文在寅(ムン・ジェイン)大統領が20日、ジョー・バイデン政権発足に合わせて“チョン・ウィヨン外交部長官カード”を切った。2018年春「朝鮮半島平和プロセス」の稼働を成し遂げたチョン・ウィヨン大統領外交安保特別補佐官(前大統領府国家安保室長)を再起用し、韓米間の“北朝鮮政策の調整”という難題の解決を任せるためとみられる。
チョン・マンホ大統領府国民疎通秘書官は同日、チョン候補者の指名理由について「文在寅政権の国家安保室長として3年間在任し、韓米間のすべての懸案を協議・調整しており、朝鮮半島平和プロセスの実行に向けた朝米交渉や朝鮮半島の非核化など主要政策に最も深く関与した」と説明した。また「米国のバイデン政権発足を迎え、韓米同盟を強化し、中国、日本、ロシア、欧州連合(EU)など主要国との関係も円満に解決していけるだろう」という期待を示した。
この説明どおり、チョン氏は2018年3月5日、平壌(ピョンヤン)で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と4時間12分にわたって会談し、朝鮮半島の非核化と朝米対話に対する北朝鮮の意志を確認した後、この事実を米国に伝えて、同年6月12日にシンガポールで開かれた第1回朝米首脳会談を実現させた。チョン候補者が同年3月8日、ドナルド・トランプ大統領と会談した後、暗くなったホワイトハウスの前庭で朝米首脳会談開催ニュースを知らせた瞬間は韓国外交史の“名場面”に挙げられる。文大統領が18日の年頭記者会見で、北朝鮮とバイデン新政権が2018年に朝米首脳が合意した「シンガポール宣言」を出発点にして対話を再開することを望むと明らかにしただけに、会談の“立役者”だったチョン氏に再び韓米間の対北朝鮮政策の調整を任せたのは、ある意味で当然の帰結といえる。
ブリンケン国務長官指名者はトランプ流の“トップダウン”に否定的
しかし、チョン氏の前に置かれた課題は解決困難なものかもしれない。チョン氏の対話相手(カウンターパート)であるトニー・ブリンケン国務長官指名者やウェンディ・シャーマン国務副長官指名者など、米国外交安保ラインの核心人物がトランプ政権の「トップダウン式」のアプローチに否定的な見解を示しているうえ、「シンガポール宣言」も肯定的に捉えていないからだ。
ブリンケン氏は19日(現地時間)、上院外交委員会承認聴聞会で、韓日など同盟国と協議しながら北朝鮮に対して米国が使える選択肢を検討するという基本原則を再確認した。彼は同日の聴聞会で、北朝鮮が核プログラムなどに「検証された凍結」を行う見返りとして「制裁緩和」を行う段階的アプローチを支持するのかという質問に対し、「問題はさらに悪化した。われわれがどのような選択肢を持っているのか、北朝鮮に圧力を加えることが彼らを交渉のテーブルにつかせるのに効果的なのか、ほかの外交的計画が可能なのかなどを検討する」と述べた。さらに、同盟国である「韓国・日本と緊密に協議する」という持論を改めて強調た。しかし北朝鮮に対する人道支援に関しては「われわれはただ方程式の安保的側面だけでなく、人道主義的側面も留意していることを明確にしたい」とし、比較的に柔軟な態度を示した。これに先立ち、ブリンケン氏は昨年10月、米CBSとのインタビューで「トランプ大統領が世界最悪の独裁者とラブレターをやり取りし、準備のないまま、中身が空っぽの(empty)首脳会談を3回行った」と指摘し、「われわれは同盟国である韓国・日本と緊密に連携し、中国に経済的圧力の強化を求め、北朝鮮を交渉のテーブルに導かなければならない」と述べた。“トップダウン”方式の2国間対話よりも、着実な実務検討を通じた“ボトムアップ”と韓中日などとの協力による“多国的アプローチ”を進めることを示唆したのだ。