今月8日、世界の新型コロナウイルスによる累計感染者数は4億人を突破し、死者数も577万人を超えた。感染力の強いオミクロン株の拡散により、今年1月に3億人に達してからわずか1カ月という速さだ。今の関心事は、コロナが100年あまり前に大流行したスペイン風邪を超えるかどうかだ。
1918年2月から1920年4月にかけて世界を襲ったスペイン風邪は約5億人が感染し、1740万人が死亡したと推定される(2018年の分析結果)。当時の世界人口は約18億人なので、1%が命を失ったことになる。
スペイン風邪が流行した期間と似た長さのこの2年あまりで、コロナに感染した人の数は公式に確認された感染者の2倍にはなるはずなので、スペイン風邪の感染者数をはるかに上回っているのは確実だ。もちろん、今日の世界人口は100年前の4倍を超える78億人だから、感染率ははるかに低い。死者数はスペイン風邪の3分の1程度だ。幸い死者数記録は破られていない。実際の感染者数が確認された感染者数の2倍にあたる8億人だとすると、致命率は0.7%となり、3.5%のスペイン風邪の5分の1だ。しかし、ウィキペディアの「新型コロナウイルス感染症パンデミック」の項目を見ると、13日現在の公式の死者数は581万人となっているが、その下の推定死者数は1340万~2270万人で、2.3~3.9倍に達する。これが事実なら、死者数でもスペイン風邪を超えた可能性があるということになる。
11日付の学術誌「サイエンス」には、インドのコロナによる実際の死者数を推定した論文が掲載されている。2020年初めにコロナが世界に広がり、欧州と北米でおびただしい死者が出た際にも、インドには大きな被害はなかった。ところが、昨年4月から6月にかけてデルタ株が大流行し、インドは文字通り「生き地獄」となった。火葬の煙が立ち込めるテレビ画面は多くの人が覚えているだろう。それでも現在のインドの公式の累計死者数は50万人ほどで、米国(約91万人)、ブラジル(約63万人)に次いで世界3位だ。
インド、カナダ、米国の研究者たちは、シボターという独立調査機関が収集したデータなどを分析し、インドのコロナによる実際の死者数を推定した。すると、2021年までの死者数は310万~340万人と推定され、公式の死者数48万人の6~7倍に達するとの結果が出た。これが、先に述べた世界のコロナによる実際の死者数を公式の死者数の2.3~3.9倍と推定する根拠だ。
旧正月連休の前後にオミクロン株が広がったことで、感染者が急増している。幸い、今はまだ医療インフラで重症患者を支えている。コロナ禍が終わるまで、酸素呼吸器がないために死亡するというような、あきれた事件が起こらないことを願う。
カン・ソッキ|科学コラムニスト (お問い合わせ japan@hani.co.kr )