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[社説]韓国次期大統領となった尹錫悦氏の最優先課題は「国民統合」

登録:2022-03-10 06:38 修正:2022-03-10 07:25
次期大統領選挙に当選した尹錫悦氏が今月10日未明、ソウル汝矣島の国会図書館に設けられた野党「国民の力」の開票状況室を訪れ、党指導部とともに歓声を上げている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 国民の力の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が第20代大統領に当選した。尹氏は共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補と熾烈な接戦を繰り広げた末、10日未明に勝利を手に入れた。開票の結果、尹氏の得票率は48.56%で、李氏(47.83%)を0.73ポイントリードした。得票数では約24万7千票の差だ。1987年に大統領直接選挙が復活して以来、最も少ない票差だ。

尹氏「野党と協治し、国民に仕える」

 尹錫悦氏の勝利で、5年間の民主党政権が幕を閉じ、保守政権の時代が開かれることになった。尹氏は当選が確定した後、国会図書館に設けられた開票状況室に出席し、「選挙運動をしながら多くのことを学んだ。国のリーダーになるために必要なことが何なのか、国民の声にどのように耳を傾けるべきか、このような多くのことを学んだ」とし、「憲法の精神を尊重し、議会を尊重して野党と協力しながら国民に仕えるようにする」と述べた。また「李在明候補や(正義党の)沈相ジョン(シム・サンジョン)候補のお二人にも感謝し、韓国政治の発展に私たちが共に大きな貢献をしたという点でその価値を高く評価したい」と述べた。

 尹氏の勝利は、高い政権交代世論によるものだ。保守層の強い政権交代の意志が、わずか1年前に検察総長を辞任し、政界に飛び込んだ新人政治家を次期大統領の座に押し上げた。文在寅(ムン・ジェイン)政権の不動産政策の失敗と高位公職者たちが見せたダブルスタンダードで国民の間に失望と怒りが大きくなったのも、尹氏の勝利の背景になった。李氏は「政治交代」で対抗したが、政権交代論の波を乗り切ることはできなかった。

国民の半数が反対した意味を胸に深く刻むべき

 しかし、尹錫悦氏は、高い政権交代世論にもかかわらず、李在明氏に辛勝し、国民の党の安哲秀(アン・チョルス)候補と一本化したにもかかわらず、過半数の得票に失敗したことは、深く考えなければならない点だ。国民は「政権交代の象徴」として尹氏を次期大統領に選んだが、果たして国政を率いる準備ができているのかについては、高い信頼を示したとは言えないからだ。実際、尹氏は選挙運動期間中、未来に対するビジョンと政策公約で勝負するよりも、文在寅政権に対する強硬保守層の憎悪に依存する戦略を取った。特に、20~30世代を敵味方に分けて得票を狙う「分裂の政治」は最後の瞬間、女性たちの集団反発として跳ね返ってきたことを重く受け止めなければならない。

 尹氏は、事実上2者対決で行われた選挙で、自分を支持した国民よりも多くの国民がなぜ他の候補に票を投じたのかを振り返らなければならない。勝者がすべてを手に入れる大統領制の下で、陣営間の対立は選挙のたびに常にあったが、今回の大統領選では特にその溝が深まった。各候補の資質と能力に対する評価よりも、ただ「何が何でも相手候補が大統領になることは阻止しなければならない」という憎悪と対決心理が選挙戦を支配したことは否定できない事実だ。このような極端な分裂と対立が大統領選挙後も続くなら、国家的不幸になるだろう。これを解消し、統合の道に進む責任は、選挙で勝利した尹氏に大きくかかってくるのは避けられない。尹氏は選挙過程で分裂した国民の心をどう埋めるかを深く悩み、約束通り「国民統合政府」を名実共に発足できるよう努力してほしい。

共に民主党の李在明候補が今月10日未明に記者会見を開き、尹錫悦氏にお祝いのメッセージを送り、「分裂と葛藤を乗り越え、統合と和合の時代を開いてほしい」と要請した=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

「政治報復はしない」、行動で示すべき

 多くの国民は尹錫悦氏が政権を握れば「検察共和国」になると懸念している。尹氏はこれを明確に解消しなければならない。さらに、政治報復は決してしないと宣言し、それを実行することで、文在寅大統領と李在明候補を支持する国民の半数の不安を解消しなければならない。これは、尹氏が統合と協治のリーダーシップを示す第一歩になるだろう。尹氏は選挙運動期間中、ハン・ドンフン検事長などの側近を重用し、文在寅政権の捜査に乗り出すという意思を明らかにした。任期序盤の「与小野大(政権与党の国会議席数が野党より少ない状況)」の状況で、もし尹氏が企画捜査を通じて政局の主導権を握ろうとすれば、今よりもさらなる分裂と対立をもたらすことは火を見るよりも明らかだ。任期末にも高い支持率を記録している前職大統領を政治的に狙った瞬間、世論は真っ二つになり、最も重要な大統領任期序盤を極限の対立で無駄にすることになるだろう。「国民が押し上げた尹錫悦」という選挙スローガンのように、最初から最後まで国民を最優先し、統合の道を歩む大統領になってほしい。

与小野大の状況で「協治」は欠かせず

 民主党が国会多数議席を占める与小野大の政治構図を考慮すれば、尹氏にとって統合と協治は選択ではなく必須だ。国政を円滑かつ安定的に導くためには他に方法がない。尹氏も大統領選挙終盤、安候補との一本化を果たし、統合政府を構成すると約束している。国民の党との小さな統合を越え、すべての政派をまとめる大統合の原則を明らかにし、実行してほしい。政治的スタンスを超え、能力と道徳性を備えた人材を幅広く起用して政府を構成することも代案になるだろう。さらに、多党制連合政治の可能性を開く選挙制改革や大統領の権限を分散するための改憲など、統合政治の制度的枠組みづくりにも努力を惜しんではならない。

 民主党も批判と牽制は忠実に行い、国会過半数の議席を「反対のための反対」の手段に使うことがあってはならない。李在明氏は汝矣島(ヨイド)の党本部で記者会見を開き「尹錫悦候補にお祝い申し上げる」とし、「次期大統領が分裂と対立を乗り越え、統合と和合の時代を切り開くことを心からお願いしたい」と述べた。

 与野党いずれも国民を恐れながら、互いに協力し合う「協治」の姿を見せなければならない。

 尹錫悦氏は「安全に問題がなければ、業務に少し邪魔になっても執務室に座って国民がデモし、抗議する声を直接聞きたい」として、大統領府を出て「光化門執務室」時代を開くと公約した。週1回、記者団と会う席を設けるとも語った。国民との「疎通の約束」も必ず守ってほしい。

第20代大統領選挙日の今月9日夜、大田市西区槐亭洞のKT人材開発院に設けられた開票所で、開票が行われている/聯合ニュース

新型コロナの克服と国民生活の回復に全力を尽くすべき

 尹錫悦氏が大統領としてまず解決しなければならない国政課題は、新型コロナ危機の克服と国民生活の回復になるだろう。これまでは野党候補として政府を批判するだけでも問題がなかったが、これからは国政運営の最高責任者として直接国民の暮らしに目を配らなければならない。特に、自営業者の損失補償公約は具体的に見直し、速やかに実施しなければならない。住宅価格の安定や雇用問題も、対症療法を超え、根本的な解決策を打ち出さなければならないだろう。

 急速に悪化している経済状況に対する対策も早急に打ち立てなければならない。オミクロン株の拡大やグローバルサプライチェーンの毀損、物価高現象などで、ただでさえ困難に直面している韓国経済は、ロシアのウクライナ侵攻まで加わり、類を見ない不確実性に直面している。国際原油価格が1バレル当たり130ドルを超え、「第3次オイルショック」への懸念が高まっている。尹錫悦氏は選挙運動期間中、経済関連公約を多く出したが、今のような経済環境の中で、その公約を直ちに実施することは容易ではないだろう。近く発足する引継ぎ委員会で公約の軽重と優先順位を改めて決め、効率的に対処する必要がある。

 気候危機に代表される今の時代の転換的課題も疎かにしてはならない。国家の安全と国民の生命がかかった外交と安全保障の分野では、図式的な理念的アプローチから離れ、国益を最優先に置いた実用的アプローチを模索しなければならない。脱原発の白紙化、女性家族部の廃止など、国民の間で意見が対立する公約はより慎重に取り組んでほしい。

 尹錫悦氏は5月9日から5年間「大韓民国号」を率いることになる。大統領制国家における大統領の成否は、国家と国民の運命を左右する核心的な要因だ。尹氏が、自分を支持した国民と支持しなかった国民の願いを共に心に刻み、大韓民国号を順調な航海に導くことを願う。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1034241.html韓国語原文入力:2022-03-10 05:04
訳H.J

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