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[社説]「司法壟断の清算」おろそかにした司法府が自ら招いた難局

登録:2021-02-06 07:12 修正:2021-02-06 10:04
キム・ミョンス最高裁長官が今月5日午前、ソウル瑞草区の最高裁に出勤している/聯合ニュース

 司法壟断事件に関与し、弾劾訴追された釜山(プサン)高裁のイム・ソングン部長判事が、事前に辞表を出して弾劾を免れようとした事実が明らかになった。また、辞表を突き返す過程についてキム・ミョンス最高裁(大法院)長官が虚偽の釈明をしたうえ、イム部長判事との面会を録音したものが公開されるなど、不適切な品行が続き、司法府が総体的難局に陥っている。司法壟断の断罪をめぐって繰り広げられるこの乱脈ぶりは、司法壟断が暴露された当時に劣らぬ衝撃を与え、司法府への信頼の危機を招いている。

 この3年間、司法壟断事件の処理過程は「絶望的」という言葉以外には表現できない。起訴された裁判官らは「100%無罪判決」を言い渡された。国会で弾劾訴追案が可決された4日にも、もう一つの無罪判決が出た。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の「秘密の医療スタッフ」の特許訴訟の状況を最高裁事務総局に渡した疑いで起訴されたユ・ヘヨン元最高裁首席裁判研究官が、一審に続き控訴審でも無罪を言い渡されたのだ。裁判所は現行法と法理では処罰できないとか、検察が容疑事実を十分に立証できなかったとして、判事らに免罪符を与えている。“身内”に対する特別寛大な物差しではないかという疑念を抱かざるを得ない。たとえ裁判による処罰が難しいとしても、重い懲戒などで断罪すべきだった。しかし一部だけが譴責(けんせき、一番軽い懲戒処分)や停職6カ月などといった軽い懲戒処分を受けており、すでに退職した者もいる。

 このように、司法府が司法壟断に対する清算の意志を示さなかったからこそ、国会が乗り出して、司法府牽制の手段である「裁判官弾劾」を持ち出すことになったのだ。これにはキム最高裁長官の責任が大きい。キム長官はイム部長判事に会った際も、司法壟断に断固たる態度を示さず、政界のせいにした。また面会の際、弾劾関連対話はなかったと偽りの釈明まで行った。司法府の首長として恥じるべき行動だ。

 キム最高裁長官の言動は批判されて当然だが、これを口実に今回の弾劾訴追の本質を曇らせようとする試みも容認されてはならない。5日、イム部長判事の司法研修院同期の名義で出た声明がその代表的な事例だ。彼らは「所属裁判官が不当な政治的弾劾の渦に巻き込まれるのを放置した」とし、「弾劾されるべきはキム長官」だと主張した。「司法壟断裁判官の保護」を「司法府の独立」にすり替えることは、裁判官はいかなる牽制も受けてはならないという特権意識にすぎない。最高裁長官との面会内容を密かに録音し、公開までした背景にあるのも、この特権意識であろう。

 一部の裁判官までがこのような主張に同調する態度を示すのは憂慮すべきことだ。裁判所全体が司法壟断とその処理過程を痛烈に反省しなければ、司法府への不信感は払しょくできない。これはまさに司法府の存立基盤を揺るがすことだ。キム最高裁長官をはじめ、裁判所の構成員全員が危機の本質を直視し、国民の信頼を回復するために何をすべきか謙虚な省察に乗り出さなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/982080.html韓国語原文入力: 2021-02-06 02:33
訳H.J

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