欧州連合(EU)が新型コロナウイルスワクチンの域外輸出を規制すると発表したことについて、世界保健機関(WHO)は29日(現地時間)、「ワクチンの自国第一主義コロナ克服を阻害する」と強く批判した。外国メディアの報道によると、WHOのマリアンジェラ・シマオ事務局長補は「ワクチンはすべての国で公平に共有されなければならない。ワクチンの自由な流れを許さないのは助けにはならない」と語った。世界的な感染症を克服するためには国際協力が欠かせない。ところが今、先進国のワクチン確保競争はこれに逆行しているようで憂慮される。
EUのワクチン域外輸出規制方針は、英国とEUの対立が直接の契機であるようだが、根本的には「我々がワクチンを接種しないうちは、他の国には与えない」という国粋主義的発想にほかならない。似たような現象は「富裕国」を中心に広範に起きている。世界人口の16%がワクチンの全供給量の60%を確保しており、カナダは全人口に5回接種できる量のワクチンを先行購入したという。一方、アフリカや中南米の貧しい国々は徹底して疎外されている。これでは、貧しい国の国民は検証されていない実験用ワクチンを接種せざるを得なくなる。
「ワクチン自国第一主義」はコロナを克服する助けとはならない。コロナはパンデミックであるため、一部の国だけが接種を終えたからといって終息させることはできないとWHOは警告する。また、ワクチン自国第一主義のせいで、全世界で年間1兆2000億ドル(約1359兆ウォン)のコストがかかる可能性があるとの予測もある。
その点で、カン・ギョンファ外交部長官が29日の世界経済フォーラム(WEF)画像会議で「コロナワクチン自国第一主義を止めなければならない」と主張したのは時宜にかなったものだったと思われる。カン長官は「国際社会は、連帯と協力の価値に基づいた多国間主義協力を強化しなければならない。特にこのところ数カ国で見られるワクチン自国第一主義を止め、ワクチンおよび治療薬の普遍的かつ公平な普及の支援のため努力すべき」と述べた。
韓国はワクチンの均等供給を追求するWHOの「COVAXファシリティ」プロジェクトに1000万ドルをすでに拠出している。しかし一方では、ワクチンのさらなる確保のために他の先進国と競争を繰り広げているのも事実だ。現実的にみてワクチンの確保と分配をWHOだけに任せることはできないが、均等配分に向けた国際社会の努力に積極的に参加することは重要である。