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今年1月、台湾軍の兵士が東部花蓮で年次軍事演習を行っている様子/AFP・聯合ニュース

　台湾に向けた軍事的圧迫の水位を高めている中国が、台湾の防空識別圏（ADIZ）を侵犯し、異例にも上陸作戦の支援能力を備えた攻撃用ヘリコプターまで動員した。米国では、中国が台湾外郭の島しょ地域を先制的に占領した場合、全面戦争の危険を甘受しない限りこれを防ぐ対応策はほとんどないという指摘が出ている。

　27日、台湾国防部の発表内容を総合すると、中国軍は前日、戦闘機「殲（J）16」2機と電子戦機「Y-8EW」1機を含む計7機を動員し、台湾西南部のADIZを侵犯した。中国軍は1日の空軍機38機を皮切りに、今月だけで16日間、計180機にのぼる各種の軍用機を動員し、台湾のADIZを行き来している。特に前日は、これまで登場していなかったY-8C3輸送機とMi-17輸送用ヘリコプター、WZ-10攻撃用ヘリコプターが追加で投入された。これらは中国軍の上陸および空中強襲作戦の時に動員される戦力だ。中国軍が武力示威を超えて、台湾侵攻に備えた実戦訓練に乗り出したのではないかという観測が出ているのもこのためだ。

　これに関し、米国の外交・安保専門シンクタンクの「新アメリカ安全保障センター」（CNAS）は、26日に発行した「The Poison Frog Strategy（毒ガエル戦略）」と題する11ページの報告書で「中国が台湾領の東沙群島を先制的に軍事占領した状況を想定してウォーゲーム（模擬戦争）を実施したところ、米国が全面戦争の脅威を甘受せずには、中国が島をあきらめて退き現状を復元させる代案がほとんどないことが確認された」と述べた。中国軍は、クリス・ドッド元上院議員を団長とする米国代表団が台湾を訪問した4月15日から6日間、東沙諸島近くの南シナ海の南澎列島付近の海上で実弾発射訓練を実施している。

　同センターは、2025年に中国人民解放軍海兵科の特殊戦司令部兵力が、訓練に偽装し事前の警告なく香港と台湾の間にある南シナ海の東沙諸島に上陸する状況をシミュレーションした。速やかに作戦を終えた中国軍は、現地駐留台湾軍500人を捕虜にして本土に帰還し、人民武装警察官200人と「民間人」300人を残して東沙諸島を軍事基地化し始める。同時に、南シナ海一帯での軍事演習を強化し、台湾に向けて経済的圧迫の水位を高めるなどの後続措置に入る。また、東沙諸島占領作戦は「一つの中国」の原則による「内政」であり、したがって外部の介入は「内政干渉」であると主張する。2014年のロシアの突然のクリミア半島併合を連想させる。

　報告書は「事態発生初期に台湾が最も懸念する状況は、事態が収拾のつかない状況へと広がり、全面戦争に突き進むこと」だとし「したがって即時の軍事的対応というよりは外交的努力に集中するだろうが、一部の国が『非難声明』を出すこと以外はこれといった実効性がない」と指摘した。事態の悪化を避けようとするのは米国も同じで、奪還作戦ではなく台湾に米軍を配置することで対応するだろうとの見通しを同センターは示した。報告書は「状況が長引き、米国と台湾は軍事的調整に乗り出す一方、中国の『好戦性』を浮き彫りにさせる方向で外交的努力を傾ける」とし、「中国は『米軍撤退』を交渉の前提条件に掲げ、米軍駐屯を北東アジア情勢悪化の『元凶』とする」と指摘した。

　報告書は結論として「全面戦争に飛び火する危険性のある軍事的対応を除けば、中国の先制的攻勢への対応は難しく、経済・貿易制裁が効果を表すまでには長い時間かかる」とし「東沙諸島占領で得られる利益より、これによって払うことになる政治・軍事・経済的苦痛の方が大きいということを事前に中国に認識させることによって、『抑止力』を備えなければならない」と強調した。報告書の題の「毒ガエル戦略」とは、保護色を帯びて隠れる他の個体とは違い、派手な模様で敵に自分の存在を知らせる毒ガエルのような戦略を取らなければならないということだ。