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[特派員コラム]約束を守らない国

登録:2022-08-05 01:55 修正:2022-08-05 08:41
キム・ソヨン|東京特派員
2015年12月28日、ユン・ビョンセ外交部長官(右)と日本の岸田文雄外相(両者とも当時)がソウル世宗路の外交部庁舎で、それぞれが発言する形で、日本政府の責任を認めることなどの慰安婦被害者問題の解決策に関する共同記者会見を行っている=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 与野党の11人の国会議員からなる韓日議員連盟代表団が日本を訪問し、4日に日本側パートナーの日韓議員連盟の議員たちに会った。新任のユン・ドンミン駐日韓国大使は赴任17日目の2日、林芳正外相を表敬訪問した。先月18日から20日にかけてはパク・チン外交部長官が日本を訪問し、岸田文雄首相、林外相らと会談し、韓日関係の改善策について話し合った。完全に行き詰まっていた韓日対話が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、突破口が開かれたことは非常に喜ばしい。

 だが活発な動きがある一方で、実際に議論される内容を見れば、依然としてもどかしい気持ちが先立つ。いつものように歴史問題は韓日関係を重く抑えつけている。韓日関係の最大の争点である強制動員被害者に対する賠償にともなう「現金化」は、韓国が官民協議会を設置して議論しているが、解決策を見出すのは容易ではない。被害者を代弁してきた訴訟支援団も、もはや協議会に参加しないことを決めている。日本軍「慰安婦」被害者問題も突破口を開くのが困難な状況だ。

 何よりも両懸案に対する日本社会の雰囲気は冷ややかだ。一部の良心的な学者や市民団体を除いては、日本政府の主張どおり「韓国が解決すべき問題」だと考える人が多い。様々な理由があろうが、2015年12月28日の韓日慰安婦合意が大きな影響を与えている。

 日本で「慰安婦」の話が出ると、耳にたこができるほどよく聞く言葉がある。韓国は「約束を守らない国」だという批判だ。岸田首相からして「少なくとも国家間の約束を守らなければ、今後どんな議論をしても意味がない」と何度も不快感を示している。岸田首相は慰安婦合意の際、日本の外相として当時のユン・ビョンセ韓国外交部長官とともにソウルで合意文を発表した人物でもある。韓国政府が「慰安婦」合意を履行しなければ首脳会談は難しいだろうという脅しも日本から出ている。

 韓日政府が「慰安婦」問題に合意したことは否定できない事実だ。国と国との合意は軽いものではない。韓国政府が被害者と十分に調整しないまま日本と合意したことで、「合意案」はあるものの問題は解決されていないという困難な状況が作られた。合意案に対する評価は置いておくとしても、日本政府は韓国政府が何を履行していないのかについて明確にしていない。その答えについては、概ね和解・癒やし財団問題があげられる。日本政府が10億円を拠出し、2016年7月に発足した同財団は、2018年11月に解散した。「平和の少女像」撤去に向けた努力と国連などの国際社会で相互非難を控えることも、韓国が履行すべき約束だと主張する人々もいる。

 合意案をよく見ると、日本が約束したこのような内容も目につく。「日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする」

 今年、すべての日本の高校生が学ぶ歴史の教科書12種のうち「日本軍慰安婦」動員の強制性を少しでも記述した出版社はたった1社となった。来年からは、日本の高校2年生以上の生徒が使用する教科書から、加害者を明確にした「日本軍慰安婦」という表現は消える。日本政府の決定に沿ったものだ。「慰安婦」の強制性を認め、歴史教育を通じて忘れないと約束した1993年の「河野談話」を日本政府が守っていない端的な例だ。「慰安婦」合意で約束した被害者の「名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やし」とも程遠い措置だ。これは、日本政府が韓国に対して「約束を守らない国」と一方的に非難する姿勢に共感できない理由でもある。

//ハンギョレ新聞社

キム・ソヨン|東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1053562.html韓国語原文入力:2022-08-04 19:24
訳D.K

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