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[コラム]サムスン電子イ・ジェヨンの「獄中経営」

登録:2021-02-02 02:04 修正:2021-02-02 08:51
//ハンギョレ新聞社

 贈賄・横領の罪で懲役2年6カ月の実刑が確定したサムスン電子のイ・ジェヨン副会長が先月21日と26日、相次いで獄中メッセージを発した。最初のメッセージでは、順法監視委員会(順監委)への支援を誓った。2つ目では投資と雇用創出、社会的責任の履行を求めた。メディアは「イ・ジェヨンの獄中経営」が始まったと特筆大書した。

 獄中経営とは、トップが違法行為で刑務所に入れられた状態でも、会社の重要な意思決定を主導し続けることを指す。「トップ(オーナー)役割論」にもとづく財閥の長年の慣行だ。しかし便法を用いた違法な経営権継承や皇帝経営と同じく、消えるべき財閥の旧習だという否定的な見方も強い。イ副会長自身も2017年1月の初拘束後、2018年1月に控訴審で執行猶予付き判決を受けて釈放されるまで、1年間にわたって獄中経営を行っている。

 サムスンは、イ副会長が来年7月の満期出所前に仮釈放または特別赦免される可能性に大きな期待を抱いている。それまでは2017年と似た獄中経営が行われる見通しだ。しかし、イ副会長の2度目の獄中経営は越えねばならない山が少なくなさそうだ。

 まず、いわゆる「皇帝面会」批判が再燃する可能性がある。SKのチェ・テウォン会長は2013年2月に横領容疑で拘束され、4年の実刑を言い渡された後、2015年8月に特赦で釈放された。法務部の資料によると、チェ会長は2013年2月から2014年7月までの1年5カ月間、1日平均3.44回の特別面会と弁護士面会を行った。国政監査で特恵と問題提起されている。

 サムスンは「イ副会長は、過去に収監された期間に経営陣との面会が1~2回しかなかった」と一線を引いた。しかし、イ副会長は違法合併事件でまもなく裁判を受ける。1日に1回のみ可能な一般面会と違い、回数制限のない弁護人面会を獄中経営に積極的に用いた場合は、便法・特恵に対する批判が再燃する可能性がある。

 特定経済犯罪加重処罰法上の就業制限規定(第14条)も予期せぬ壁となりうる。イ副会長は刑の執行が終わった後も、5年間はサムスン電子で就業できない。カギは収監期間中の就業可能性だ。サムスンは「法律上、収監者の就業制限は不明確」と主張する。しかし経済改革連帯は「法の趣旨からすれば、収監者の就業制限は当然」と反論する。

 イ副会長が誓った順法経営と衝突する可能性も高い。サムスンは役員および従業員の不正に対する厳しい処罰で有名だ。一般社員の場合、たとえ10万ウォン(約9370円)でも会社の資金を横領したことが発覚すれば、直ちに解雇されるほどだ。イ副会長は会社の資金86億ウォン(約8億600万円)を横領した。これに知らぬ振りをすれば、ほかの役員や従業員との公平性はもとより、順法経営にも反することになる。サムスンはイ副会長を懲戒処分するかどうかについて「分からない」と述べている。

 カギは順監委の態度だ。順監委は先に、サムスンバイオロジックス証拠隠滅事件の一審において執行猶予付きの判決を受け釈放されたサムスン電子の役員に従来の業務を任せたことに対して、是正を要求している。サムスンがイ副会長を大目に見ることに順監委が目をつぶることになれば、順法経営の実効性を巡る批判が再燃する可能性がある。

クァク・チョンス論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/981329.html韓国語原文入力:2021-02-01 18:03
訳D.K

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