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[コラム]ラムザイヤー「慰安婦」論文に沈黙する日本メディア

登録:2021-03-19 08:15 修正:2021-03-19 13:02
日本軍「慰安婦」被害者のことを売春婦と規定した主張を展開し批判を受けているマーク・ラムザイヤー米ハーバード大学教授=ハーバード大学資料写真//ハンギョレ新聞社

 日本軍「慰安婦」を売春婦と規定したハーバード大学のマーク・ラムザイヤー教授の論文に対する議論が、ひと月以上続いている。先月28日、産経新聞がラムザイヤー教授の論文を紹介する記事を掲載して以来、「慰安婦」被害者をはじめ学界でも批判が強い。「論文を撤回せよ」という署名、シンポジウム、メディアへの寄稿など、世界各地でさまざまな形で反発が続いている。批判世論が広がり、韓国メディアだけでなく主要な海外メディアも同事案を報道し始めた。CNN、ガーディアン、ニューヨーク・タイムズ、中東のアルジャジーラなどもラムザイヤー教授の論文が国際的反発に直面したとし、詳細を伝えた。

 このような雰囲気をものともせず、日本のメディアはあまりにも静かだ。日本で最大の部数を発行する読売新聞や公共放送のNHKは、ラムザイヤー関連の記事を一度も扱ったことがない。比較的進歩的だと評価される朝日新聞や東京新聞なども、10日に日本の学界が(ラムザイヤー論文に対する)批判記者会見をした際、短いニュース取り上げた程度だ。日本のメディアだけを見ると、ラムザイヤー問題とは何なのかまったく知ることができない。

 日本のメディアが沈黙するのは、社会ムードが反映されたためという指摘がある。日本で「慰安婦」問題を被害者の観点で扱うには覚悟が必要だということだ。2014年8月の朝日新聞の誤報認定が大きな分岐点となった。当時、同紙は「済州島で朝鮮人女性を『狩り出した』」という吉田清治氏(2000年死亡)の証言をもとに1980~1990年代に報道した16件の記事を取り消すと明らかにした。日本による植民地時代に山口県動員部長とされる吉田氏の証言を裏付けるような事実が明らかになっていないと理由を説明した。同紙は「吉田証言」は不正確なものであったが、女性たちが本人の意思に反して「慰安婦」として連れて行かれたのは変わらない事実だと強調した。

 しかし、右翼勢力の攻撃は激しいものだった。朝日が誤報をしたために大したことのなかった「慰安婦」問題が大きくなり、日本の国益を損ねたという論理が急速に広まった。「慰安婦」の強制性を示す証拠がたくさんあるにもかかわらず、右翼は吉田証言の誤報だけを浮き彫りにした。朝日新聞社長は辞任し、記者たちに対する脅迫を受け、会社を相手取った損害賠償請求訴訟も起こされた。

 右翼の「標的狙い」は続く。1991年に「慰安婦」被害者である金学順(キム・ハクスン)さんの証言を初めて報道した植村隆元朝日新聞記者は、今も「植村=捏造記者」と攻撃されている。最初の報道という象徴性のためか、第2の人生を始める予定だった大学との契約も右翼の妨害で取り消された。

 2019年には、日本の愛知県での国際芸術祭に展示された「平和の少女像」が右翼の脅迫により3日で展示が中断されたが、閉幕1週間前に再開されるという事件があった。展示を決めた愛知県の大村秀章知事は右翼の標的になった。知事を追放するため「リコール(解職請求)運動」が始まり、約43万5千人が署名に参加した。最近、このうちの83%が無効と判明した。一人が何度も署名したり、かなり前に死亡した人の名前も多数登場し、警察が捜査に乗り出した。知事を攻撃するために捏造もはばからなかったわけだ。

 日本全体で見るとこのような右翼は少数かもしれない。だが、多数が沈黙する中で結集された少数は強い力を持つ。「慰安婦」問題は、沈黙と執拗な攻撃によって消すことも、解決することもできないということは明らかだ。

//ハンギョレ新聞社

キム・ソヨン 東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/987376.html韓国語原文入力:2021-03-1902:40
訳C.M

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