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[特派員コラム]台湾侵攻間近のハプニングと「戦略的曖昧さ」の賞味期限

登録:2021-11-05 05:41 修正:2021-11-05 08:10
チョン・インファン|北京特派員

 中国山東省の省都の済南市の住民は、最近当局から「特別なプレゼント」を受けとった。申請者を対象とする抽選を通じて1万世帯に渡されたのは、「災害・戦時準備用救急バッグ」だ。インターネットメディアの澎湃新聞は2日、ネットユーザーらが投稿した「開封記」の内容を取りあげ、「人民解放軍の軍服柄の防水布で製作されたバッグの中には、救急用具箱、消火用毛布、非常脱出用ロープ、多機能懐中電灯、ろうそく、防水マッチ、滑り止め用の手袋、救助要請用の笛などが入っていた」と報じた。

 済南市の救急バッグが関心を引いた理由は他にある。1日に中国商務部が冬季に備えた生活必需品の需給に関する通知文を出し、各家庭に「突発的な状況に備え、一定量の生活必需品を確保せよ」と促したことと重なっていたからだ。これに「予備役召集対応令」という怪しい噂が加わり、「台湾侵攻間近説」という憶測が生じた。台湾海峡をめぐる緊張した局面をながめる中国内部の雰囲気を端的に示したハプニングだ。

 米中対立が激化するなか、昨年9月頃から中国の軍用機が南シナ海につながる台湾西南部の防空識別圏(ADIZ)に常時出入りしている。中国の国慶節である10月1日から4日間、戦闘機・爆撃機・早期警戒機など計149機が投入され、これまでで最大規模の光景が演出されもした。

 中国の狙いは、次のように集約される。中国軍の実戦対応能力の向上と頻繁な対応出撃による台湾軍の疲労累積という軍事的効果だ。台湾内部の緊張と不安をあおり、蔡英文政権に圧力を加えようとする政治的な意図も背景にある。米国に対する“試験”という外交的な側面も見逃せない。台湾海峡を行き来する中国の軍用機は「それでお前たちはどうするつもりなのか」と問い詰めているのかもしれない。

 「中国は実際には台湾を侵攻しないと思う。本当にしようと考えていたのであれば、すでに行っている。怖がらせようとしていることなので、まったく心配していない」。中国軍の波状攻勢が続いた先月8日、サウスチャイナ・モーニングポストは、ある台湾の大学生の言葉を取りあげ、このように報じた。“北風”が通り過ぎれば、“薬効”は落ちる。私たちもよく経験した。インテリジェンシア・タイペイ(台北智会)が9月に公開した世論調査の結果によると、台湾の回答者の60%が「10年以内に戦争が起きる可能性はないと思う」と答えた。戦争の可能性を懸念するという回答は、わずか10%にとどまった。

 米国のジョー・バイデン大統領は最近、「台湾防衛の意志」を繰り返し強調した。ホワイトハウス側は「(政策が)変わったものはない」と収拾に出たが、情勢が揺れ動いているという点だけは明らかにみえる。1979年の米中国交正常化以来、米国は台湾について、いわゆる「戦略的曖昧さ」を維持してきた。中国の武力統一の試みも台湾の独立の試しも座視しないという「二重抑止」が柱だ。

 台湾民意基金会が2日に発表した世論調査の結果では、「中国が侵攻すれば米国が防衛すると思うか」という質問に、回答者の65%が「はい」と答えた。「いいえ」という回答は17.1%にとどまった。これに先立ち蔡英文総統も先月27日、米国のCNNの同じ質問に「台米関係と米国内の世論と米議会の支持をみれば、そのようになると確信している」と答えた。

 実際、米国内の世論は明確に変わっている。シカゴ国際問題協議会が8月に公開した世論調査の結果では、「中国侵攻の場合、台湾防衛のための米軍投入を支持する」という回答が過去最高値の52%を記録した。同団体が1982年に実施した同じ調査では、「支持する」という意見はわずか19%にすぎない。「戦略的曖昧さ」の賞味期限は、いつ切れるのだろうか。情勢の「曖昧さ」がますます薄れてきている。

//ハンギョレ新聞社

チョン・インファン|北京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1018014.html韓国語原文入力:2021-11-05 02:32
訳M.S

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