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[記者手帳]バイデンの時代の米中覇権争いで韓国が生き残る方法とは

登録:2020-11-14 06:58 修正:2020-11-14 09:07
米国のジョ―・バイデン次期大統領が今月11日(現地時間)、米国の退役軍人の日を迎え、ジル夫人と共にペンシルべニア州フィラデルフィアにある朝鮮戦争参戦記念碑を訪れて追悼している=フィラデルフィア/AFP・聯合ニュース

 若者らに人気の動画共有アプリ「TikTok」の親企業である中国バイトダンス本社を2年前に訪問した。北京の先端技術産業団地、中関村にある同社に入ると、ラフな格好の若い社員で賑わっていた。創業6年で社員2万人を抱えており、社員の80%以上が20代だという。あちこちで若さと熱気が感じられた。建物の中心部には、宇宙船操縦室を模して設計された円筒型の会議室があり、その周辺の職員たちの机の上には、複雑な数式のメモがあちこちに散らばっていた。TikTokに人工知能を適用する研究作業に見えた。中国スタートアップ各社の恐ろしい成長スピードに圧倒された記憶がある。

 しかし、トランプ米政府が今年8月、TikTokが米国の安保を脅かしているとして米国の事業部門の売却を強要するという話を聞き、首をかしげざるを得なかった。通信装備会社の華為技術(ファーウェイ)の場合、通信機器にバックドアを設置し、偵察活動ができるという米国側の主張を確認することはできないが、そのような疑念を抱くことはあり得ると思っていた。すでに2013年に米国の情報当局も、全世界の通信ネットワークに密かに接続して盗聴活動をしてきた事実が明らかになった前例があるからだ。しかし、通信装備会社でもないソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の個人情報収集の可能性を「国の安全保障への脅威」と断定し、事業の中止を要求するのは、行き過ぎた対応に思われた。

 このような行き過ぎた制裁は、トランプ大統領が国内政治的に利用する側面もあったが、より根本的には米中の覇権争いが深刻な段階に入ったことを裏付けるものだ。問題はトランプ大統領の“中国叩き”が米国国内で広範囲な支持を得ている点にある。民主党ですらトランプ大統領の対中政策を支持している。これは、バイデン政権が発足してからも米中の経済覇権争いが続くことを示唆している。

 実際、バイデン次期大統領の基本的な対中国認識と戦略的な政策方向はトランプ大統領と大きく変わらない。彼は大統領選挙の公約や遊説で一度もトランプ大統領の中国への関税賦課や企業制裁措置を撤回すると言及しておらず、さらには習近平国家主席を「ならず者」と呼んだ。もちろん戦術的なアプローチは異なるだろう。トランプ大統領が一方的かつ極端な方法を好むなら、バイデン氏はより洗練された多国間主義的な方法を選ぶだろう。しかし、バイデン氏は民主主義や人権、国際規範という価値を中心に同盟国と連合して圧力をかける見込みで、中国にとってはさらに打撃が大きいかもしれない。

 バイデン氏は米国製造業の復興を公約に掲げた。人工知能や電気自動車、5Gなど先端産業の研究開発に4年間で3000億ドルを投入し、政府調達で米国産製品を4000億ドル分買い入れると発表した。こうした「産業再建」(Build Back Better)戦略は、中国の先端産業追撃戦略である「中国製造2025」に照準を合わせて対抗するものだ。中国に依存するサプライチェーンを米国内に創出することで、奪われた雇用を取り戻し、技術覇権競争でもリードすることを目指している、バイデンの時代にも、経済民族主義の勢いは弱まるどころか、一層強まるだろう。

 バイデン次期大統領は12日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との電話会談で「インド太平洋地域の安保と繁栄の核心軸(linchpin)」として韓米同盟の強化に対する熱望を示した。これはトランプ大統領の中国に対する牽制戦略である「インド太平洋戦略」を連想させる。韓国政府当局者は、主要事案ごとに米国と中国の間で選択を求められていると訴えてきたが、このような状況はこれからも続くだろう。

 果たして韓国はどのように対応すべきなのか。最も重要なのは、外交安保と通商分野で、どちらか一方に過度に偏る愚を犯してはならないという点だ。一瞬の誤った選択で、米中の間に挟まれて身動きが取れない状況に陥るかもしれない。2016年、THAAD(高高度防衛ミサイル)をめぐる事態を思い出してみよう。米国のTHAAD配備に続く中国の報復措置で莫大な経済的被害を受けた現実を反面教師にしなければならない。重要な国家利益になる事案では、韓国の立場を明確にし、米中に絶えずメッセージを送り、説得しなければならない。当時、朴槿恵(パク・クネ)政権は曖昧かつ優柔不断な態度で米中両国に不信感を抱かせて、結局自ら破局を招いてしまった。この事態はバイデン氏が副大統領を務めたオバマ政府時代に起きたということを忘れてはならない。

 経済的には半導体やバッテリーなど、世界市場で独歩的な競争力を備えた製品群を拡大しなければならない。経済民族主義がニューノーマルである時代なだけに、世界貿易機関(WTO)が認める範囲内で、韓国政府が先端産業の競争力強化に乗り出さなければならない。そうすれば、万が一にでも起こりかねないいわゆる米中産業生態系の「デカップリング」(分離)のシナリオでも韓国企業は生き残れるだろう。

//ハンギョレ新聞社
パク・ヒョン経済部先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/969911.html韓国語原文入力:2020-11-1402:30
訳H.J

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