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バイデンと韓中日…記憶すべき「3つの場面」

登録:2020-11-09 02:59 修正:2020-11-09 06:37
政治BAR_キル・ユンヒョンのそこが知りたい 
 
「靖国参拝すべきでない」 
安倍首相のような度を越した 
日本の歴史修正主義には断固とした態度も 
 
「韓日協力が米国の国益」 
主張し、オバマ政権のように 
韓米日協力圧力強まる見通し 
 
米中対立について理解が深いだけに 
「米国に対抗する側に賭けるな」 
同盟をまとめ「対中圧力」に乗り出す見込み
米国のバイデン次期大統領が7日(現地時間)、デラウェア州ウィルミントンで開かれた祝賀行事で支持者たちに向かって笑顔を見せている=ウィルミントン/AP、聯合ニュース

 米国の次の大統領となるジョー・バイデン氏は、韓中日3カ国が集うこの「課題山積のうるさい東アジア」で、いかなる対外政策を展開することになるのだろうか。将来の覇権がかかった米中対決で勝利するために、史上「最悪の状態」として放置されているインド太平洋地域の二つの主要同盟国である韓国と日本の関係改善に向けて、様々な圧力をかけてくるものとみられる。また、韓国には「米国に対抗する側に賭けるな」として、同盟により忠実な態度を示すよう求めてくる可能性もある。バイデン政権の東アジア政策はいかなる姿となるのか、推測の根拠となる3つの「決定的場面」を紹介する。

1.日本の歴史修正主義には断固とした態度

2013年12月3日、安倍晋三首相が、日本を訪れたバイデン米副大統領(いずれも当時)を歓迎し、手を差しのべている。両氏は同日、中国の防空識別圏や日米同盟などについて話し合った=東京/ロイターニュース1

 「神社を参拝してはならない」(バイデン副大統領)

 「行くかどうかは私が判断する」(安倍晋三首相)

 7年前の2013年12月12日。オバマ政権の副大統領だったバイデン氏は、安倍晋三首相(当時)と夜10時40分(日本時間)から1時間にわたる長い通話を開始した。日本のかつての侵略を事実上否定する「歴史修正主義者」の安倍首相が、太平洋戦争を起こしたA級戦犯が合祀されている靖国神社を参拝するというニュースが伝わり、これを引き止めに出たのだ。

 韓日の熾烈な歴史をめぐる摩擦を緩和することに特に関心のなかったトランプ政権と異なり、オバマ-バイデン政権は、米国の大切な二つの同盟国である韓国と日本が健全な協力関係を維持することを望んだ。2013年も今のように韓日関係は、日本軍「慰安婦」問題解決の糸口をめぐる確執で風のやむ日がなかった。今は、日本が強制動員の賠償問題について韓国がまず「納得できる措置」を取れとして、韓中日首脳会議への出席を拒否しているが、当時は韓国が慰安婦問題の解決に向けた日本の「誠意ある処置」をまず求め、韓日首脳会談を拒絶していた。米国の立場としては実に頭の痛い問題だった。

 この電話会談が行われる直前の6日、バイデン副大統領は、韓中日のアジア3カ国歴訪で朴槿恵(パク・クネ)大統領と会談し、韓日関係改善に努めることを求めている。バイデン副大統領がこのように要求できたのは、その3日前の3日に安倍首相との会談で、韓日の歴史懸案に対する日本の前向きな立場を確認していたためだった。当時、朝日新聞などの日本のメディアは、安倍首相がバイデン副大統領に「韓日関係で行き過ぎた対応があった」「村山談話と河野談話を継承し、神社参拝は行わない」と述べたと報じていた。安倍首相の肯定的な発言を確認したバイデン副大統領が、朴槿恵大統領に対し「だから韓国も譲歩せよ」と迫ったのだ。このような状況で安倍首相が靖国神社に参拝すれば、バイデン副大統領は、朴槿恵大統領に余計なことを並べ立てた「うそつき」とならざるを得ない。

 しかしこの電話会談で安倍首相は「参拝しない」とは約束せず、「自分が判断する」という反応を示すにとどまった。そしてバイデン副大統領の懸念どおり、その年の12月26日に靖国神社に参拝した。怒った在日米国大使館は、参拝から30分後に「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」という異例の談話を発表した。

 ここにもう一つ面白いエピソードがついてくる。菅義偉官房長官(現首相)は、安倍首相の靖国参拝に最後まで反対した。結局、安倍首相の意志を曲げられなかった菅官房長官は、参拝30分ほど前にイ・ビョンギ駐日韓国大使(当時)に了解を求める電話をかけてきた。日本語に慣れていないイ大使が、安倍首相の靖国参拝の知らせを受けて当惑した反応を示すと、前に立っていたキム・ウォンジン政務公使は、「大使、『つよくこうぎします』と言ってください」と助言した。菅官房長官は、イ大使が日本に在職していた頃、月に1度は必ず食事を共にするほどの親しい間柄だった。このような信頼関係は、韓日が2015年12月に慰安婦問題解決のための12・28合意に到達する原動力となった。しかし、このことによってイ大使はその後、非常に大きな困難を経験することになる。

2.しかし、より大切なのは韓日の協力

バイデン米次期大統領が2013年12月6日、朴槿恵大統領と握手を交わしている=資料写真//ハンギョレ新聞社

 「安倍首相の演説はとても巧みで有意義なものだった」(安倍首相による2015年4月の米議会での演説について)

 バイデン次期大統領が韓日の歴史問題や慰安婦問題などの人権をめぐる懸案について深く理解しているのは事実だが、現在進行中の強制動員被害者に対する賠償問題について、韓国を支持するかどうかは明らかではない。バイデン次期大統領にとって重要なのは、韓国と日本のどちらが正しいかではなく、結局は「米国の国益」だからだ。

 米国は、2013年12月の安倍首相の靖国神社参拝については「失望した」との表現で強い警鐘を鳴らしたものの、2015年に入ってからは、中国の急速な浮上に対抗するには日米同盟を強化すべきとの戦略的判断を下すようになる。結局バイデン氏は、周辺国に明確に謝罪しない安倍首相の「曖昧な」歴史認識を追認してしまう。

 このことを最も劇的に示す場面が、2015年4月29日に行われた安倍首相による米上下院合同演説だった。安倍首相はこの演説で、日本が過去に米国に及ぼした被害である真珠湾攻撃、フィリピンで捕らえた米軍捕虜たちに対する虐待事件であるバターン死の行進などを列挙し、「歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。私は深い悔悟を胸に、しばしその場に立って、黙とうをささげました」と述べた。しかし、日本の侵略と植民地支配に対する謝罪と反省の意を明確に表現した1995年の村山談話とは異なり、「謝罪」と解釈し得る表現は使わなかった。その代わり安倍首相は「1980年代以降、韓国が、台湾が、ASEAN諸国が、やがて中国が勃興します。今度は日本も、資本と、技術を献身的に注ぎ、彼らの成長を支えました」という自画自賛を口にした。韓中両国からは不満の声が上がったが、バイデン氏は「安倍首相の演説は非常に巧みで有意義なものだった。(過去の歴史に対する)責任が日本側にあるということを非常に明確にした」と評価した。

 実際、韓日の歴史問題を早期に解決すべきだと米国が迫り始めたのは、2015年初頭だった。米国務省のナンバー3だったウェンディ・シャーマン国務次官は2015年2月27日、ワシントンのカーネギー平和財団で行われた演説で「民族主義感情は依然として利用され得るし、どの政治指導者であれ、過去の敵を非難することで安価な拍手を得ることはたやすい」との発言を行っており、アシュトン・カーター国防長官は4月8日、読売新聞とのインタビューで、韓日の「協力による潜在的利益の方が、過去にあった緊張や今の政治的状況よりも重要だ。我々3国は未来に目を向けるべきだ」と述べている。

 このような米国の圧力によって、朴槿恵政権は2015年12月、12・28合意に同意せざるを得なかった。その後、韓国は2016年11月の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)と2017年初めの「THAAD配置」を通じて、韓米日三角同盟体制の構築に向けた決定的な一歩を踏み出すこととなった。

3.中国に対する断固たる立場

バイデン副大統領が2012年2月17日、中国の習近平国家副主席(いずれも当時)と共に、米ロサンゼルスの国際研究学習センターで、学生たちが両国の友好促進を祈る言葉をプリントし、両氏に贈ったTシャツを広げている=ロサンゼルス/新華通信社、聯合ニュース

 「米国に対抗する側に賭けるのはよくない」(2013年12月の訪韓で朴槿恵大統領に対し)

 「私は中国の指導者と多くの時間を共にしたことがあり、我々が何によって対立しているのかよく分かっている」(米外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』3~4月号への寄稿)

 バイデン次期大統領は上院の外交委員長として12年、副大統領として8年を過ごした米国最高の「外交専門家」とされる。それだけに、現在の米国外交の最大の課題である米中対立について深く理解しており、様々な紙面を通じてそれなりに整理された解決策を提示している。

 バイデン次期大統領自身が『フォーリン・アフェアーズ』3~4月号への寄稿で「中国の指導者と多くの時間を共にしたことがある」と書いているように、バイデン氏と中国の習近平国家主席は、2010年代初めから友情を築いてきた「古い友人」だ。オバマ政権の副大統領だった頃、バイデン氏は胡錦濤主席の下で最高指導者として修業中だった習近平国家副主席(当時)と初めて出会った。2人は2011年と2012年に互いを招待し、親交を交わした。2012年2月に習近平主席が米国を訪問した際には、共にバスケットボールのLAレイカーズの試合を観戦した。2013年12月には北京で、中国の国家主席と米国の副大統領として、中国が東シナ海に一方的に拡張した防空識別圏の問題をめぐって厳しい会談を繰り広げた。

 バイデン次期大統領は、トランプ政権が進めてきた対中国、対アジア政策であるインド太平洋政策の大きな基調は引き継ぐものとみられる。トランプ政権と違う点は「米国第一主義」ではなく「同盟国との協力」に重きを置いているということだ。バイデン氏は『フォーリン・アフェアーズ』への寄稿で、米国の対中政策について「米国が中国または他の国を相手とする将来の競争に勝つためには、革新的先端部分(edge)をより鋭くしなければならず、誤った経済慣行と不公正を減らすために、世界の民主主義国家の経済的力を一つに結集しなければならない」と述べている。このような姿勢は、4カ月後の8月に公開された民主党の政綱政策でも確認できる。バイデン次期大統領は、この政綱政策のアジア太平洋の項目で「米国はアジアの大国として、我々共通の繁栄、安全、開かれた太平洋世界を作るという価値を推し進めるために、我々の同盟国、同伴国と緊密に協力する」と述べる。中国については「中国に対するアプローチは、米国の国益と我々の同盟の利益によって推進され、その推進のあり方は、我々の社会の開放性、経済の躍動性、我々の価値を反映する国際的な規範を形成し、執行する我々の同盟の力に依存することになる」と述べている。

 こうした文章でバイデン次期大統領が絶えず強調するのは「世界の民主主義国家」「我々の同盟と同伴国との協力」などの表現だ。同盟と緊密に協力しつつ米国の国益を実現するというバイデン次期大統領の考え方は、先月30日の聯合ニュースへの寄稿で改めて確認される。「大統領として私は、我々の軍を撤退させるという無謀な脅しによって韓国を恐喝するのではなく、東アジアとそれ以上の地域で平和を守るために我々の同盟を強化しつつ、韓国に寄り添うつもりだ。私は原則に則った外交に関与するとともに、非核化した北朝鮮と統一された朝鮮半島に向けて進み続けるつもりだ」

 結局バイデン次期大統領は、中国との覇権競争で勝利するという米国の戦略的目標のために、トランプ政権よりもかなり洗練された巧みなやり方で、韓国に対し緊密かつ多層的な協力を求めてくるものと見られる。この過程で、韓国に対し米中間でより明確な立場を示すよう求めてきたり、韓日関係を早急に改善せよという困難な要求をしてくる可能性も高い。実際にバイデン次期大統領は、2013年12月6日に朴槿恵大統領との会談で「米国に対抗する側に賭けるのは、決して良い賭けではない。米国は韓国に賭け続けるだろう」と述べている。

キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/969030.html韓国語原文入力:2020-11-08 16:06
訳D.K

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