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[山口二郎コラム]衆議院選挙の課題

登録:2021-10-25 06:00 修正:2021-10-25 06:23
山口二郎|法政大学法学科教授

 日本では10月31日に衆議院議員選挙が行われる。この選挙では、今までにない新しい構図が見られる。日本では、1996年から衆議院について小選挙区比例代表並立制という選挙制度が実施されている。小選挙区制は大政党に有利であり、政党の集約と淘汰をもたらす。比例代表制は小政党の居場所を与える。このように性質が全く異なる選挙制度を組み合わせたことで、制度改革以後の日本の政党はある部分で進化し、ある部分で混迷を続けてきた。

 この制度に最も早く適応したのは自民党である。1990年代には大きな疑獄事件が続発し、一時は初めて野党に転落した自民党は存亡の危機に直面した。しかし、党の統一を維持し、政党システムの一翼を担い続けている。とくに、2000年代以降は公明党との選挙協力、連立を実現し、常に選挙を有利に戦っている。96年以降の新制度の下で自民党が野党だったのは2009年から12年までの3年だけである。自民党と公明党の政党連合は定着している。

 野党側では自民党に対抗する野党の塊を作る試みが何度も繰り返されてきた。しかし、権力と利益の共有のために政治家が集まる自民党と違って、日本の野党は理屈を基に党を作るという性質がある。大同結集よりも独自性を主張することを好む傾向が野党にある。また、比例代表制度は小政党の生存を可能にする。

 そもそも野党側では、自民党に対抗する際にどのような理念を軸に結集するかという基本のところで、対立があった。1つの理念は保守二大政党論である。基本的な政策は自民党と同じだが、自民党流の既得権集団の保護はやめるという路線である。東京都知事の小池百合子氏が東京で作った地域政党はこの路線である。もう1つは中道左派あるいはリベラルな政党というビジョンである。これは、かつての社会党の流れをくみ、労働組合に支援されるグループの考えである。憲法改正問題や経済政策における新自由主義路線の賛否に関して野党陣営の中でまとまれなかったのはこうした理由による。2009年の衆議院選挙では当時の民主党が勝利し、政権交代が起こった。この時は、自民党政治に対する国民の飽きが広がり、政権交代それ自体を売り物にする民主党が支持を集めた。だが、皮肉なことに、政権交代を実現することで民主党はその歴史的使命を終えたことになり、わずか3年で崩壊した。

 そのあとを受けて、2012年末に第2次安倍晋三政権が発足したが、それ以来の約8年間、日本の政治では劣化現象が続いた。詳細は避けるが、権力の私物化と暴走、内閣による恣意的な憲法解釈などは国民的批判を集め、内閣支持率の低下をもたらした。9月に誕生した岸田文雄新首相も具体的な中身は示していないが、「民主主義の危機」という言葉を用いた。

 選挙において、現在の与党に対抗する政権の担い手が存在しなかったことこそ、民主主義の危機の大きな原因であった。政治における別の選択肢を求める市民の声も大きい。その点について野党側も反省したようである。今回の選挙に当って野党陣営では、憲法擁護、平等と生活支援を経済政策の基本とするという点で大きな合意ができた。そして、その合意に基づいて小選挙区の野党候補の一本化が進み、289の選挙区のうち220程度で野党統一候補が立つことになった。これにより、選挙の構図は大きく変わった。

 そもそも日本で小選挙区制を導入した狙いは、政権をめぐって大きな政党が真剣な競争を繰り広げるような政党政治の仕組みを作り出すことであった。今回の総選挙では、穏健派の立憲民主党、中道左派の社会民主党、そして共産党が協力することにより、野党の政党連合ができた。小選挙区制の狙いが野党側でもようやく実現したということができる。

 日本が直面する問題は多い。新型コロナウイルス対策の失敗は、日本全体の行政能力の低下の表れである。経済の停滞が続く中、平均所得は過去20年間ほとんど横ばいである。世界第二の経済大国のイメージは遠い過去の話である。厳しい現状を直視し、どのような政策転換を図るのか、この選挙で論じるべきことは多い。二者択一の構図を生かして、論争を深めることを期待したい。

//ハンギョレ新聞社

山口二郎|法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

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