「司法壟断」に関与した疑惑で弾劾訴追案が国会本会議に提出された釜山高裁のイム・ソングン部長判事が「一方的な主張で弾劾手続きが進められている」と主張したことに対し、法曹界では2日、「司法府は司法壟断事件を集団で忘却している」と懸念する声が上がっている。 司法壟断に関与した裁判官に対する「生ぬるい懲戒」に続き、裁判官弾劾について「唐突だ」とか「裁判所を手なずける行為」とみなす裁判所の一部の冷笑的な態度が、当事者であるイム部長判事が公開で反発することを可能にしたとの批評も出ている。
イム部長判事は1日夜、裁判所の内部ネットワーク(コートネット)に「弾劾を発議した議員らが提示した弾劾訴追事由は『(私が)裁判長の後ろに隠れて権力者の趣向に合わせて裁判を変えるために裁判手続きに介入し、判決内容を修正するなど司法壟断ブローカーの役割をした』ということだ」と書き「これは事実に合わない一方的な主張だ」と反論した。また「司法レベルでも重要な先例になり得るので、事実調査の先行なしに一方的な主張だけで弾劾手続きが進んではならない」と主張した。これに先立ち、イム部長判事はソウル中央地裁刑事首席部長判事だった2015年12月、裁判所事務総局の要請を受け、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の「セウォル号(事件の際の空白の)7時間」に関する疑惑のコラムを書いた産経新聞の加藤達也元ソウル支局長の名誉毀損一審判決文の作成に介入した疑い(職権乱用)で起訴された。一審は職権乱用の疑いに無罪を宣告しながらも、イム部長判事の行為は「裁判官の独立を侵害する違憲的行為」だと判断している。
しかし、裁判所の一部では、今回の弾劾案について「むしろ弾劾訴追が遅すぎた」という反応が出ている。匿名を求めたある判事は「弾劾訴追に対して『唐突だ』という反応は、司法府が司法壟断に対して集団で記憶喪失しているという点を示すもの」だとし「すでに2018年に全国裁判官代表会議が『裁判独立侵害行為は懲戒だけでなく弾劾訴追事案に当たる』と明らかにした。むしろこの2年間、懲戒と弾劾訴追が行われなかったことがもっと痛恨だ」と述べた。首都圏の裁判所のある部長判事も「いま弾劾訴追に対して批判が出る理由は、(イム部長判事がまもなく退職するため)憲法裁判所で弾劾訴追案が却下される可能性が大きいから」だとし「(司法壟断事件直後の)2018年に訴追していたら、今のように批判を受けることはなかっただろう」と述べた。また別の判事も「裁判介入は明白な事実であるため、弾劾要件に該当する」としながらも「ただし、イム部長判事が疎明する権利があるという趣旨の主張はできる」と述べた。
司法部の「生ぬるい懲戒」も再び俎上に載せられている。最高裁の裁判官懲戒委員会は2018年12月18日、キム・ミョンス最高裁長官が懲戒請求した裁判官13人のうち8人の懲戒処分を議決した。停職6カ月が2人、停職3カ月が1人、減給3カ月が4人で、今回弾劾対象になったイム・ソングン部長判事は「譴責(一番軽い懲戒処分)」にとどまった。司法壟断という未曾有の事態を経験したにも関わらず、裁判官への懲戒処分の最高レベルである停職1年を受けた人は一人もいなかった。さらに、最高裁は昨年2月、検察の起訴で裁判業務から排除された7人の判事を裁判部に復帰させ、免罪符を与えたという批判を受けてもいる。弾劾訴追案発議に参加した民主党のある議員は「一審判決文に『違憲行為をした』と明示された当事者がこのように公開で反発できるのは、弾劾に対して冷笑的で、自分をかばうような裁判所の一部の雰囲気と無関係ではないだろう」と指摘した。