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[コラム]福島第一原発の汚染水、「反日」ではなく世界の問題だ

登録:2021-04-16 04:38 修正:2021-04-16 07:04
日本政府が汚染水の放出を決定した13日、福島第一原発に汚染水を入れたタンクが並んでいる=福島/AP・聯合ニュース

 原爆の被爆国であることを掲げてきた日本が、放射能で汚染された大量の水を海に流すことを決めた。歴史上最悪の福島第一原発事故を起こしても、日本の市民や周辺国家にきちんとした謝罪も行わず、責任も取らず、米国の支持を前面に押し立てて汚染水の放出を強行しようとする態度は、植民地支配と戦争の責任を直視せず、その記憶すら消そうとしてきた日本の権力者の態度が変わっていないことを示している。

 東京大学の姜尚中名誉教授は著書『浮かび上がった国家と捨てられた国民』(日本語原書は『維新の影 近代日本一五〇年、思索の旅』2018、集英社)で、なぜ日本で人類の歴史の悲劇が繰り返されるのか。広島、長崎への原爆投下、水俣の前例のない公害、福島第一原発の爆発のような黙示録的事件はなぜ繰り返されるのかという問いを投げかけ、近代国家日本が「弱い社会の上にそびえ立つ国家主義の生理」を捨てられないことが原因であると診断する。「戦争と事故は性格が異なる悲劇だ。しかし、両者に共通点があるとすれば、そのような状況に襲われた時に国家や企業、組職や制度の後ろに身を隠すパワーエリート(権力集団)を目撃することになるということだ。彼らは『戦争は避けられない』『原子力エネルギーは放棄できない』と言い、状況に順応して屈服する(…)誰も責任を取らない『無責任体制』を何と呼べばよいのだろうか」

 もう一つ重要な問いがある。なぜ日本は今、放出決定を強行したのか。16日の米国のジョー・バイデン大統領と日本の菅義偉首相の首脳会談を控え、日米は事前にコンセンサスを形成したのだ。日本の放出決定後、米政府と国際原子力機関(IAEA)は直ちに支持を表明した。一方、日本は韓国、中国には情報提供も協議も行わなかった。日本政府は当然、韓国と中国の反発を予想していた。日本の戦略家にとってこれは「好材料」だ。韓中が仲間となって米国と日本に対抗する姿勢を示すことで、「米中競争の渦中に韓国が綱渡りをし、事実上中国側に傾いている」という米国内の疑念を確固たるものできると判断したのだろう。

 第二次世界大戦以降、米ソ冷戦は日本にとって非常に有利に展開された。日本は戦犯国の責任を簡単に免れ、韓国が発言権を持たないまま形成されたサンフランシスコ体制を足場として経済大国となった。脱冷戦は日本に不利に働いた。1980年代に米国の挑戦者として浮かび上がった日本は、1985年のプラザ合意と翌年の日米半導体協定で金融と産業の主導権を奪われ、「失われた歳月」へと落ちていった。今や米中新冷戦によって新たな国際秩序の枠組みができつつある。韓国の発言権を縮小し、日本の思惑通りに新たな枠組みを作るには、「韓国は中国の味方なので信じられない」という言説がワシントンで大きくなればなるほど、日本に有利に働く。韓国が「反日の罠」にはまるほど、日本の主張が米国で力を得る。

 韓国は、日本の不透明な汚染水放出決定への反対は韓日対立の問題ではなく、全世界が共に苦悩すべき重大な環境問題であるということを明確にしなければならない。日本政府と東京電力は、トリチウム(三重水素)ばかりに焦点が当たるようフレームを作った。韓国の月城原発をはじめ、世界の原発がトリチウムの含まれる汚染水を放出しているのに、韓国は非科学的に福島第一原発の汚染水に言いがかりをつけていると主張する。燃料棒が溶け落ちるメルトダウン事故が起きた福島第一原発の汚染水には、トリチウムのほかにもストロンチウム90、セシウム137などの、人体に致命的な放射性物質が含まれているという事実を巧妙に隠蔽するフレームだ。東京電力は、基準値以下に下げてから放出する計画だとしつつも、正確な情報は公開していない。このような問題については、IAEAのほかにも世界保健機関(WHO)や国際環境団体、韓国、中国、台湾などの専門家の参加のうえで検証せねばならない。

 さらに重要なことは、日本をはじめとする世界各国の市民との連帯だ。日本人の70%以上は汚染水の放出に反対している。最も直接的な被害者は、福島近隣の住民と日本の漁民だ。韓国と日本の市民が共に、海と共同体の未来を守るために絶えず協力することで、「韓国は約束を守らない国」という日本の右翼の虚構的主張からも脱することができるだろう。グリーンピースが「今回の決定は、福島をはじめとした日本の住民、そしてアジア太平洋地域の人々の人権と利益を完全に無視するもの」との声明を出すなど、国際社会でも懸念の声が広がっている。ある米国人の友人は「米国政府が同意したからといって、それは米国市民が同意したということを意味するものではないということを必ず覚えておいてほしい」とし「世界がともに阻止しなければならない」と述べている。

パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/991173.html韓国語原文入力:2021-04-15 15:56
訳D.K

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