する劣等感をある程度克服したことに伴い、強制徴用被害に対する賠償をはじめとする植民地の歴史の清算は正当な権利であり要求だと感じはじめたからだ。かつては植民地主義に対する無条件的な反発と敵意が韓国社会の対日感情の構造だったとすれば、現在は同等な隣国として公正で正義にもとづく関係の設定を要求するものに変化したことを意味する。もはや「気後れすることのない」韓国には、日本に臆する理由はないということだ。

「クリーンな先進国」の反対側には…

 しかし韓国社会の既得権勢力は、このように変化した基層の感情構造とはかけ離れているようだ。今回の尹錫悦政権の対日外交は、日本は韓国とは比ぶべくもないほどの「先進国」であり、文明や技術をはじめとするあらゆる面で韓国は劣っているという意識が政権勢力の支配的認識であることを確認させた。例えば尹大統領は読売新聞とのインタビューで、幼い頃に日本を訪れた時の記憶を振り返り、日本を「先進国」「正直」「清潔」などと定義付けているが、これは既得権勢力の無意識に深く染みついている植民地的思考体系の様々な面を示すものでもある。全面的に肯定的なイメージで描かれる植民地本国のイメージの反対側には「後進国」「腐敗」「不潔」であふれる被植民地という自意識が存在しているからだ。

 脱植民地主義の理論家フランツ・ファノンは、植民地支配を経験した社会は植民者に対する劣等・依存コンプレックスにとらわれるようになることを力説し、植民地の「黒人」たちの心理には「白人」になろうとする欲望が深く根を下ろしていると批判してもいる。フランスの植民地だったアルジェリアの状況に対するファノンの一喝が、植民地化と戦争後の民主化と経済成長をすべて成し遂げた世界で唯一の国である韓国の支配層の意識にも当てはまるというのは、過度な飛躍だろうか。

 ある人は尹錫悦政権の性急な対日外交について、急変する国際秩序の中で生き残るための「戦略」だと主張する。北朝鮮の核の能力が高度化し、米中戦略競争が加速する中で、韓国の選択肢は結局のところ米国と日本にならざるを得ないというのだ。朝鮮戦争の前後、膨張する共産主義勢力をけん制するために米国が韓日関係の改善を迫ったことと比較されるほど、現在の状況は厳しいという論理だ。冷戦が猛威を振るっていた時期には、韓国における脱植民地化の過程は副次的なものとして扱われていたように、「新冷戦」が到来した現状においては、脱植民地的主体性についての議論は悠長すぎる話か純真な民族主義的発想に過ぎないというのだ。このような論理は結局のところ、分断と冷戦という構造の中で韓国が脱植民地化という問いに直面する機会を奪われたまま現在を生きていることを自認するのと同じだ。

 もっとも、分断線の向こう側の北朝鮮の脱植民地化の過程も歪曲されているのは同じだ。脱植民地国家建設という北朝鮮の目標は、韓国との体制競争で正当性を先取りするための方便へと転落してしまったからだ。国家建設期こそ脱植民地的な社会変革にかなりの力を入れてきた北朝鮮体制が、金日成(キム・イルソン)唯一支配体制へと移行したことで、反植民地主義と反帝国主義を金日成のカリスマ的権力の強化の原理として利用するようになったのだ。この過程で金日成の抗日運動は、「革命」かつ国家アイデンティティーの根源として歴史化されるに至る。すなわち、日本の植民地主義に抵抗した金日成は「民族の領導者」という地位を得ることになり、植民地清算を成し遂げ、帝国主義に抗して戦った朝鮮半島唯一の自主的な国家はまさに北朝鮮だという論理が構築されるのだ。これは、植民地主義に対する抵抗と克服を目標とする脱植民地的アプローチが、特定の政治勢力によってどのように歪められるかを示す例だ。脱植民地化という外皮をかぶった暴圧的な民族主義が、決して植民地主義の克服や主体的アイデンティティーの構築の根本的な答えにはなりえないということを傍証するものでもある。

分断、脱植民地的な問いを無力化

 全く異なる歴史的経路を歩んできた南北が、いずれも依然として植民地の磁場から自由ではないという事実は、結局のところ朝鮮半島の分断と冷戦の転換なしには脱植民地化は不可能であることを意味する。特に分断は、南北の既得権勢力にとって両極端なあり方で脱植民地的な問いを無力化するアリバイとして機能してきたことを記憶しておかねばならない。植民地主義を清算するという大義名分により、金日成-金正日(キム・ジョンイル)-金正恩(キム・ジョンウン)とつながる絶対的権力を正当化する北朝鮮体制と、北朝鮮という「敵」に対応するために植民地としての歴史を「過去」のものとして忘れるべきだとする韓国の既得権勢力は、まるでコインの裏表だ。植民地の影響力を克服することは、単に「日本」問題に限定されるものではなく、冷戦の歴史と国際関係が複雑に絡み合っている重層的構造の問題だということを記憶すべきだ。「主体」を強調する北朝鮮の先験的宣言や、未来のための「実利」的アプローチだとする韓国の単純な論理では、決して解決できない状況の複雑さに、せめてこれからは向き合わなければならない。

 残念ながら5日に尹錫悦大統領は、北朝鮮の核の脅威への対応と東アジアの平和の唯一の解決策として、韓米日の協力を提示した。歴史問題を無視して日本との関係改善に乗り出した理由としては、北朝鮮の核の脅威、中国とロシアの勢力拡大をあげた。分断と脱植民地化がどのように支え合い、再生産されているかを改めて痛感する。脱植民地化はこれほど難しいのだ。脱分断をも同時に実現しなければならない朝鮮半島ではなおさらだ。それだけ主体的な道を志向することは、絶え間ない極限の闘争を意味するのだ。

キム・ソンギョン|北韓大学院大学教授

英国エセックス大学で社会学の博士号を取得。聖公会大学、シンガポール国立大学を経て、現在は北韓大学院大学教授。北朝鮮社会と脱分断文化を研究し、「分かれた心」など多数の学術論文を発表した。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1087056.html韓国語原文入力:2023-04-08 18:00
訳D.K

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