1月に開かれた北朝鮮の第8回労働党大会で「金正恩(キム・ジョンウン)の核武力ドクトリン」が完成に向かっていることが分かった。北朝鮮が核兵器の種類と核兵器使用の方針、そして使用方法を網羅した北朝鮮流の軍事教理を作り上げたという意味だ。北朝鮮は、核兵器を乱用しないが、必要によって先制的に使用できるというフランスの核ドクトリンも受け入れており、報復用にも使用するという中国の核ドクトリンも適用した。北朝鮮は核兵器使用の自由を明らかにしたが、これを支えるためにどのように能力を備えるかが問題だ。
まず、射程距離1万5千キロメートルの圏内にある任意の戦略的対象を正確に打撃・消滅させられるよう、命中率を高めていることだ。北朝鮮側は、射程距離が1万3千キロメートルの火星15型ミサイルの射程距離をさらに伸ばし、多弾頭個別誘導技術(MIRV)を適用する新しいミサイルを確保する研究が仕上げの段階に来ていると述べた。朝鮮半島情勢に波乱をもたらす最も重要な内容だ。次に、敵対勢力の脅威を領土の外で先制的に制圧するという内容だ。航空母艦と駆逐艦を持たない北朝鮮にとって、領土外での攻撃能力は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)しかない。北朝鮮は、中型潜水艦の現代化と原子力潜水艦の設計研究が最終審査段階にあると主張した。小型原子炉を潜水艦に搭載する技術と核燃料製造能力があれば、韓米の防御体系は一気に無力化するゲームチェンジャーが誕生する。三つ目に、核弾頭の小型化と軽量化、規格化を進め、戦術的兵器化するという点だ。従来型の戦術ミサイルに小型核弾頭を装着するという話だが、すでに北朝鮮が2016年に増幅核分裂の実験に成功していることを考えると、小型核弾頭の開発は十分に可能な目標と言える。昨年の戦術誘導弾実験もこのような努力の一環だったのだろう。これは明らかに韓国を狙ったものだ。このほかにも無人機や偵察衛星での監視と指揮・統制能力も備えると宣言した。
これが意味するものは何か。相手チームの投手が直球一本で比較的対応しやすかっところへ、とつぜん球速も速く様々な変化球も投げられる新しい投手が登場したような状態だ。この10年間、米国の中央情報局(CIA)をはじめとする韓国と西側の情報機関は、北朝鮮の能力を評価するのに常に失敗してきた。孤立した北朝鮮が経済難に苦しんでいるのに、どうやってそのような軍事能力を保有できるのかと皮肉を言うばかりだった。恥ずかしながら、筆者もその一人だった。2014年に北朝鮮が水中発射ミサイルを発射すると、初めは米合同参謀本部をはじめとする軍事専門家らは「バージ船で発射した模型にすぎない」とし、「見せかけのショー」だとこき下ろしたが、北朝鮮が高画質動画で発射場面を公開すると、言葉を失った。北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)能力に対しても疑問を示してきたが、2017年に火星15型が発射されたことで、北朝鮮の能力を疑えなくなった。
西側が北朝鮮の能力を認めたがらないのには理由がある。北朝鮮の能力が事実なら、今の防御と抑止体制はいずれも無用の長物になり、最初から軍事計画を立て直さなければならず、負担が大きくなるためだ。覇権国として米国は自分の失敗を認めなければならないため、北朝鮮の能力を過小評価する傾向がある。このような経験が蓄積されたためか、今回の北朝鮮の発表に対して米国も特に反応を示さず、慎重な態度を保っている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、年頭記者会見で「北朝鮮の能力を分析している」と述べただけだ。
現在、韓国政府は毎年7%国防予算を増額させ、米国のTHAAD(高高度防衛ミサイル)を配備して、いわゆる「3軸体系」と呼ばれる北朝鮮に対する先制攻撃、防御、報復能力を保有しているというが、果たして安全保障状況はよくなっただろうか。なんの躊躇いもなく突き進む北朝鮮に、韓国の軍事計画で対抗するのは欺瞞だ。北朝鮮を過小評価し、漠然と平和が実現するという希望的思考で待つわけにもいかない。長期的には北朝鮮の非核化と平和体制を構築し、ひとまず北朝鮮の核能力を現水準で凍結できる方法を模索しなければならない。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は北朝鮮と米国間の核軍縮会談を仲介し、段階的軍縮を議題とする南北軍事共同委員会の開催を重ねて北朝鮮に要求すべきだった。ここで韓米合同軍事演習と朝鮮半島における戦略資産の配備問題も論議できるという積極的かつ開放的な姿勢を北朝鮮に示さなければならない。グレーゾーンでは生存の道は見えてこない。より鮮明で大胆な平和攻勢が必要である。