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[コラム]サムスン電子副会長の「特別赦免論」は遺憾

登録:2021-04-21 03:44 修正:2021-04-21 07:52
//ハンギョレ新聞社

 古代ギリシャのアテネでは、赦免を受けるには秘密投票によって6000人以上の市民の同意を得なければならなかった。人気の高い有名人ならともかく、一般市民には決して容易なことではなかったという。結局、赦免するかどうかは、それが正義に合致するかどうかというよりは、その人の影響力がどれほど大きいかに左右されたのだ。赦免制度が特殊な階層に有利に働く不条理は、根がかなり深いということだ。

 赦免はかつて、過酷で硬直した法執行の緩衝材として肯定的な役割を果たしていたこともあった。中世英国の法は、人を死なせるあらゆる行為を重犯罪として処罰したため、誤って赤ん坊を水に落として死なせた4歳の少女が投獄されたこともあった。このように処罰が過度だった場合の、司法的バランスをとるための解決策こそ君主による赦免だった。そのため、単なる事故死や自然死が発生しても、責任追及を恐れてまず先に赦免願いを出す人が多かった。しかし当時は赦免の対価を支払わなければならなかったため、貧しい人々は何の罪もなくてもただ逃げることを選択することもあった。

 犯罪の種類を指定し、これに該当するすべての人を赦免する一般赦免とは異なり、特定の人物の処罰を免除する特別赦免は、本質的な公正性の問題を抱えている。一般赦免は国会の同意を得なければならないが、特別赦免はそのようなけん制装置さえない。司法府の判決の誤りや過剰を正すべき明白な事由がない限り、特別赦免が乱用されてはならない理由がここにある。

 しかし、韓国のこれまでの特別赦免の中で、誤った判決を修正するという肯定的機能を果たしたものはほとんど見当たらない。むしろ、国民和合や経済再生という大義名分の下、政治家や財閥トップたちに対して当然受けるべき処罰を免除するという特別恩赦が乱発された。このような赦免は司法権を侵害し、法の下の平等を破壊する行為だ。

 サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の2年6カ月の懲役が確定してから100日もたたないうちに、特別赦免論が頭をもたげている。米中半導体覇権競争による半導体産業危機論が口実だ。イ副会長側が再上告を行わなかったために刑が確定したわけで、裁判結果が不当だという主張はそもそも成り立たない。結局は典型的な「財閥特別待遇論」だ。「法の下の不平等」を堂々と要求するこうした悪弊はいつまで続くのだろうか。

パク・ヨンヒョン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/991793.html韓国語原文入力:2021-04-20 15:36
訳D.K

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