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[コラム]「陰の権力者」野党ユン候補の妻…朴槿恵の陰の側近よりも危険かもしれない

登録:2022-01-29 07:38 修正:2022-01-29 14:54
「国民の力」のユン・ソクヨル大統領候補の妻のキム・ゴンヒ氏が昨年12月26日、ソウル汝矣島の党事務所で自らの「虚偽履歴」の疑惑と関連して立場表明文を発表している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 「国民の力」のユン・ソクヨル大統領候補は昨年7月26日、「文化日報」とのインタビューで「私の妻は(私に)政治をするなら家庭裁判所に行って離婚届けに判を押してからにしてくれと言った」と話した。ユン候補はそれ以後も何度か「妻が政治参加をひどく嫌っている」という話をした。

 ところがその2週間前の7月12日、ユン候補の妻のキム・ゴンヒ氏は「ソウルの声」のL記者との通話で「私はL記者がいつかは私の味方になるだろうと信じていて、本当にうちの選対委に連れてきたい。私たちが良い成果を上げて(…)社会正義の具現のために一緒に努力したらいいと、本当にそう思う」と言った。

 「うちの選対委」に迎え入れたい、これが政治参加をひどく嫌っているという人の言葉だろうか。もちろん夫の大統領選出馬が決定された後、「やることにした以上、頑張って応援しよう」と心を切り替えたということもあり得る。

 それならばこれはどうなのか。ユン候補はその5カ月余り後の12月22日、「東亜日報」とインタビューをした。「夫人はいつ登板する計画なのか」という質問に「(登板の)計画は初めからなかった。 私の妻は政治をするのを極度に嫌っていた」と答えた。「主な意志決定や政治的決定について妻と相談するか」という質問には「あまりしない。 私がそういった話をしないので(妻が)さびしく思うこともある」という答えだった。依然としてキム氏は政治を嫌っており、相談もあまりしないということだ。

 ところがその間に、キム氏はL記者にこんなことを言っている。「私にそうしたこと(選挙運動)のコンセプトをショートメッセージで送ってよ。私がそれを整理して選対委に適用したいから」、「夫にも、他のスケジュールなんかやめて、選対委がめちゃくちゃだから少し諮問なんかもしてみようって言うつもりだ。来週からそうするから」(7月21日)。 政治懸案と関連しては「キム・ジョンインが(総括選対委員長を)受諾したね」という問いに対し「元々あの人はずっと来たがっていた。ほらね、私の言うこと、みんな合ってるじゃないか」(12月3日)と情報力を誇示している。また「ホン・ジュンピョを攻撃する方がスーパーチャット(ユーチューブの投げ銭)をもっとたくさん得られるよ」(9月15日)と言って、党内予備選での競争者の粗捜しをしてほしいとけしかけた。

 ここまで来れば、混乱するしかない。 ユン候補は本当に妻の政治的活動を知らずあんなことを言ったのか、それとも知りながら嘘をついたのか。

 知らなかったとすれば、また二つのケースが考えられる。一つは、キム氏がL記者に打ち明けたとおり事実上背後で選対委を動かしているにもかかわらず、ユン候補は知らなかった。もう一つは、キム氏がL記者に自分の地位を大きく誇張して語ったのだ。 夫が「バカ」であるか、夫人が「虚言癖」であるかだ。そんなわけがあろうか。個人的には、知っていながら嘘をついた可能性の方により重きを置くのはこのような理由からだ。

 ユン候補が夫人の役割について「東問西答(ピント外れの答)」で切り抜けたケースは他にもある。昨年10月の「犬謝罪」論議(ユン候補が全斗煥擁護発言を行ない謝罪した後、犬にリンゴ(韓国語の発音が「謝罪」と同じ)を与える写真をSNSに掲載し、謝罪そのものを戯画化した)の際に、キム氏がSNSチームの水面下の指揮者ではないのかという疑惑が持ち上がった。ユン候補は「選挙は『ファミリービジネス』」だとしながらも「私の妻は他の候補の家族のようにそんなに積極的でないので、誤解する必要がない」と避けて通った。

 問題は、ユン候補が「私の妻は別に役割がない」とバリアを張った裏で、キム氏が実際に影響力を行使する場合に生じる。 このような人物を指して「陰の権力者」と呼ぶが、キム氏は陰の権力者の代名詞のチェ・スンシル氏(朴槿恵前大統領の陰の側近)とはまた別の特徴がある。チェ氏はそもそも、大統領の傍にいる資格のない人だった。その彼女が秘書官を操って大統領府に無断で出入りしていたのが発覚し、国政壟断が明るみに出た。 チェ氏の存在自体が国政壟断の証拠だったわけだ。 しかしキム氏は、もしユン候補が大統領になれば、常に大統領府に一緒にいる資格を付与される存在だ。その時もユン候補はずっと今のように「妻は政治をひどく嫌っている」と主張するだろうし、国民はキム氏が実際にどんな役割をするのか、見当をつけることすらできない状況に直面することになろう。 配偶者の対外活動を補佐する第2付属室を廃止するからと言って、「陰の政治」の可能性を封じ込めることはできない。存在が公認されている「陰の権力者」である配偶者が、ただの陰の権力者よりも危険だと考える理由だ。

 さらに、キム氏はL記者に特定の言論社を名指しして、こんな話もした。「私が政権をとれば、あそこは、ハハハ、無事ではすまない」「あいつらは私が大統領府に入ったら、全員監獄にぶち込んでやる」。笑いながら話しているのが、一層背筋を寒くさせる。 今が、またしても見え隠れしている民主共和国の危機を遮断する最後の機会かもしれない。キム氏とユン候補の言葉の間隙をじっくり考えて、行間の真実は何なのか、何度でも繰り返し問い質さねばならない。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ウォンジェ | 論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1028135.html韓国語原文入力:

訳A.K

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