「文在寅政権の最大の失策は、国民の力を生き返らせ、ユン・ソクヨルを野党第一党候補にしたことだ」。正義党の大統領候補シム・サンジョン氏の最近の発言だ。多くのことを考えさせられる。現政権の検察総長が野党第一党の大統領選候補となって、政権の命綱を絶つと意気込んでいる事態をどう見るべきなのだろうか。どこで間違ってしまったのだろうか。
共に民主党のイ・ジェミョン候補と国民の力のユン・ソクヨル候補の対戦表が確定したことで、大統領選の時計は加速しつつある。2大疑惑事件や政策の争点など、あらゆる問題が大統領選の舞台へと流れ込んでいくだろう。しかし、その渦に簡単に引きずり込まれるべきではない。この舞台の根はどこにあるのか、じっくり考えてみなければならない。
民主党の人々は、このような組み合わせとなった大統領選構図の原因を探ることが気に入らないかもしれない。ユン・ソクヨル候補の古い野心と権力志向のせいだと言うだろう。しかし、志向のみでこのようにはならない。政権中枢の誤った判断が事を大きくしてしまったのだ。キム・ドンヨン前経済副首相、チェ・ジェヒョン前監査院長の裏切りも、彼らの「政治欲」のせいばかりにすることはできない。
誰が誤ったのだろう。言うまでもなく文在寅(ムン・ジェイン)大統領の責任は大きい。人事が事実上破綻している。「あの人が本当にそんなことをするとは思わなかった」と他人のせいにすべきではない。
いわゆる「チョ・グク対ユン・ソクヨル事態」の渦中において、両者はいずれも正しくなかった。586世代(80年代の民主化運動に関わった60年代生まれの人々)の道徳的弛緩の断面をあらわにしたという点で、チョ元長官には明らかに責任がある。ユン前総長も「積弊検察」の素顔をあらわにしたという点で、それに劣らない。チョ元長官一家事件に対する裁判所の判決、ユン前総長の懲戒を適法とした行政裁判所の判決はこれを裏付けている。
イ・ジェミョン候補の強みは、これらすべてから相対的に自由だということだ。だから候補になり、自治体の首長として積みあげてきた業績を土台として勝算もあるように見えた。しかし、せき止め難い政権交代の流れと大庄洞(テジャンドン)疑惑が重なり、形勢は拮抗しているか、劣勢に見える。
誰もが知っている大統領選構図の背景をいちいち説明したのは、民主党の人々がこれを無視したまま「突撃」さえすればいいという風だからだ。総選挙の圧勝で作られた有利な環境が、人事の失敗、他人に厳しく自分に甘い態度、傲慢と独善によって、今のおかしな大統領選構図となった。不動産の失政がそこに油を注いだ。
遠い過去を振り返らずとも、4月のソウル市長補欠選挙がそんな風だった。無難に対処して無難に敗れた。パク・ウォンスン前市長のセクハラ疑惑は置き去りにして、前にばかり進んだ。心からの懺悔というよりは中途半端な反省だった。当時、民主党がソウル市長候補を出さないというのは現実的に難しかったのかもしれない。しかし今になって考えると、決断を下した方が賢明だった。
いくら良い政策と能力を持っていても、基盤が退行的であればどうしようもない。他人に厳しく自分に甘い態度と失政に対する身を切る反省と懺悔、一大刷新がなければ、進歩の政権継続は空念仏となりうる。刷新しなければ、背を向けた20~30代と向き合うことすら難しい。
いかなるかたちであれ、この間の問題に対して謝罪し反省する契機を作るべきだ。このように言うと、これまでにも非常に多く謝罪し、反省してきたと言われる。日本が依然として許されていないのは、被害者、すなわち相手が受け入れるまで反省、謝罪していないからだ。いくら数多くの謝罪をしても、相手に受け入れられなければ、きちんとした謝罪と反省ではない。
一つ目に、文大統領の謙虚な姿勢が必要だ。先の国会施政演説のように、うまくいったことはうまくいった、できなかったことはできなかったと言えばよいのだ。人事乱脈と検察改革の混乱に対して国民に頭を下げるべきだ。政権の中枢にいた人々も謙虚にならなければならない。国民が理解するまで謝罪し、反省する姿勢を示すべきだ。
二つ目に、イ・ジェミョン候補は国民が民主党の人々に抱いている疑念と不満を解消すべきだ。可能な範囲で予備内閣や政権就任時の参謀グループを可視化することで、人的刷新の端緒を示すべきだ。政権が延長されれば以前の人々が再び返り咲いたり、利権勢力がのさばったりするだろうという国民の疑念をぬぐうべきだ。
三つ目に、政策の転換と継承を明確にすべきだ。失敗に対する省察なくして新たな進展を遂げるのは難しい。継承すべきものは継承するにしても、不動産政策、両極化の解消などについては政策の方向性の明確な再設定が必要だ。
四つ目に、シム・サンジョン候補をはじめとする第3勢力との連帯について、明確な意志を示すべきだ。これは単なる一本化や連立の次元にとどまらない。これまでの民主党政権の過ちを反省し、一新する契機としなければならない。選挙工学のためではなく、真の反省のための連帯としなければならない。
ぺク・キチョル|編集人 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )