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コロナ禍による所得損失、韓国政府は「慰労金」越える実質的な補填策を打ち出せるか

登録:2021-02-06 04:00 修正:2021-02-06 07:14
[土曜版]来週の質問
ホン・ナムギ経済副首相、兼企画財政部長官が3日午前、国会本会議場で国民の力のチュ・ホヨン院内代表の交渉団体代表演説を聞いている/聯合ニュース

 ホン・ナムギ経済副首相兼企画財政部長官は昨年12月29日、ある番組に出演し「今回は集中的な被害を受けた階層を手厚く支援するのが正しいと判断し、選別支援を行った」と述べた。集合禁止を受けた小商工人(従業員5人未満)には300万ウォン(約28万1000円)、営業制限には200万ウォン(約18万8000円)、売上が減少した一般業種(年間売上高4億ウォン、約3750万円以下)の小商工人には100万ウォン(約9万3800円)を支給する第3次災害支援金について述べたものだ。この発言を聞くと、果たして彼が生存の危機に直面する小商工人と雇用脆弱階層の境遇をきちんと理解しているのか疑わざるを得ない。「慰労金」程度にはなるものの、手厚いどころか、彼らが新型コロナウイルス禍で受けた損失を補填するには、はるかに足りない金額だからだ。

 ホン副首相は、予算を担い続けてきた正統派の財政官僚出身だ。財政官僚たちは、財政は国家経済の最後の砦だとの信念から、財政は可能な限り節約すべきという考え方が根付いている。しかし財政の究極の目標は国民の生活を保護することであるから、今のような経済危機においては、中期的な財政健全性を害さない範囲で最大限使うべきだ。財政余力が他の主要国よりあると評価される状況においてはなおさらだ。財政は堅実に維持しても、国民の暮らしが疲弊してしまったとしたら、それに何の意味があるというのか。

 将来に備えて財政を節約すべきというアプローチ方法は、むしろ経済にとって毒になる恐れがある。小商工人や中小企業が耐え切れず、社員を解雇したり、借金だらけとなり結局廃業に追い込まれたりすることになれば、ウイルスの抑え込みに成功したとしても、多くの人々が再起不能な状態に陥ることになる。実際に、1997年の通貨危機や2008年のグローバル金融危機のような大危機に直面した際には、韓国の潜在成長率は大幅に下がり、出生率までもが急激に落ち込んだ。危機の波を乗り越えることができずに経済活動から退いたり、瀕死状態に陥ったりした人々が多く発生したことによるものだ。何としても彼らが経済活動を放棄することなく持ちこたえ、その後も早く回復できるよう、国が「酸素呼吸器」をあてなければばならない理由がここにある。

 米国、欧州、日本などの主要国が昨年から天文学的な資金をつぎ込んでいるのも、このような理由からだ。もちろん韓国も3次にわたって災害支援金を支給した。しかし主要国のコロナ対応のための財政支出が国内総生産(GDP)の14~16%台にのぼるのに対し、韓国は3.4%にとどまる。

 一部の人々は、韓国は防疫に成功しているため、財政支援の必要性が低いと主張するが、実状はそうではない。韓国と同様、防疫に成功したオーストラリアも、コロナ対応のための財政支出はGDPの16.2%にのぼる。国際通貨基金(IMF)の集計によると、オーストラリアのコロナ関連の財政支出額は2180億ドル(約244兆ウォン)と、韓国(560億ドル)の3.9倍に達する。人口が約2500万人あまりと、韓国の半分程度であるにもかかわらずだ。このような影響を受け、オーストラリアの国家負債比率(GDP比)は、2018年は41.7%で韓国と同様の水準だったのが、昨年は60.4%、今年は70.2%へと急上昇すると推定されている。

 このような違いは、国の役割についての哲学が大きく異なるためとみられる。同国のスコット・モリソン首相は最近の演説で「政府は今年も国民の懐により多くの金を入れ続ける」とし「これは国民に、自分たちが稼いだ所得をより多く持たせることで、家族を養い、事業を維持してもらうためのもの」と述べた。被害階層と脆弱階層が主に自分の懐をはたくか借金をするかして、どうにか持ちこたえられる韓国の現実とは対照的だ。

 韓国政府もこのかん福祉制度を拡充させてきた。しかし、今のように小さな財政規模の下では限界に突き当たらざるを得ない。IMFが先進国に分類した35カ国のうち、韓国のGDPに対する財政収入の割合は昨年22.9%で、下から3番目だ。財政のパイを増やさぬことには、このような危機の際にまともに使えないのだが、根本的な限界があるというわけだ。

 財政のパイを増やす方法は2つある。一つは租税収入、もう一つは国債の発行だ。韓国は両者とも小規模だ。今の状況では増税は難しいだけに、当面は国債をさらに発行して財源を調達しなければならない。危機が去った後に租税収入を増やして国債を返済していけば、財政健全性は保てる。主要国もすべてこのようなやり方で財源を調達して資金を供給しているが、韓国はこのような正攻法を回避しようとしているから解決策がこじれるのだ。平常時なら、支出構造の調整などで当座をしのぐこともできるが、このような大規模な危機の際には、ほかに方法はない。責任ある政治家なら、このような中長期計画まで示してこそ財政当局を説得でき、「大きな政府」としての役割もきちんと果たせるというものだ。

 韓国も1~3次災害支援を実施したことで、すでに被害階層に対する支援のあり方の大枠は備わっている。ただし支援金の規模が十分でなく、死角地帯も少なくないという問題がある。旧正月の連休を前後して、大統領府と与党には、腰を据えて、コロナ禍で大きな損失を被る階層の暮らしを支える対策の大枠をまとめることを期待する。

パク・ヒョン経済チーム先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/982089.html韓国語原文入力:2021-02-05 19:44
訳D.K

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