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[山口二郎コラム]日本で政治家の責任を問うということ

登録:2021-04-26 09:08 修正:2021-04-26 09:48
山口二郎//ハンギョレ新聞社

山口二郎 法政大学法学科教授

 先日行われた韓国の二大都市、ソウルと釜山の市長選挙では野党系候補が圧勝し、ムンジェイン政権は大きな打撃をこうむった。私自身は朝鮮半島において平和を作り出すための努力を重ねてきたムン大統領に共感を持ってきただけに、この結果は残念である。しかし、ムン政権の下で、土地開発をめぐる権力濫用や不正な利益追求が行われた以上、韓国の人々が怒り、大統領や与党を罰する投票を行ったのは当然である。民主主義とは失敗したり罪を犯したりした権力者を更迭するための仕組みである。韓国の市民は、民主主義の武器を行使して度々おごり高ぶった権力者を罰してきた。その点は、日本から見れば大変うらやましい限りである。

 日本の菅義偉政権はいくつもの政治と金をめぐるスキャンダルを起こし、政策面でも新型コロナ対策での失敗を重ねている。2年前の参議院選挙では、与党自民党の候補者が大規模な買収事件を起こし、その候補者の夫で、法務大臣を務めた政治家が議員を辞職した。この候補者の陣営には自民党本部から1億5千万円もの巨額の資金が投入されたが、金の流れは明らかにされていない。菅首相の長男が務める放送会社が監督官庁の高級官僚に違法な接待を行って、様々な優遇を得ていたことも明らかになった。前の安倍晋三政権以来政治と金のスキャンダルは多すぎて、国民の方が慣れてしまい、いちいち怒らなくなったのだろう。

 コロナ対策についても、日本の失敗は明らかである。この1年、PCR検査の件数は他の先進国よりも極めて少ないままである。ワクチン接種の数も、先進国で最低レベルである。人口百人当たりの接種回数は、英国、米国が60回あまり、ドイツ、フランスが25回前後、韓国が3回、日本は1.5回である(日本経済新聞のデータによる)。昨年秋に第2波の流行が収まった後に、政府は観光旅行に補助金を与える支援策を取り、年末からの感染拡大の原因を作った。今年に入っての第3波が収まると緊急事態宣言を解除したが、現在大阪や東京で感染の増加が続いており、また緊急事態宣言が出される見通しである。特に大阪地方では医療体制がひっ迫して、危機的状態である。

 いま日本では、国会議員の辞職、死去にともない3つの選挙区で補欠選挙が行われており、25日に投票が行われる。事前の世論調査では自民党候補の苦戦が伝えられている。1つの選挙区では自民党は候補者を立てていない。仮に野党候補が勝利しても、菅政権が存亡の危機に立たされるということはなさそうである。各社の世論調査では内閣支持率は下げ止まっている。野党への支持が高まっているわけでもない。今年10月には衆議院議員の任期が切れるので、それまでには必ず衆議院総選挙が行われる。民意の現状をもとに予想すれば、政権交代が起こる可能性はほとんどないと言わなければならない。

 政治的意思表示について、日本と韓国の両国民は対照的である。政治家が失敗や腐敗を繰り返しても、国民が幸せならばそれでよいという考えもあるだろう。しかし、国民が政治に対する怒りや不満を表現することをためらっているうちに、日本の国力はどんどん低下している。新型コロナウイルスのワクチンを日本国内では開発できない。東京大学の研究者がRNAワクチンの開発を進めていたが、政府が研究費を出さなかったので、途中で止まったのだ。ウイルス感染者との接触を感知するアプリケーションソフトも不具合を起こして、使い物にならなかった。これらの事実は、私のように戦後の経済成長と技術大国の時代を知っている人間にとってはショックである。

 腐敗した政治家を糾弾することが一時の欲求不満の解消に終わるなら、政治的意思表示は無意味である。政治の問題を是正することを契機に、政策を見直し、国の進路を転換することにつなぐことが重要である。日本では秋までに行われる総選挙に向けて、各党が停滞を脱却するためのビジョンを打ち出さ中ればならない。

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/992501.html韓国語原文入力:

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