台湾の蔡英文総統が、台湾軍の訓練のために小規模の米軍兵力が駐留しているという事実を初めて認めた。また、中国の侵攻など台湾の有事の際、米軍が防御に出ると信じていると明らかにした。1979年に中国と国交を樹立して以来、台湾防衛に関して「戦略的曖昧さ」を維持してきた米国の政策が岐路に立たされている。
蔡総統は27日(現地時間)、米国のCNNとのインタビューで「2016年に就任して以来、中国の脅威が日々高まっている」とし、「台湾の防御能力向上のために米国と広範囲な領域で協力している」と述べた。台湾に駐留している米軍の規模に関する質問には「人々が思うほど多くはない」と答えた。台湾当局が自国内に米軍が駐留している事実を認めたのは、1979年の米中国交正常化以来初めてのことだ。
米国は1979年の米中国交正常化とともに、台湾との相互防衛条約を延長しない形で自動廃棄し、駐留米軍も撤退させた。公に米国の外交公館としての役割を果たす「米国在台湾協会(ATI)」の警備のため、少数の海兵兵力が駐留しているだけだ。台湾にその他の兵力があるという事実は、7日の「米国の特殊戦司令部要員と支援兵力など20人余りが台湾地上軍兵力を訓練しており、海兵隊所属の一部兵力も台湾海軍に上陸作戦準備用の訓練を提供している」というウォールストリート・ジャーナルの報道によって明らかになった。蔡総統はさらに「中国が侵攻した場合、米国が台湾防御に出ると思うか」という質問にも、迷わず「そうだ」と答えた。蔡総統は「過去長年にわたり台湾と米国が結んできた関係をみても、米国内の世論と米議会の支持から判断しても、そうなると信じている」と強調した。
台湾と断交した後、米議会で成立した「台湾関係法」には 「台湾が自己防衛能力を維持できるよう支援する」という内容が含まれている。台湾への兵器輸出の道を開いたということだ。しかし有事の際の武装介入については具体的に言及せず、「平和的でない方法で台湾の未来を決めようとするいかなる試みについても、米国は深く懸念する」と明示しただけだ。いわゆる「戦略的曖昧性さ」である。
台湾を自国から「切り離すことのできない」一部だと主張する中国に対しても同じだった。米国は国交正常化交渉で「台湾が中国の一部という主張は理解する」としながらも「台湾の主権がどこに帰属するかについての特定の立場に同意したことはない」という立場を守ってきた。こうした曖昧さはいわゆる「二重の抑止」の原則によるものだ。「台湾の地位」について明確な結論を出さないことで、台湾に向けた中国の軍事行動と、中国を刺激する台湾独立の動きをいずれも遮断しようとしたわけだ。
しかし、米中葛藤と台湾に向けた中国の軍事的脅威が高まる中、米国の政策にも微妙な変化の兆しが現れている。ジョー・バイデン大統領は21日、CNN主催の対談で「中国が台湾に侵攻した場合、米国が防御するのか」という質問に「そうだ、そうする義務がある」と答えた。その後、ホワイトハウスが「台湾関連の政策に変化はない」として火消しに乗り出したが、米国が政策基調を変えようとしているという見通しも示されている。
蔡総統の発言が波紋を呼んだことを受け、邱国正台湾国防部長は同日、立法会に出席し、「米軍は台湾に『駐留』しているのではなく、軍事訓練交流-支援に参加しているだけだ」と釈明した。
一方、中国側では外交部と国防部が同時に強く反発している。王文彬外交部報道官は同日午後の定例会見で、「台湾が中国の領土という事実は変わらない。台湾独立は死の道であり、これを支持する行為も同じだ」と主張した。譚克非国防部報道官も「米国が台湾を利用して中国を抑制するという幻想を捨てず、『サラミ戦術』で米国と台湾の軍事関係を強化しようとするなら、中国は決然と反撃する」とし、「人民解放軍は必要な全ての措置を取り、外部勢力の干渉といわゆる『台湾独立勢力』の分裂的行動を防ぎ、国家主権と領土の完全性を断固として守る」と強調した。