最近、日本軍「慰安婦」生存者であり、女性人権運動家として2007年の米下院決議121号の採択、2017年のサンフランシスコ記念碑建立、今年初めのマーク・ラムザイヤー教授の歴史歪曲論文に対する反論などで先頭に立ってきたイ・ヨンスさんが、韓国と日本政府に日本軍「慰安婦」問題の国際司法裁判所(ICJ)付託を求めた。
1月8日、韓国の裁判所は日本軍「慰安婦」制度が反人道的犯罪だったことを確認し、日本政府の法的責任を認めた歴史的な判決を下した。しかし、むしろ日本は韓国の管轄権免除(主権免除)違反を主張し、ICJへの提訴を示唆した。
これに対しイ・ヨンスさんは、この30年の「慰安婦」運動の延長線上で戦争犯罪認定、真相究明、公式謝罪、法的賠償、責任者処罰、歴史教科書への記録、追悼碑と史料館建設など7つの要求事項、特に犯罪事実の認定と公式謝罪を勝ち取るために、ICJへの付託を提案したのだ。
もちろん、全ての訴訟には敗訴のリスクが伴う。1月8日に判決が下された、ナヌムの家で生活する「慰安婦」被害女性たちの訴訟も、2013年8月の調停事件から始まり日本の拒否により2016年1月に訴訟に移行した時は、主権免除で却下の見通しが優勢だった。
韓国の裁判所で敗訴したなら、「慰安婦」運動は相当な打撃を受けたことだろう。実際、2016年12月にイ・ヨンスさんらを原告として挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)が起こした訴訟は、(8日の判決の)5日後の1月13日に判決が下る予定だったが、裁判部が突然弁論を再開し、様々な推測を生んだ。
このように、韓国国内での訴訟の勝訴も敗訴のリスクを甘受した結果であり、イ・ヨンスさんは今回も苦心の末、ICJへの付託を求めたのだ。
国連の司法機関であるICJは、大国の国際法違反にも厳正な態度を示してきた。2014年、日本は唯一のICJ訴訟で、鯨の乱獲でオーストラリアに提訴され敗訴した。ICJは1986年のニカラグアのコントラ反軍支援事件、2009年のウィーン条約に違反した54人のメキシコ人死刑囚事件で米国に敗訴判決を下し、2004年のパレスチナの壁、2019年のチャゴス諸島の「勧告的意見」でそれぞれイスラエルと英国の国際法違反を確認した。
ICJは判決において、当事国が付託した各法的事案について個別判断を下す。
「慰安婦」被害者たちが日本に切実に要求する「慰安婦」制度の犯罪事実の認定は、国連、米国など国際社会では常識に通じる。ドイツは過去、戦時強制労働は戦争犯罪だったことを認めながらも、戦後の条約で個人請求権が放棄されたという立場だが、日本は「慰安婦」制度が国際犯罪ではないと主張しているので、ICJによる犯罪確認は被害者の人権救済の重要な中心となるだろう。
国際法違反には金銭的賠償だけでなく、違反認定と公式謝罪、責任者処罰、再発防止などの義務が伴う。日本軍「慰安婦」問題の場合、ICJで歴史教育と歪曲反論義務も主張できる。
一方、日本の1965年の韓日請求権協定による個人請求権放棄の主張は、「慰安婦」被害者の場合1991年までは日本政府が関与を否定したため成立は難しい。2015年の12・28韓日合意は、個人請求権に関する言及がない。たとえ金銭的賠償の請求権が放棄されても、犯罪認定と謝罪、歴史教育のような非金銭的義務まで条約によって消えることはない。
2012年、ICJは11対3の表決でドイツの戦時強制労働に対する主権免除を認めたが、軍隊の性奴隷制は強制労働よりさらに重い犯罪だ。既存のICJの判例が変わらなければ、韓国の裁判所の判決は国際法違反だという主張は続くだろう。ICJが再び主権免除を認めても、これは手続き的に韓国の裁判所で日本政府を提訴できないだけであり、実体的権利・義務には影響がない。
ICJ裁判は、かつてのニュルンベルクや東京裁判のように、膨大な分量の「慰安婦」歴史資料と証言を裁判記録として後世に残す付随的効果もある。
イ・ヨンスさんが「慰安婦」問題のICJへの付託を強く求めたのは、被害者が一人二人と亡くなる中、ほかの代案がないからだ。韓日関係は膠着状態であり、韓国裁判所の判決も日本政府が拒否してしまった。
「慰安婦」問題のICJへの付託のためには、韓日両国政府の特別協定(special agreement;compromis)の締結を通じた合意が必要だ。韓国が日本に「慰安婦」問題の付託を提案すれば、日本が独島問題などのICJへの付託を逆提案するだろうという懸念も提起されている。
しかし、これはまるで拉致・強姦被害者との合意を議論する場で同時に不動産に関する交渉までしようというのと同じだ。日本がそのような常識外の主張をするなら、ICJ付託拒否と見なせばいい。国際社会も「慰安婦」問題のICJへの付託を避けるための浅ましい手段とみなすだろう。
日本軍「慰安婦」問題のICJ付託は、韓国政府の政治的意志さえあれば、普遍的な女性人権と未来志向的な韓日関係のレベルで国際的共感を得ることができる。日本もICJ付託の要求があれば、口先だけで国際法順守を叫ぶのではなく、これを実践に移すべきだ。
シン・ヒソク|延世大学法学研究院/転換期正義ワーキンググループ研究員