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[コラム]韓国はどのような国になるべきなのか

登録:2021-10-28 02:44 修正:2021-10-30 07:10
防弾少年団(BTS)がビルボードチャートを席巻し、「イカゲーム」が世界の人々の最もよく見るドラマとなり、KポップやKドラマ、Kビューティーが国際標準になったと満足している裏では、韓国社会の6人に1人が「先進国」の恩恵から排除され、相対的剥奪感に苦しんでいる、というのが韓国の現在位置なのだ。
OECD加盟国の相対的貧困率の比較。出典:OECD Income Distribution Databases//ハンギョレ新聞社

 文在寅大統領は25日、恐らく任期中最後となる国会演説で「これまで超高速成長してきた裏には陰の部分も多い。少子化、高齢者貧困率、自殺率、労災死亡率は恥ずべき大韓民国の自画像」と述べた。この陰の大きさをそのまま示したのは、その日の朝に報道された「韓国の相対的貧困率は、経済協力開発機構(OECD)の37の加盟国で4番目に高い」という記事だった。聯合ニュースの報道によると、2018年から2019年にかけての韓国の相対的貧困率は16.7%で、コスタリカ(20.5%)、米国(17.8%)、イスラエル(16.9%)に次いで4位。相対的貧困率(Relative poverty rates)とは、所得が基準中位所得の50%に満たない人が人口に占める割合だ。このことは、絶対的貧困からは脱したかも知れないが、社会構成員の多数が享受している一定水準の生活を16.7%、すなわち私たちの周辺の6人に1人は享受できていないということを意味する。

 OECDのウェブサイトに掲載されている相対的貧困率に関する図表を見ると、多くのことを考えさせられる。韓国の65歳以上の高齢者の貧困率は43.4%(2018年現在)で、加盟国の最高水準だ。文大統領が国会演説で特に高齢者貧困率に触れたのは、このような理由からだろう。貧困においても男女は平等ではない。韓国は、相対的貧困率で男女間の格差が大きい国として3本の指に入る。大半の国では男女間の相対的貧困率の差は大きくないが、韓国とラトビア、エストニアでのみ女性の貧困率の方がはるかに高く表れたグラフを見ると、若干奇妙な印象を受ける。

 これらの図表を見ながら「大韓民国はいつの間にか先進国になった」と誇らしく思う我々の姿を振り返ってみる。政治的批判があるにはあるが、卓越した社会的動員能力と医療従事者の献身、市民の自発的協力に基づいたK防疫の成功は、韓国社会が欧州や米国とは異なる側面において先進的なシステムを備えていることを誇示した。成功はしなかったものの、21日の中大型衛星発射体「ヌリ号」の独自技術による打ち上げも世界の注目を集めた。しかし防弾少年団(BTS)がビルボードチャートを席巻し、「イカゲーム」が世界の人々の最もよく見るドラマとなり、KポップやKドラマ、Kビューティーが国際標準になったと満足している裏では、韓国社会の6人に1人が「先進国」の恩恵から排除され、相対的剥奪感に苦しんでいる、というのが韓国の現在位置なのだ。授業料を稼ぐために夜遅くまでアルバイトをする若者や、早朝から段ボールを拾う多くの高齢者の人生が、2021年の韓国社会の姿であることを、この図表は教えてくれる。

相対的貧困率の男女差。韓国、エストニア、ラトビアで特に差が大きい。2016年の統計資料。出典 : OECD Income Distribution Datebase//ハンギョレ新聞社

 先進国だからといって陰がないということはあり得ない。米国の相対的貧困率は世界で2番目に高いが、米国のことを先進国ではないと言う人はいない。しかし、大国と先進国を気軽に混用する近ごろの状況において、韓国はどのような社会を志向すべきなのかを共に考え討論することは、切実な課題だ。OECDの図表で相対的貧困率が低い国々の名に注目するのは、そのような理由からだ。我々がよく福祉国家のモデルとして思い浮かべる北欧諸国は、このグラフの最も下の方(相対的貧困率の低い方)にある。アイスランド(4.9%)、デンマーク(6.1%)、フィンランド(6.5%)、ノルウェー(8.4%)の相対的貧困率は、韓国の半分にも満たない。

 社会的不平等と両極化という課題を短期間で解決することは難しい。2011年以降、韓国の相対的貧困率は緩やかだが少しずつ改善しているということも数値で確認できる。しかし、今の韓国社会に広がっている若者たちの絶望、高齢者の貧困問題に正面から立ち向かわなければ、一歩も前に進めない状況に至っているというのも事実だ。文在寅大統領の自省ではないが、このような問題で多くの成果を出せると信じていた進歩政権が、国民の期待に沿う有能さを示せなかったことも否定できない。

 来年3月の大統領選挙が、まさにこのような問題を直視し、いかに解消していくのか、そのために政府と社会の各部門の力量をどのように再配置するのかを明確に国民に語り、支持を求める場になることを願う。ビジョンとはまさにそのようなことをはっきりと国民に示すことだ。最近のオンラインと新聞と放送を覆いつくしている数々の疑惑と論争はもちろん重要だが、長い目で見れば通り過ぎるつむじ風にすぎない。より重要なのは、2021年の韓国社会の光と陰をきちんと把握するとともに、長く深い陰に隠れた痛みをどのように軽減するのか、率直かつ具体的に提示することなのではないかと思う。

//ハンギョレ新聞社

パク・チャンス|大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1016858.html韓国語原文入力:2021-10-27 15:58
訳D.K

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