野党「国民の力」が連日、「原発共産主義レッテル貼り」攻撃を続けている。チュ・ホヨン院内代表は1日、「(文在寅政権が)核兵器を手に持つ金正恩(キム・ジョンウン)に原発を与えようとするのは、安保を脅かす利敵行為」だと主張した。29日に出てきたキム・ジョンイン非常対策委員長の「衝撃的な利敵行為」発言を繰り返したのだ。しかし、「対北朝鮮原発提供説」自体が多くの面で根拠が足りないという点が明確になっているにも関わらず、相変わらずイデオロギー論を押しつけるのは、無責任きわまりない。
「国民の力」は、「産業通商資源部が北朝鮮に対する原発提供を検討した文書を監査院の監査前に消したのは、秘密裏に北朝鮮に原発を建てようとした計画を隠そうとしたため」だとか、「板門店(パンムンジョム)会談で文在寅大統領が北朝鮮の金正恩国務委員長に渡したUSBに軽水炉の機密が入っていたのではないか」と主張する。しかし大統領府は、板門店会談の際に渡した「朝鮮半島新経済構想」のUSBでは、水力・火力のエネルギー協力が言及されていただけで、原発関連の内容は収められていなかったと反論した。産業部もこの日の夕方、「(この報告書は)今後可能な案についての内部検討資料であり、政府の公式立場ではない」と明記された関連文書を急きょ公開した。文大統領はこの日の首席・補佐官会議で、「ただでさえ国民の生活が厳しい状況で、捨てるべきである前時代の遺物のような政治で対立をあおり立て、政治を後退させることのないよう願う」と述べた。
事実、北朝鮮に対する原発の提供は、金泳三(キム・ヨンサム)政権期の1994年の朝米ジュネーブ合意以後、北朝鮮非核化と南北経協を促進する案として継続して検討されてきた。アイデアの段階で調べてみることは問題にはなりえない。政府が軽水炉の独自技術を保有する米国と協議なしに、国連制裁を破り秘密裏に原発に建てるつもりだという仮定も、現実性がない。「国民の力」がこのような歴史的な流れと現実的な条件を無視したまま、産業部が文書を作成後に削除したという理由だけで共産主義支持というこじつけを展開するのは、説得力に欠ける。政府に対する監視と批判は野党の重要な責務だが、事実に基づかなければならないのはいうまでもない。政府もこの日に産業部が作成した文書を公開したのに加え、文書削除の経緯も明確に説明することで、一部の疑問をすべて解く必要がある。
前代未聞の新型コロナ禍で強い苦痛を受けている国民は、どうにかしてこの危機を乗りこえようと死力を尽くしている。政界は助けにはなれなくても、不毛な政争で国民を疲れさせることはあってはならない。