文在寅(ムン・ジェイン)大統領が25日、国会で施政方針演説を行った。政府の首班として、政府が国会に提出した来年度予算案を説明するためだ。任期最後の年の演説なので、例年とは重みが違っていた。編成はしたものの執行の大半は次期政権が担うことになる最後の予算案に込められた政策意志を説明することで、現政権がこれまで進めてきた政策課題の成果と不十分な点、次期政権に継承を望む点を明らかにした。文大統領が「これまで超高速成長してきた裏には影も多い」とし、未解決の課題を一つひとつ取り上げたことが特に目を引く。
文大統領は、世界で最も深刻な少子化と高齢者貧困率、自殺率、労災死亡率を取り上げ、「恥ずかしい大韓民国の自画像」だと述べた。いずれも成長至上主義に押さえつけられた傷口から出たうめき声だ。韓国社会がかなり前から解決を目指してきたにもかかわらず、これといった進展が見られない難題だ。文大統領は「不動産問題は依然として国民の暮らしにおいて最大の問題でありながら改革課題」だとしたうえで、「首都圏集中現象と地域不均衡も解決できていない課題」だと語った。住宅価格の不安は文在寅政権でさらに深刻になった。
文大統領は具体的に言及しなかったが、コロナ禍はこれらの課題にさらに暗い影を落とした。デジタル経済の加速化は世界規模のプラットフォーム独占を生み、情報技術(IT)革新の裏面の弊害を露呈した。コロナ禍の衝撃に対応するための超低金利と流動性拡大は資産不平等をさらに拡大させた。文大統領は韓国社会の統合を妨げる障害として、不公正や差別、排除を挙げたが、コロナ禍で深刻化した不平等は、ポストコロナになっても簡単に解消されそうにない。将来世代に希望を与えるためには、公正と正義に向けた創意的な解決策をより積極的に模索しなければならない。
人類の生存を脅かす気候危機もまた、現代人類文明の暗い影だ。文大統領は「この重大な挑戦をもう一つの機会にするのが国家的課題」だと述べたが、韓国はカーボンニュートラル(炭素中立)のための基本計画をようやく作った状態だ。目の前の困難を避けようと疎かにしては、将来さらなる重荷になって返ってくる恐れがある。カーボンニュートラルの実現に積極的に参加しなければならない。
文在寅政権の任期はあと6カ月余りだ。その後は、来年3月に選出される次期大統領がこれらの課題を抱えていかなければならない。これらの課題に対して政治勢力によって異なる優先順位をつけ、異なる解決策を求めていくとしても、韓国社会が直面している問題そのものを避けて通ることはできない。大統領選挙の過程が一日も早く、このような問題をいかに解決するのか討論し、解決策をめぐって競争する本来の姿を取り戻すことを願う。