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イ・ヨンスさん「慰安婦問題が国際法の判決受けるのが最後の願い」

登録:2021-02-17 03:12 修正:2021-02-17 06:45
記者会見で国際司法裁判所への回付を求める 
韓日両政府の思惑は複雑…とりあえずは「慎重モード」 
正義連「独島などが絡まれば別の対立の懸念」
日本軍慰安婦被害者のイ・ヨンスさんが16日にプレスセンターで「日本軍慰安婦問題の国連国際司法裁判所への回付を求める記者会見」を行っている/聯合ニュース

 「私は今まで、可能なあらゆることをしてきました。全世界に行って証言し、米国に行って決議(2007年6月の米下院決議)もあげさせ、サンフランシスコに追悼碑も建てました。裁判もしました。でも日本はまだ無法にふるまっています。韓国司法の判決を無視して、控訴すらせずに意地を張っています。開き直って韓国の裁判所が国際法に違反したと主張しています」

 16日午前11時、日本軍「慰安婦」問題を国際司法裁判所(ICJ)で裁くことを求める記者会見場が設けられたソウルプレスセンターの20階は、韓日両国から集まった100人を超える記者たちであふれかえっていた。ピンク色の韓服を着た「慰安婦」被害者イ・ヨンスさん(92)は取材陣にあいさつした後、事前に用意していた呼びかけ文を読み始めた。途中、感情が高まったイさんの声は震え、最後のくだりではついに泣き出してしまった。

 だが、伝えようとしているメッセージは明確だった。イ・ヨンスさんは、「もう時間がない」、「(すでに亡くなった)被害者たちのもとに行って話せるように文在寅(ムン・ジェイン)大統領と韓国政府が国際法による判決を受けてほしい、というのが私の最後の願い」と話した。先月8日に、慰安婦問題のような「反人道的不法行為」については、国際慣習法上の「主権免除原則」を適用しない場合もあるとし、日本政府に賠償を命じた韓国司法の「画期的判決」が下されて以降、韓日両国の一部から提起されていた「国際司法裁判所への持ち込み論」が生存被害者イ・ヨンスさんの口を通して公式化されたのだ。

16日にプレスセンターで開かれた「日本軍慰安婦問題の国連国際司法裁判所への回付を求める記者会見」の会見場の様子//ハンギョレ新聞社

 この日の会見の出席者は、国際司法裁判所への回付の意味を強調しつつ、韓国に有利な判決が期待できるとの展望を示した。「日本軍慰安婦問題国際司法裁判所回付推進委員会(以下「推進委」)」のキム・ヒョンジョン報道担当は「被害者たちは、繰り返し公式謝罪と法的賠償を行ってほしいと叫んできた。(国際司法裁判所への回付は)それを実現できる合理的な方法だと思う」と述べた。推進委に参加するシン・ヒソク博士(国際法)も「韓国には十分に勝算がある。この判決を通じて韓日間の長い歴史問題の解決の突破口を開くことができ、この10年間で出口戦略が見えないほどに破綻した両国関係の回復の契機が作れる」と述べた。シン博士はさらに、国際司法裁判所はこの問題を「実体的には国際法に違反した戦争犯罪」であると認めつつ、「手続き的に個人賠償請求権は1965年の韓日請求権協定で放棄されており、韓国司法は日本の主権免除を尊重すべきだ」との結論を下す、との予測を示した。これによって被害者たちが主張してきた個人賠償請求権は喪失されるが、核となる要求だった「慰安婦制度は日本の国家犯罪だった」との事実は認められうるから、「満足できる結果」となるという主張だ。

 しかし、イ・ヨンスさんと「推進委」の主張ほど、見通しは明るいばかりではない。国際司法裁判所に回付するには韓日両国の同意が前提となるが、両国の思惑は複雑だ。ひとまず韓国は慎重な立場を取っている。韓国が下手に提訴の話を切り出せば、日本の「老獪な外交術」に引っかかり、取り返しのつかない方向へと事態が展開する可能性があるからだ。外交部のチェ・ヨンサム報道官はこの日の定例ブリーフィングで「慰安婦被害者などの立場をもう少し聴いてみようと考えている。国際司法裁判所への提訴問題は慎重に検討していくつもり」と述べた。

 日本も同様だ。茂木敏充外相も定例記者会見で「どういう意図で、どういう考えでご発言しているかも、私、存じ上げませんので、コメントは控えたい」という反応にとどまった。しかし日本は、2015年の12・28合意で慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的」に解決されたとの立場のため、「慰安婦問題のみ」を回付しようという推進委の提案には応じない可能性が高い。

 正義記憶連帯のイ・ナヨン理事長も「慰安婦問題だけを持ち込むなら勝訴の可能性がなくはない。しかし、日本が独島、植民統治の合法性などの大韓民国の建国理念にまで手を出してくる可能性がある。結局、問題解決とは程遠い別の対立状況が発生するだろう」との懸念を示した。

キル・ユンヒョン、キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/983195.html韓国語原文入力:2021-02-16 16:28
訳D.K

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