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[朴露子の韓国・内と外]韓国の成功的民主化と民主主義持続の条件

登録:2020-11-10 22:21 修正:2020-11-11 10:02

歴史の流れに照らしてみれば、韓国の成功的民主化は合法則的で予想された結果と見るよりは、むしろ“例外”に見える。シンガポールなどとは異なり韓国はどうして1980年代末~1990年代初に民主化を指向することになったのか?そして、いかなる理由で極右的保守一党支配の枠組みが一層強化された隣国日本と異なり、2017年に積弊政権を倒して世界的な脱民主化の中にありながら再民主化に成功したのか?

イラストレーション キム・デジュン//ハンギョレ新聞社

 このごろの世界の動きを見れば見るほど、ある古ぼけた神話が信じられなくなる。近代社会が経済的に発展すれば、必然的に民主化が後に続くという神話だ。工業化が進み、1人当りの国民所得が一定程度に達すれば、民主主義を指向する近代的大衆の要求により結局民主主義が来るというのがこの神話の内容だった。社会学者のシーモア・マーティン・リプセット(1922~2006)が1959年に所得増加と民主化の間の因果関係に対するこの仮説を出してからは、「社会が近代化され裕福になれば民主主義が発展する」という主張は永く学界の通説に近かった。

 だが、私はこの仮説が事実に合わないことを最近骨身に沁みて感じている。まず、購買力基準で各国の1人当りの国民総生産を見れば、最も裕福な国々に絶対君主国(カタール)と共に、実質的には権威主義に近い体制を運営する“形式的民主国家”のシンガポールなどが入っている。むしろ記録的な致富は、権威主義的行政府が分配できる資源を増やすことにより民主化運動の動力を弱化させるという分析が出ているほどだ。次に、同じ地域に存在する隣国社会を見れば、権威主義国家が民主主義国家よりもむしろ裕福なことが多い。露骨に非自由民主主義を好み、中国に学ぶと宣言したオルバーン・ヴィクトル首相が長期政権に就いているハンガリーは、隣の比較的もっと民主的なスロバキアより1人当りの所得が若干高い。韓国と同じ東アジア地域では、党-国家体制を運営する中国の購買力基準で見た1人当りの国民総生産(1万7千ドル)は、多党制が比較的よく定着したモンゴル(1万2千ドル)を圧倒している。三つ目に、ドナルド・トランプ治下の米国で確認されたように、長期にわたり民主主義の発展を経験してきた“正統民主国家”でさえも、今やますます権威主義的傾向を露骨に見せている。経済がいくら成長しても、民主化よりむしろ脱民主化こそが新自由主義時代の趨勢と見える。

 こうした流れに照らしてみれば、韓国の成功的民主化は合法則的で予想された結果と見るよりは、むしろ“例外”に見える。シンガポールなどとは異なり韓国はどうして1980年代末~1990年代初に民主化を指向することになったのか?そして、いかなる理由で極右的保守一党支配の枠組みが一層強化された隣国日本と異なり、2017年に積弊政権を倒し、世界的な脱民主化の中にありながら再民主化に成功したのか?1987年の民主化の動力、そして2017年の再民主化の動力を正しく評価してこそ、隣の4強、米・中・日・ロとは異なり、失われたり退歩することなく、むしろ最近さらに強く定着した韓国の民主主義が今後も維持される“条件”を理解できるはずだ。

 1987年の動力は、大きく見て軍部独裁の2つの致命的欠点、すなわち民族・国民的正統性と再分配政策の不在であった。例えば、世界の覇権国家である米国と同等に“一騎打ち”を仕掛ける可能性があることを誇示してやまない中国の党-国家とは対照的に、全斗煥(チョン・ドゥファン)軍部は米国の保護下で自国民を虐殺した政権だった。また、公共医療保険や年金を運営してきた日本の自民党や、公共賃貸住宅システムを運営してきたシンガポールの人民行動党とは異なり、全斗煥独裁時期は福祉または再分配の不毛の地であった。国民健康保険や国民年金は、1987年以後に怒った民心を収拾するために盧泰愚(ノ・テウ)政権によって初めて全国民対象の全面施行がなされた。程度の差はあるが、2008~2017年の間の積弊政権も同じ問題を表わした。李明博(イ・ミョンバク)政権の序盤期の対米屈辱外交が、2008年に最初のろうそくデモによる抵抗を呼び起こし、人権と共に苦しい歴史を無視した2015年のいわゆる「慰安婦問題」韓日合意は、朴槿恵(パク・クネ)政権の支持率を大きく落とした。調査によって多少違うが、「慰安婦合意」の破棄や再協議を要求した世論は、少ないもので約60%、多ければ75%程度を占め、圧倒的だった。米・日に屈従する積弊政権は、同時に自国民に対する再分配も疎かにした。李明博政権の序盤期に約8%だった国民総生産に対する公共福祉支出は、朴槿恵政権末期に10%になったが、高齢化が進む超少子化社会の福祉需要には大幅に足りない雀の涙だった。そこへ積弊政権の記録的腐敗と無能さが加味され、ついに政権没落と再民主化につながった。

 ろうそく市民の民意は、一次的には朴槿恵政権の腐敗と無能さに怒ったが、本質的には強固な主権を持ち、労働者など多数に対する保護と再分配を通じて民生がより安定した国を望んだ。この2つの欲求が満たされれば、穏健保守または穏健自由主義が韓国政治の中心軸として座を占め、民主主義が長期的に確固不動に根をおろすだろう。しかし、もしこの2つの問題で現在の自由主義政権が良い成績を出せなかったならば、極右が再び政権を取り民主主義の根幹を揺るがす可能性も今後いくらでもある。韓国に様々な面で近い米国で広がる極右ポピュリズムの狂乱や、日本で持続している極右新民族主義者の長期政権を見ても、そうしたシナリオもまた非現実的でないことを実感する。

 “同盟”内での韓米関係は、その本質上平等なはずがない。あくまでも最初から後見国と被後見国の関係だ。とはいえ、その枠組みの中でも多数が支持できる主権確立のための歩みはいくらでも可能だ。国連制裁が禁止していない北朝鮮との人道的交流や人的交流、文化交流を増やすことはできるし、逆境の中でも平和共存に向けた意志をさらに確実に表わすこともできる。同様に韓国にとって百害無益な各種の中国“牽制”包囲網に、韓国が参加しないことを明らかにすることも主権確立の一つ方法だろう。

 それと共に、今至急に必要なことは、包括的な福祉国家建設のための長期的ロードマップのようなものだ。現在の政権は、2022年までに国民健康保険の保障性を70%まで高めると約束したことがあるが、それよりイタリアやスロベニアなど韓国と経済水準が似た多くの国がすでに運営している無償医療という理想にいつ、どのように到達できるかに対する長期的ビジョンが必要だ。そして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が公共医療の重要性を気づかせてくれただけに、公共医療の病床の比率を、世界最低に近い現在の10%から少なくとも30%までどのように、いつまでに増やせるかという詳しいビジョンを明らかにしなければならない。大学平準化、無償教育に向けた歩みとともに、「病気になっても安心できる国」作りは、韓国型福祉国家プロジェクトの核心であろう。主権確立と共に、現在の政権の自由主義勢力がこうしたプロジェクトを提示できなければ、今後いつか「積弊政権第2幕」を再び迎える可能性も排除できない。

//ハンギョレ新聞社
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大学教授・韓国学 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/969355.html韓国語原文入力:2020-11-10 19:13
訳J.S

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